ら!
……こんな自分でも何かしてやれることがあるはずだ。授業で習った程度の運動も、勉強も、ゲームも好きなことも、人に誇れるほどできない、こんな自分でも。
そう長く、しかし頭がフル回転していたように感じている中で櫻は、両目の周りや両方の頬で乾きかけている感じを不快に思った。もう一度左腕で両目を拭いた。
その間に藤谷にどう言おうかと思ったので考える。むぅ、と考える。眉根が寄るほど考える。
全く言葉が浮かんでこない。
やばいっ、このままでは! と総毛立って生命の危機感とともに目を見開いた。
『ここは私? あなたは誰?』とでも言えばごまかせるだろうか。
――ってふざけんな! ごまかすなんてしてたまるかっ! と櫻は必死に頭を振った。
そしてハァ……と気だるく声を荒らげてげんなりする。知らない内に口をへの字にしていた。
ドアが何気なく開いた音に心臓をぶん殴なぐ)ら(れたと感じるほど、やけに大音量で聞こえた。そのせいで、麻酔をかけられた上から電撃を食らったかのように、体中が痛んだ。気のせいのはずなのに真面目に痛い。大口が開いて目を剥いた。
――しまったっ! と胸中で叫んだ。もしかしたら藤谷かもと思うと痛みさえも忘れた。
不気味な鳥肌に一気に襲われる中、顔を恐る恐る、左の最奥にあるドアへ向けていく。
……案の定、制服姿の藤谷から血の気が引いていた。
呼吸さえも忘れるほど、櫻はただ見ることしかできない。
藤谷が、今にも崩れ落ちそうな足取りで、頼りなくゆっくりと、歩み寄ってくる。
しばらくして、ベッドの傍に着いた。――途端前のめり気味にくずおれた。
藤谷の手が自然とベッドの端に置かれる。……その手がシーツを握り(にぎ)締めた。
「今、櫻が、どうなってるか……分かるよ。私の、仲間も……そう、なったのを見たこと……」
その藤谷の声が、辛そうに震えている。
「……やっぱり、……無理な……お願いだったよね……っ」
藤谷の両目が悲痛に細められる。藤谷の顔が悔しそうに歪む。
――そんな藤谷にさせてしまったから、櫻は眉根を寄せた。そして唇の裏側で歯を食いしばる。




