三三
生き倒れをしていた男は片山という名前だが、ソフトモヒカンに黒のテーラードジャケット、そしてビッグサイズでダブついたデニムパンツにサンダル下駄という、よく分からない格好だ。さらにはインプリシットの一人らしく、しかも鼻が潰れたように歪んでいる。
その気色悪い片山が、「何なのあれ」と突っ放すように質問した藤谷へ必死に返答していたが、「幼稚園児に渡られたんだ」と変なことを言ったから、右前の藤谷が目を細めて訝った。
「ふざけんな信じてくれ! なんかブリッジしてたら渡られて、反撃したらああなったんだ!」
やっぱりなんだかうそ臭いように櫻も感じる。とその時、左前の片山にちらっと見られた。
「あ? おら君こら今ちっせぇなぁとか思ってんだろ」
「っ!? い、や、そんなこと思ってませんよ」そして矛先を向けないでくれとも櫻は思う。
片山の方は「はぁ……」と納得いかなそうにげんなりしていた。
「それより藤谷さん、どうしたんですか。さっきからそんな怒ってねぇ」
片山に目と目を合わされた藤谷が一気に、ムスッとしかめっ面になった。
そして目線を逸らしながら口を開く。
「隣の人……大竹櫻っていうんだけど、アンチリファードに捕まる方を選んじゃったから」
「……んっ、……う~ん……。ともかく、それはとってもよくないねー」
ゔっ、と櫻は思わず顔を引きつらせた。
「少々まずったなぁ……」と脱力した片山の言葉が、予定を狂わされて苛立っているようにも聞こえた。櫻は危機感が一層増すのを感じて、ぞわぞわする強烈な焦りに襲われる。
余計面倒なことにさせてしまったのかもしれない、と思った。
捕まりにいく前に、それに気づいていればよかったと、胸の奥底で悔しさが増してきた。




