333333
「なら私を言い負かしてみせてよね。それもできねぇくせに偉そうにしないでください!! こっちはね、再現化された本心へ空間移動して、時間を無視して鍛えてます。要は何日、何年経とうが、ゼロ秒なの。その時間の分、未来が決まっちゃいますけど間動した時に戻れるんです」
え……? と櫻は呆然とした。まるで不意を突かれた。怒りがどこかへすっ飛んでいた。
一度、それをやって、成功して、興奮して、感動したことがあるのだ。その時はやることを思い出してすぐに現実に戻ったが、確かに時間は、最初に間動した時から動き出した。
そして、いつかに聞いたこともある。それは、ルニ・オーソナーで過ごした時間の分の未来が決まってしまう代わりに、自分の中の寿命を自在に操れるということだ。
「しかもです、藤谷百合奈さん。というかインプリシットです。私たちに何度も跳ね返されて、逃げ回ってんですよね? もう何回目になるんだろーなー」
「……そうだからっ、……櫻をっ、諦めろってわけ!?」
「そういうことです、大竹櫻! ここは藤谷百合奈のために、漢を見せたらどうですか?」
――藤谷に左手の袖を思いっきり握り締められた。
ハッとして櫻は藤谷を見るとちょうど藤谷も顔を向けてきた。本気で真剣だ。眉根をきつく寄せて、必死な眼差しを向けられて、袖を握る手の力は、死んでも離さないと言わんばかりだ。
「行かないでっ!! 思い出してっ。殺せないのっ。殺しちゃったらもったいないんだよっ!」
「本当に殺さないとでも思ってんですか?」
電撃音とガラスの破砕音が一斉に鳴ったかのような銃声がして、藤谷の袖を握る手が一気に離れた。血色。藤谷が右肩と右胸を貫かれた。藤谷が自分を抱え込むように膝からくずおれた。
しかし藤谷の後ろから短髪の男の子が、藤谷の髪を鷲掴みにして、後ろへ引っ張り上げた。
しかも女の子まで、櫻と向かい合うように藤谷の斜め前にくると、ハンドガンを握る左手を少し曲げた膝に乗せて、見せつけるように藤谷の胸倉を掴むから、セーラーパーカーの首元にシワができた。
「右胸にも当たっちめんたなんて驚きです。……別にいいですけど」と女の子が少し予想外な感じで言ったが、まさに試してきている笑みを浮かべてくる。
――櫻は今まで呼吸を忘れていた。そして知らない内に目を見開いていたことにも気づいた。
「もし藤谷百合奈がこのまま、こんな大勢の中で無理やり脱がされたら、先輩が黙ってんのがいけないんですよ? 乱れた姿。私たちは見てもいいんですけど、先輩は見たくないでしょ?」
そう言いながら女の子が、セーラーパーカーのジップに手をかけた。
しかも、周りの連中がくすくすと、まさに嘲笑い出した。
「あっ、そーです。そういえば藤谷百合奈さん、実の父親と経験があるんでした。……まぁ、父親に無理やり脱がされたから、カウントされないかな……。けど、ウソじゃないですよ?」
そう言いながら女の子がジップを少しだけ下げて止めたのが見えたが、櫻は分からなかった。
――女の子が何を言ったのか分からなかった。




