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「大丈夫、だよ」と唐突(とうとつ)藤谷(ふじたに)に言われて、続いた。

「今、(おう)の背中に、何も動けない、丁度そこから、止まることしかできない、仕切りがあるの」

「……止まる……しか?」――仕切り? じゃあ急に止まったのは、そこにぶつかったから?

 しかし、藤谷はそれ以上話さなくなった。

 と、噴出音が激しくなるとともに、落下速度が落ちていく。

 櫻はできる限り顔を下ろして、目を落とすと、まさに高層ビル並の瓦礫(がれき)の山の頂上が、――長方形の岩が近い。すぐにそこへ、藤谷と着地した。

 突然背中に回された藤谷の両腕がストンと落ちたのを感じた時、力なく寄りかかってきた。さらに藤谷の息遣いが危なっかしい。(ひど)く苦痛そうだ。――櫻は強烈な危機感に(おそ)われた。

「……ごめんね。なんかもう、力入らなくて……、お願い、このままでいさせて」

 藤谷のかすれた声も、(ささや)いたようにしか聞こえないほどまで小さくなっていた。(やわ)らかくもない。あまりにも弱々しかった。――今こそ本当に藤谷がまずい!

「そ、それくらい構わないよっ。というか……ごめん。……これくらいのことしかできなくて」

「そんなこと、ないよ。私は大丈夫だから。……もう、終わるから」

「……え? 終わる?」

「うん。……もう、大丈夫だよ。……多分、もう少しでちゃんと、元に戻れるから……」

 藤谷が(しぼ)り出した声でそう言ったが、(かす)かに嬉しそうでもあった。

 その嬉しそうな感じが、痛みのように一層、心を打つほどのものだった。

 櫻は視界を上下に(つぶ)すように目元を力んだ。――涙が目に()まって、少しだけ(あふ)れ出てくる。

「それに、」と藤谷が言って、続いた。

「元に戻りたいと願えば……さっきの、戦ったこととか全部、眠ってる時に見る、夢のようになって、……知らない、内に……忘れている、ようになるよ……」

 え? と櫻は思った。「そんなばかな」――いや違う。忘れていた。蓮司(あいつ)の言葉が(よみがえ)った。空間創造(かんそう)されたのは現実空間の特定範囲でコピーだ。自分の知っている現実とは違うんだった。

「――いや、ばかな、だ。新空間(しんくうかん)でも現実だろ?」

「確かにそう、だけど……今、現実が、二つあるの」

 柔らかい感じに戻ってきた藤谷の声が、確かに、理解に苦しむことを言った。

 ……そう思う方がおかしいと櫻は思った。そうだ。ここはすでに現実空間のコピーだ。現実だってコピーされていても不思議じゃない。理解に苦しんでいる方がおかしい気がする。

「現実をコピーした、空間(ここ)と、空間移動(かんどう)する、前にいた現実空間、には、二人の私と櫻がいる。その……二つの空間は、二人三脚で動いてるの」

「ぼ、僕が……藤谷も、二人? というか二人三……って、一緒に、同時進行ってこと?」

「うん。……その、こっちの空間は、独似三次元空間(どくじさんじげんくうかん)って、いって……再現化された本心(ルニ・オーソナー)と、現実を混ぜた……ようにして、……現実を、再現化させたもの、なの……」

「ど、くじ、三次元空間……?」

 名前(それ)以上に、ここが再現化された本心(ルニ・オーソナー)とも関わっていることが、櫻はショックだった。

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