22222
しかし、意識が視界に戻った時、少しずつ小さくなっていく藤谷を、目に捉えた。
だから櫻は何度も頭を振った。そして藤谷へ左手を、限界まで伸ばす。
届けっ! 届いてくれっ!! ――突然、背中から、六つの後押しが爆発したが、全力疾走をした時と同じ感覚だ。顔に受ける風が強まる。藤谷の姿が大きく見えてくる。
ついに左手の指が、眉根を寄せて必死な藤谷の指と一度かすめた。――それでも、次こそはともっと伸ばすと、中指の第一関節を、人差し指に絡められた。藤谷と手を握り合えた。
不意にあり得ない力で引き寄せられて、――また抱き締められた。
藤谷の左耳側のツーサイドアップの髪が顔面をかすったと思えば昇っていく。何としてでも護ろうとするように抱き締めてくれる。その頼りなくて壊れそうな感触だけを、鮮明に感じる。
――でも、落下しているんだっ。一千メートル以上もある、最上階から!
強烈な生命の危機感に襲われる。涙が出てくる。頭がおかしくなりそうだ。
このまま地面にぶつかるのか? それとも瓦礫の山にか? 頑丈な?
しかも後に降ってくる無数の瓦礫の下敷きになるのか!? そうして死ぬ!? 死ぬのかっ!?
……嫌だ……嫌だっ! 助けてっ!! 死にたくないっ――!!
「後少し、……後少しで、終わるはずだから、我慢、してっ」藤谷の声が苦痛そうだった。
ただ、その時まで頑なに護り抜くとも言われているようだった。
櫻はハッと我に返って、目を見開いていた。しかし、胸が辛くて眉根を寄せた。




