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「うん。……きっと、だけど、失敗した場合は、現実に戻る過程で、元の性格に戻ると思う。それに、成功できたのは、まだ幼いから、脳もまだ幼くて、そのおかげで、柔軟に脳の構造が変化できて、それで、誰かの性格と、まるっきり同じになることもなかったんだと思う」

 ――それじゃあ、蓮司(あいつ)の意識がなかった間とかで、性格が変わったのだろうか。

 そう思った時に(おう)は、頭を支えられなくなってきたかのようにわずかに(うつむ)いた。

 ……(ひど)く焦りを感じる。まるで、もう取り返しがつかないのか、と思っている時のようだ。

 なんてことだよ。アンチリファードのために本心を(ゆが)めて、(だま)してでも妹を助けたいんだっ。

「……アンチリファードって、さあ……」

「え?」

「アンチリファードって、そこまでさせる奴らなのか? そこまで、せざるを得ないことを、してくるようなこと、してんのか?」

「……そう、だよ。……ただ人質にとるんじゃない。全部イグズィスティンクスを手に入れるためなの。しかも、人質からも手に入れるため。……あいつらは、動物からよりも抽出(ちゅうしゅつ)できるからって、誰でもいいから、人間なら捕獲する。そしたら腕脳(わんのう)を持たせて隔離(かくり)する。……隔離された人は、血液を少しずつ抜かれ続けるの。……けど、腕脳(わんのう)があるから、そうされることで、そして腕脳(わんのう)の機能によって、イグズィスティンクスが大量に血管を走り続ける。……あいつらはそのイグズィスティンクスを、抽出しながら、人質として扱う。……人質が死ぬか、いなくなるまで、抽出して、貯蔵し続けている。今もそう。野良の動物も、蓮司の妹もされてる……」

「じゃあ、本当に、……本当に、……蓮司(あいつ)には、殺す気なんて、なかったんだ?」

「そうだよ。イグズィスティンクスは生きている生命(いのち)にしかないし、死体になったらすっかりなくなる。だからあいつらは逆に殺すことができないの。殺したらもったいないから。たとえとんでもないことを言ったとしても口だけで、口だけで相手が怯えると思ってるだけで、実際に殺せる度胸なんてない。だからあいつらは蓮司(れんじ)を使って、というか蓮司はアンチリファードの使いにされているんだけど、だから蓮司を使って、何も知らない櫻を誘拐する魂胆(こんたん)だった。けど蓮司の本心は不本意だから、櫻に嫌われて、手に入れられないように演じてた」

 ――しかも、蓮司(あいつ)の態度は全部、違和を感じていたとしても、本気だとしか思えなかった。

 ……心臓が、苦しめてくるように乱暴に(あわ)てて連続している。サー、と血の気が引きそうだ。倒れてしまいそうだ。気が狂いそうだ。思わなかった。そんなことだとは思わなかった。

 性格は内側なんだ。他の誰にもない自分だけの核なんだ。なのに、ただアンチリファードが悪いだけなのに、そこまでしてでも自分を変えないといけないことに、なってしまったなんて。

 恐らく、性格を変えた状態で現実に戻る時、死に至るリスクが十分高かったはずだっ。

 僕よりだいぶ年下なのに!

 ふと昔の視界(イメージ)脳裏(のうり)をかすめた。――もう近くにいない妹の飛び切りの笑顔が見えた。

 胸を()かれた。涙が(あふ)れ出てくる。そして嗚咽(おえつ)()れそうなほど、櫻は悲しくなった。

 ……なんで、初めて会う前に、そういう蓮司(あいつ)を知ることができなかったっ。

 知ることができたら、少しでも、あんなに腹を立てることなんか、なかったのにっ。

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