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ただ、三年になるまで藤谷とはクラスが違った。
それまでの間、美喜は藤谷と親友になったし、そして美喜を通じて祐樹も、しかも祐樹を通じて、幸生も、力を貸してくれる。
――幸生とは、仲直りもできてだ。
みんなの気持ちが嬉しかった。
別にいつも優しくしてもらったわけではない。僕が美喜たちを必要とした時にはすぐにきてくれたし、美喜たちも僕が必要だから傍にいてくれた。必要とし合うことができていた。
もう美喜とも、祐樹とも、幸生とも友達だったことを、実感することができた!
今でもみんなとは、必要とし合うことができている。
必要とし合えることで、少しずつ元に戻っていくことができた。一緒に過ごす昼休みででも、試験前日の勉強会ででも。散歩のために遠回りした帰り道ででも。メールのやり取りででも、近場のほとんどは行き尽くした休日ででも。美喜たちと過ごした全ての時間のおかげでだ。
僕も人間だった。人と一緒に生きないと不健康になる人間だった。それを気づかせてもくれた。
思い出したくなった。――先ほどのことも現実かのように彷彿されてくる。全て。全て。
ツーンと厳しい二月の寒さに体中を覆われる中、長い高校受験生活が無事、合格で終わった。
それは美喜たちも同じだった。思う存分に遊ぶつもりなのも、みんな同じだ。
だから、空に手が届くスケート場に行きたい衝動に駆られたが、近所の、高度一千(1000)メートルは越える人工山脈都市、――未完成の天山層建山脈の中に唯一あるスケート場が、去年の十月に閉鎖されてしまっていた。
閉鎖のことは去年の夏に知らされていたが、それでも悔しかった。
気に入っていたのだ。リンク内からの、壮大な景色が素晴らしいのだ。その景色を見ながらスケートをするのが爽快だったのだ。何よりも、美喜たちが、遊びという僕のリハビリのためにも、そこを選んでくれたおかげで、みんなと気に入ったのだ。
ただ、一ヶ月前に祐樹からある提案をされた。嬉しい提案だったから、美喜たちと乗った。
だから遊園跡地の近くに集合したが、幸生が風邪で来られなくなったのが残念だった。
遊園跡地を覆い囲む、縦縞のような柵の中に、一人は通れる隙間がある。そこから侵入した。
その後に四人で本心の再現化をした。
といっても、ほとんどが祐樹の再現化された本心の中に入る感じだ。
本当は四人で作ったルニ・オーソナーに入りたいのだが、祐樹の願いを叶いやすくしないと、閉鎖されたスケート場へ侵入した祐樹の、記憶を辿れない。それに、魔法使いの空間だから、後から作り変えることもできる。だからまずは、ほとんどが祐樹の再現化された本心に入った。
その時、祐樹は「出ない絶対出ない」と怯えていた。顔が不安と焦りと冷汗にまみれていた。
体の内側が後ろへ引きずられているような入空間移動の感覚。目眩のように視界がブレた。