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『データベース、ディレクトリの再構築を完了。(ザ データベース ァンド ザ ディレクトリ ウェァ リストラクチュァード。)フルフィルメントドライブ最適化(フルフィルメントドライブ ォプティマィゼィション)』
――また聞こえてきた。機械音声のような自分の思考の声だった。
『ケンノゥトプロセッサーのトライ・パッケージ・ブーストを有効(ザ トライ・パッケージ・ブースト ォブ ザ ケンノゥトプロセッサー ヮズ メィド ェフェクティヴ)』
不気味だ。恐い。英語なんて苦手だ。頭が狂ってしまったのか?
『〝AREAcode〟、〝Yroeht Nielk-Azulak〟の読み込みを完了(ジ エリアコード ァンド イレート・ニルク=アザラーク ウェァ リード)』
おかしい。初めて知ったはずの新しい情報を、思い出しているかのように理解している。
『〝MERSLSBSPE〟、〝S.I.X.〟、共に異常なし(アブノーマリティ ィズ ノット ファウンド ィン 〝メーリーソラスバースパイ〟 ァンド 〝スィクス〟)』
しかし櫻は、なぜかこれが、藤谷からの腕時計と脳が接続されている確認だと分かった。
『〝EXISTINX〟を発現中』
微かな当たりを感じるだけで済んでいるのは、イグズィスティンクスのおかげだと分かった。
――本当に、腕時計のおかげだというのか? 思い出を再現化させる腕脳。それだけのはずのこの腕時計が、そもそも普通のお護りでも、直接護ってくれたかどうか、確かな証拠が頭に浮かんでこないというのに、護ってくれているというのか?
分からない。――頭も胸の奥底もごちゃごちゃしてぐちゃぐちゃしている。
「もらったあ!!」蓮司の得意げな叫び声で櫻はハッと、知らない内に俯いていた顔を上げた。
切っ先のような銃口を向けられている。――すでにつばぜり合いを終えたレイピアが変形も終えていた。強烈な生命の危機感が呼吸を忘れたほどだった。咄嗟に両腕で顔を覆っていた。
その直前に切っ先のような銃口が淡く蒼白く瞬くとともに、電撃音とガラスの破砕音が一斉に鳴ったかのような銃撃音が炸裂した。
右腕に彫刻刀でも突き刺さったかのような衝撃を受けたが、なぜか、別に痛みはなかった。
「何だ何だ!?」蓮司の遊び半分な声が、不自然に強く響いてきた。
恐る恐る、覆う両腕を解いて、右腕の痛みのする方を見たが血の染みも焦げもない。ハサミで縦に切られたかのような、横に広がっている穴しか見当たらなかった。
「なーにしたよお、藤谷ぃ!!」と蓮司が舐め切ったように怒鳴ったが、それを気にしているどころではない。不思議だ。あまりにもだ。切っ先のような銃口は確かに、淡く蒼白く瞬いた。藤谷から血を吹き出させた鋭さがあるはずだ。
ハ、と櫻は直感したように気づいた。
藤谷からのお護りが、イグズィスティンクスが、本当に護ってくれているんだと。
――それなら藤谷も護ってくれッ。
美喜たちの中に藤谷がいないなんて、死んだ方がマシなんだ!!
ふと、お護りが、腕時計だというのに、人肌のように温かい。そして握り具合が握りか何かを握っているかのようにしっくりくる。もしくは太刀の柄でも握っているかのようだ。手の中にギリギリ収まる腕時計を握る感覚ではない。すかさず櫻は右手の中を見た。
それはすでに出来上がっていた。ナックルガードがまさに斧の刃になっている焼鉄色の太刀に刀身だけがない。そうとしか見えない。そんな太刀の柄を握っているようにしか見えない。
なぜこうなったかは分からない。それでも目の前に見えるものは見間違いじゃない。
しかもこれに、藤谷も、と願った瞬間こうなってくれた。そして今、目の前にある。
もう現実だ。
そういえばこうなる前は、蓮司の腕時計と似ていた。不思議じゃない。きっと僕の望みだ。




