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「なんとなんとまあ!」その蓮司(れんじ)愉快(ゆかい)そうな(おどろ)きを聞くや(いな)や反射的に蓮司へ顔を上げた時、切っ先のような銃口を向けられた。そしてそこから手前の下に、藤谷(ふじたに)の後頭部が見える。

 その後頭部が、そして藤谷の背中が、銃口を隠した。

 電撃音とガラスの破砕音(はさいおん)が一斉に鳴ったような銃撃音(じゅうげきおん)。――しかし藤谷が左腕を外へ力強く払った。まるでガラスの破砕音。そこから、白い氷の粒のような光たちが散って消えたように見えた。さらに藤谷は、今度は両腕のシールドを下へ投げて、白い氷の床(スケートリンク)に突き刺した。

 つられてその方を見たから、そのシールドの内側が見える。トンファーの先が(にぎ)(こぶし)を隠すほど太くなったような銃身(バレル)のライフルだった。

 蓮司の方から再び銃撃音が炸裂した。藤谷の体に直撃したから、こっち側へ押されたように揺れたのだが、痛がることも、何もしていない。

 銃撃音が何度も炸裂するのに何もしようとしていない。その体が揺れるばかりだ。

 途端(とたん)、ゆっくりと、(こっち)へ身を、(ひるがえ)し始めた。 ――その向こう側で、さっき藤谷が左腕を外へ払った後に消えた光と同じ光が、同じように消えていった。

 体の正面も、藤谷の表情も(こっち)に向いた。痛々しそうでも、両肩が狂ったように揺れていても、必死に(くちびる)を、真一文字(まいちもんじ)に結んでいる。眉根(まゆね)が少しだけ寄せ上がっていても、(あお)を帯びる黒茶(くろちゃ)(ひとみ)で、真っすぐ見つめてくる。――なぜか、瞳が碧を帯びている。

 銃撃音はまだ絶えてくれない。

「櫻は、自分を責めないで。でなきゃ……私、櫻を助けたいのに、全部無駄になっちゃうよ」

 聞いて、櫻は自分の顔がめちゃくちゃに(ひず)んだのを自覚した。

 悲しさが(つぶ)れそうなほど込みあげてきた。そして自分が悔しい。――()かずにはいられない。

「どうしてだよっ、……あんなにまで、なったのになんで……でも……生きてて……くれ……」

「櫻を助けるまで死にたくないからだよ。これが、心臓を元の形に戻してくれてるおかげでね」

 藤谷が自分の左胸に、左手を当てた。そのおかげもあって、より一層、左胸の傷口らしい、心臓の辺りから肩にかけての、糸のような蒼白い光の一直線がよく見える。

 まさにそれだ。その蒼白い光のおかげだと藤谷が言った。心臓も、言われた通りなのだろう。

 藤谷がそっと微笑(ほほえ)んだと思えば、優しく(かぶり)を振った後、口を開けた。

「私、櫻に()()いてほしい」――真剣な眼差(まなざ)しを向けられて言われた。

 銃撃音はまだ絶えないというのに、声がはっきりと届いてきた。

「どんなことがあっても生き貫いているって、櫻も願って。一時もやめないでそれを願ってっ」

 今も、藤谷の声が(ふる)えているほど切実だった。

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