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奥へ伸びる建物に沿う縦長花壇の、様々な花が風で揺れているのを見下ろせる非常階段の、三階と二階の間。そこで櫻は、櫻のいる病室のある三階への階段を、右後ろにして立っている。
そして目の前の藤谷が、目元に薄い影を作って右拳の骨を左手で鳴らしている。
――櫻はそんな幻覚を見たような気がした。脊髄損傷なんてされたい? と言われた時にだ。
そんな時までに、教えてもらったことがある。それは、ほぼ三日も眠りっぱなしだったのに何の怪我もなかったのは十分に怪しいということ。そして蓮司のいた組織が、隠れたところで半永久的エネルギーのイグズィスティンクスを振りかざして、もうすぐ空になる石油といった、エネルギー問題を解決させようとしてみせたり、医療や科学技術にも浸透したりして、まるで木の根が吸い取る栄養のような立場になりそうだということ。その、蓮司のいた組織の名前のアンチリファードは、ここの病院の人とも繋がりがあるかもしれないから、病院がお金欲しさかなにかで、十分怪しい櫻のことをアンチリファードに晒してしまうかもしれないということ。だから早くここから抜け出した方がいいということ。櫻はそれらを教えてもらった。
しかし櫻は、逆に退院することの方が不安だった。すでにこの病院に個人情報がある。もしこの病院がアンチリファードと繋がっているとしたら、秘密裏に個人情報を晒されて尾行とかまでされて、逆に危険になるんじゃないか? ――だから櫻はそのことを藤谷に言ってみた。
藤谷はしばらく悩んでいた。そうしている中で呟くように「一応、実は脊髄に損傷があったみたいな怪我があったことにしたら、怪しまれることはないのかもしれない」とは言われた。
「けど、脊髄損傷なんてされたい?」――そう言われた時だ。その時に藤谷の幻覚を見た気がした。というか嫌だ。絶対に嫌だ。だから櫻は全力で頭を振り続けた。
「でしょ?」と藤谷が呆れた風に言うと、また口を開けた。
「だから退院して、これからの時に備えよう? そのために今の異常な感覚を取り除かないと」
「取り除く? 取り除けるのか?」
「うん。イグズィスティンクスの力を借りるの。S.I.X.に願いながら意識して?」
「スィ、クス……って、武器化もできる腕時計のことだよね?」




