表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/221

222

 全力疾走する中で何かが背中から噴出(ふんしゅつ)されている。重低音が割れたかのような固い噴出音が厳しく響いてくる。両側の肩甲骨にも、そして両腰の下と、背骨全体にも、後押しを受ける。

 そんな中、蓮司(れんじ)から、電撃音とガラスの破砕音(はさいおん)が一斉に鳴ったかのような銃撃音(じゅうげきおん)が、連続で鳴り出した。一つの星の光のように小さくて蒼白(あおじろ)い光が一気に拡大したように(きらめ)き続けてくるが、周囲を何度も、まさに光速で(よぎ)っていく。ただ、その光は、次第に(こっち)に集中してきた。

 右耳右腰(みぎみみみぎこし)左肘上(ひだりひじうえ)みぞおち――全身に(たた)みかけられる。畳みかけられる。激痛まで感じ始めた。

 想像もしなかった。目を剥いた。死の恐怖まで抱いた。――でも今度は僕が()つんだっ!

 自然と涙が(あふ)れ出てきながら――だが、()り続けるのをやめたくない。

 もう藤谷にこれ以上させたくないんだっ。させてしまえば僕だけになるかもしれないんだっ。

 そうだっ。戦うことだけを考えろっ。

 そうやって自分に打ち込む。吐きそうになりながらも()り続ける。全身に全力を込める。

 唐突(とうとつ)に左目にも強烈な鈍痛(どんつう)を食らった。右膝(みぎひざ)にも左腿(ひだりもも)にも食らって、前のめりにバランスを崩した。左頬(ひだりほお)白い氷の床(スケートリンク)にぶつけて(すべ)っていく。が、(こす)られる音が鳴るだけで、痛みはない。

 だから顔を上げると、今度は(あご)に若干の刺激痛(しげきつう)(いだ)く。(いだ)きながらも、四肢(しし)がもつれながらも(おう)は、何としてでも立ち上がろうともがいて、立ち上がった。

「ぅゔおおおおおおおああああああ!!」諸々(もろもろ)の痛みと邪魔な感情を隅っこに追いやりたくて、目を()くほど()え続ける。「――ああああああああああああああああああああああ!!」

 急に背中からの後押しが強くなり過ぎたから、グワンと速度が急激に上がった。

 その加速を感じながら、全力疾走まで超えた。――低空飛行。

 この時も突然、(あわ)蒼白(あおじろ)い一閃たちが両側を(ふさ)ぐように、後ろから(よぎ)っていく。

 櫻は自分と蓮司を囲んでいるような気がした。きっとこれは藤谷(ふじたに)からのものだとも思った。

 ついに距離を数メートルほどまで()めた。櫻は蓮司を(にら)みながら太刀(たち)を大きく振りかぶる。

 追い詰められた風な表情に変わった蓮司も、ハンドガンを全力で投げようとするように振りかぶりながら、一瞬でレイピアへ変形させた。さらには目を見開きながら笑って大口を開けた。

「所詮はその場のォ!!」その叫びを聞いた時には目前に迫った。櫻は太刀を左下へ強振する。――氷塊(ひょうかい)がけたたましく(けず)られているかのような激突音が爆発し出した。

 その激突音がやまない。服の下の皮膚(ひふ)まで()かんとするほどの激しい衝撃(しょうげき)にも(おそ)われている。白い(まぶ)しさも強烈だ。櫻は目元を力みながら目を細めた。ただ、その眩しさは、藤谷と蓮司の背中や足から何度も見た、(あわ)蒼白(あおじろ)(かすみ)だ。さらには上昇していっているように見える。

 その手前に焼鉄色(やきてついろ)の刀身があるのも、(かす)かに見える。

 と、(つば)の辺りから両手の中の(つか)にヒビが入る振動を感じた気がした。なのに刀身にはヒビが入っていないように見える。分からない。分からないが、とてつもない危機感に(おそ)われた。

 ――いや、傷ついたって無駄にはならないっ。少しでもこっちに意識を向けさせて、余裕をなくさせれば、二人で生き残れる可能性が絶対に広がるっ!

 (くちびる)の裏側で食いしばる歯が()き出しになるほど腹の底から、櫻はそう思った。

「くたばれぇええええええッ!!」腹の底から()り下ろす力を増していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ