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 しかし、意識が視界に戻った時、少しずつ小さくなっていく藤谷(ふじたに)を、目に(とら)えた。

 だから(おう)は何度も(かぶり)を振った。そして藤谷へ左手を、限界まで伸ばす。

 届けっ! 届いてくれっ!! ――突然、背中から、六つの後押しが爆発したが、全力疾走をした時と同じ感覚だ。顔に受ける風が強まる。藤谷の姿が大きく見えてくる。

 ついに左手の指が、眉根(まゆね)を寄せて必死な藤谷の指と一度かすめた。――それでも、次こそはともっと伸ばすと、中指の第一関節を、人差し指に(から)められた。藤谷と手を(にぎ)り合えた。

 不意にあり得ない力で引き寄せられて、――また抱き()められた。

 藤谷の左耳(みぎ)側のツーサイドアップの髪が顔面をかすったと思えば(のぼ)っていく。何としてでも(まも)ろうとするように抱き()めてくれる。その頼りなくて壊れそうな感触だけを、鮮明に感じる。

 ――でも、落下しているんだっ。一千(いっせん)メートル以上もある、最上階から!

 強烈な生命(いのち)の危機感に(おそ)われる。涙が出てくる。頭がおかしくなりそうだ。

 このまま地面にぶつかるのか? それとも瓦礫(がれき)の山にか? 頑丈(がんじょう)な?

 しかも(あと)に降ってくる無数の瓦礫の下敷(したじ)きになるのか!? そうして死ぬ!? 死ぬのかっ!?

 ……嫌だ……嫌だっ! 助けてっ!! 死にたくないっ――!!

「後少し、……後少しで、終わるはずだから、我慢、してっ」藤谷の声が苦痛そうだった。

 ただ、その時まで(かたく)なに(まも)り抜くとも言われているようだった。

 (おう)はハッと我に返って、目を見開いていた。しかし、胸が辛くて眉根を寄せた。

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