シ川|||
「櫻、違うの。高菜って、仲良くなりたいんだけど自分が人見知りだって気づか」
「ないぞそんなことっ! だだってこいつあたしよりでかいし!」
「は?」と高菜を見たが、見て取れるほど敵視剥き出しの顔がまるでムキになっているようだ。
「夕食だって言ってんだよ!!」とまたさっきの女の号令が、鋭いだみ声で響いてきた。
そして高菜も口を開けた途端「富士山じゃないんだからもうちょっと遠慮してくれ!」
「富士山!? ……なんで富士山……あっ。も、もしかして、富士山が好きだから?」
「大好きだ!」
また突然、しかし右の頬を(ほほ)思いっきり引っ叩かれた。
そしてしばらくした時に、左の壁が目の前に見えていることに気づく。
は!? と頭にきて高菜へ顔を振り戻した。
「痛いよ! ってぇえええ!?」
「無視すんじゃないよぉおおおおおおおお!!」とまた聞こえてきた女のだみ声と被りながら、櫻は呆気に取られた。高菜ではない。得体の知れないの生物がまるで下から睨んできている。
広げる四本足で踏ん張って、四枚だった大小縦長の翼をフンッ! とV字に広げている。
怒っているのがよく分かる。『高菜をイジめんじゃねぇ!』と威嚇してきているのが分かる。
ただ、それ以上に『俺様に注目!』と誇らしげに威風堂堂と頑張っているようでもある。
なんだそれは……、と櫻はげんなりして、もう怒る気になれなかった。
「シルキィもっ」と叱った藤谷の声が頭上からした。
と、ついに得体が知れたシルキィという生物が、羽ばたきながら後ろへ身を翻した。それは鼻で笑ったかのような憎たらしさだったが、当の本生物は『知ったことか』といった様子で、高菜の方へ飛んでいく。その姿を目で追うと、ぶすーと不愉快そうに、そして恥ずかしいことに怒っているように顔を赤らめて睨んでくる高菜の頭へ、シルキィが帰宅したように被さった。
櫻はもう、白旗を上げたい気持ちになってため息が出たが、藤谷が高菜へ怒った顔を向けた。
「高菜もっ。……私が、他人を不快にさせる人を命かけてまで守ると思う?」
「みそ汁!!」またまた被せてきた女のだみ声が、今度は辛そうだった。
そろそろ誰かが反応してやってもいいんじゃないか? と思えてくる。




