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3₃

 ――ありがとうだけじゃ済まないのにっ。

 美喜(みき)祐樹(ゆうき)幸生(こうき)もいるところへ、もうすぐ一緒に帰れると思ったのにっ!

 強烈な鈍痛(どんつう)(おそ)われながらも、全身を力むほど、(おう)は腹の底から思う。

 そんな中で、胸の奥底で荒々しく、激しく息づいているものに気づいた。

 まるで、全身の内側でウズウズしながら、外へ出たいと待ち望む感情だ。

 ――それを感じられたおかげで、なんで忘れられなかったのかが、分かった気がする。

 きっと、忘れる以上の形にしたいんだ。

 今じゃ、わがままになってしまったけど、それでもだ。

 藤谷は今もあの武器を持っているはず。何かと戦わなければならない状態なのかもしれない。

 こんな自分にだってできることがあるのかもしれないっ。

 だから櫻はもう顔を上げた。掛布団(かけぶとん)から出した左腕で――(にぶ)く痛くても――両目を()いた。

 拭き終えたから左腕を離した時、左手首に焼鉄色(やきてついろ)の腕時計をつけたままだ。しかも、それはヒビだらけだ。ヒビのところどころはわずかに盛り上がっていて、岩肌のようになっている。

 ――なんであるんだ!? と脳がショートしたかのように一瞬思考も時間も分からなかった。

 ……まさか、この腕時計のように、藤谷もっ!? と櫻は反射的に顔を左へ向けようとしたから、iCPC(アイスィーピース)を探す前に首が(にぶ)(すさ)まじく痛んだ。

 しかし頑張ってちゃんと左を向いて、しかし何もなかったから頑張って、右を向くと、壁と壁の角に隣接(りんせつ)している、白いサイドテーブルがあった。――そこの上には財布もiCPC(アイスィーピース)も、自宅の(かぎ)も置いてあった。その左隣には衣紋掛(えもんか)けがある。ブレザーなどの制服が掛かっている。

 右腕を上げようとすると思い出したようにまた(たま)らない鈍痛(どんつう)に襲われるが、頑張って上げて、頑張って手を伸ばして、iCPC(アイスィーピース)を五本指で(つか)んだ。

 と、最上両端(さいじょうりょうはし)のボタンを押して開いたが早いか、二つの画面が合体して一つの画面になった直後、着信通知のダイアログが現れた。美喜と祐樹からの不在着信とメールの通知がその中にあった。そのダイアログは基本、不在着信の通知で表示されるものだが、メール通知も一緒にある時は一緒に通知してくれるから、十三回の不在着信と七件のメールに櫻は焦りを覚えた。

 櫻は急いで通知ダイアログを見ながら三連続の瞬き(クリック)をした。ダイアログが消えて、電話画面の不在着信の項目が出たと思えば、受信トレイが重なって現れた。

 未読メールの一覧の中の、御宮美喜(みのみやみき)油賀祐樹(あぶらがゆうき)藤谷百合奈(ふじたにゆりな)気宇(きう)幸生(こうき)を見た。両親の名前も、受信時刻(2691/ 2/20)も見た。夜の十一時台にきたものらしい。

 しかし、中には二十二日もあった。二十三日のものもある。咄嗟に最上の現在時刻を見ると、二六九一年の(2691/)二月二十三日(2/23)。――四人の再現化された本心(ルニ・オーソナー)へ入りにいった日から三日後だった。

 そして、その間、ずっと眠り続けていたようだ。

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