////|||川|||////
ハッ、と急に女のちびっこの全身が揺れたと思えば、勢いよく首を左右や上へ振り出した。
それを見ていると、さっき逃げていった得体の知れない生物を探しているように見える。
と偶然、櫻と目が合う――が、女のちびっこが固まった。さらに、今度は顔が引きつるほどハレンチなものを見たかのように一歩退きながら、恥ずかしそうに顔が赤くなった。
次第にまごまごと狼狽え始めて、目線を左下にやったり右へやったりあっちこっちしている。
「えっ……あっ……え、えっと、え……な、――なんだこれはぁああああああああああ!?」
この世の終わりとでも言いたげな顔で元気よく指を差してきた。
「…………ぇぇぇぇええ? ……なんだこれって、……僕なの? というかなにが? 服?」
「全身だ!!」
「全身かよ!」
「なんだこれすごい恥ずかしいぞ!!」
「いやいやいやっ、ぇえ!? ウソだろ僕一体なんなんだよ!!」
「お前人間の皮をかぶった変態なんだよ!!」
「っざけんな僕も人間だ!! 細胞の隅々まで人間だあ!!」
「ええっ!? 本当に名前があるのか!?」
「疑うなよ! あるよ! 僕は大竹櫻っだあああああ!!」
そんな中で、少し失笑したらしい藤谷が、女のちびっ子の脳天にげんこつを落とした。
「いい加減にしなさい高菜! いつも言ってるでしょ! いきなりそういうことしないって!」
そんな中、さっきの得体の知れない白い生物が、宙を飛びながらビクビク震えて戻ってきた。そして眉尻をたらすように触覚をたらしながら、女のちびっ子の高菜の右隣に下り立った。
高菜がそれに気づくとムッとなって右足の裏を叩き落としたが、ムッとしたのはそこまでというように不安そうな顔になると、抱き上げながら白い生物に口元を埋めて藤谷へ顔を上げた。
「ぅぅぅ……」と高菜が煮え切らないと目を細めた。さらには横目で恨めしそうに睨んでくる。
……今度も初対面なのに強烈だ。だいぶ不安になる。だから櫻は、一応尋ねることにした。
「あの、さ、……ごめん。僕がなにをしたのか、教」――突然、高菜が口元を離すほどハッと目を見開いた。まるで話しかけられたのが想定外だったようだ。一歩下がったほど後ろめたそうにあわあわ口を動かしたままでいる。そうしている内に、また恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。
なんでそうなるの? と櫻は、思わずため息を漏らしていた。
「食事だよッ!!」また突然、そして今度は食堂の方から、突き刺してくるような女の号令が耳を突き貫けた。その号令の響きがフェードアウトしていく中、藤谷からはため息が聞こえた。




