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 突然藤谷(ふじたに)の背中から重低音(じゅうていおん)が割れたかのような爆音がしたかと思えば、横回転されて背中が落下方向へ向いた。目の前が白く見えるほど蒼白(あおじろ)(かすみ)の一色だ。(まぶ)しくて目を閉めた。

 が、まるで持ち上げられているかのような感覚だ。徐々に上へ曲がっている。しかもすぐに止めたと思えば、跳び越えるように動いたり、迂回(うかい)するように右へ、左へ動いたりし始めた。

 ただ、見えないから分からない。分からない。何をしているのか分からない。

 いきなりパッと止まった。フェードアウトして減速するのが速すぎたかのように、前振(まえふ)りのない感覚で止まった。――それとも、フェードアウトして減速したところだけを忘れたのか? とも思いながら、(おう)は目を開けた。

 そして状況を把握(はあく)できた時、今、藤谷と止まっていることが信じられない。(かす)かに白く(かす)んで、ブレてもいる視界はさっきと何も変わっていない。藤谷が防いでくれているような形のおかげでほとんど感じないが、押しつけてくる圧倒的な力を両手両足に感じるのも変わっていない。なのに背中に仕切りがあるのを感じられない。

 しかし、四肢に感じる圧倒的な力が、不思議と弱まっていくのを感じる。そしてまるで暴風のように感じる。しばらくすると、突風のように感じる。突風とそよ風の中間のようなものに感じるとそよ風のように感じて、藤谷の黒髪の一本一本が顔面に触れてくる。風に()でられているように(なび)くから鼻先をかすったが、不思議と(かゆ)くならない。

 そんな中で、藤谷の熱いほどの体温を感じていられるほどになったことに、櫻は気づいた。微かに甘い香りもしている。女の子らしい香り。それが、場違いでも心地よく感じてしまう。

 何よりも、スゥ、と落下する感覚が激しくなっている気がする。――垂直に落下している!

 と、藤谷の足の方から噴出音が鳴り出した。――(ヘキサグラム)の霞の噴出音と同じだ。おかげで落下の速度が一定になった。それでもだいぶ速い。視界はもう元に戻ったが、霞しか見えない。

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