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と、蓮司の口が開いた。
「イグズィスティンクスは生命でもあるんだ。だから、遺伝子の無限の繋がりの向こうにいる、無限の親の、一人一人の生命もイグズィスティンクスなんだ。なのにお前はっ、」
蓮司がハンドガンの切っ先のような銃口を向けてくる。
「その祖の生命を、イグズィスティンクスを、本心の再現化で膨大に消費して、なかったことにさせてきたんだよ。あたかも先祖の一人一人が、この世界の過去に生きていなかった存在にしたかのように。消しやがって! 消費するってのは姿形をなくすからなあ! 誰のおかげで生きられてんのかも忘れてだ!!」
櫻は、渾身の力を込めるほど腹の底から念じ続ける。
それで蓮司が銃口ごと粉微塵になってしまえばいい。本気でそうなって欲しい。
「先祖がどんなに粗末にできないか分かるか? 親の親、その親の親って遡っていけば、縄文時代までだけじゃない、ホモサピエンスの祖の祖、起源、その起源、自分の親が無限にいんだ。その祖がいたからこそ、自分まで続くことができてんだ。だから、その記憶である遺伝子が、自分まで繋いでくれた無数の祖との、唯一の繋がりだって分かるんだよッ」
――殺したくせに、さっきから必死に叫んでくる。余計にぶっ潰したくて堪らないッ。
「お前は自分の生命が減っても元に戻ることをいいことに、自分を大切にするフリをするために削っ(けず)た! 自分の中に無数といてくれている祖を大量に殺した大罪人なんだよっ! そんなお前は他人まで殺した!!」
「いい加減黙れッ! 全部全部妄想だ!!」
例え本当だとしても、蓮司にだけは言われたくないッ!!
「あんたが藤谷を殺したッ!! あんたがぁああッ!! 殺したあああああああ!!」
目も口も裂けそうなほど開けたほど、腹の底から吠えてやっても、効いちゃいない。
言葉だけで殺すことができればと、櫻は切実に思う。しかし言わずにいられない。
「大切なことをたくさん思い出させてくれたんだッ。どうせ誰にも必要とされないで死ぬんだって思ってた僕に、そんなことないって教えてくれたんだ!! でもまだっ、……何も、返せて」
「あぁ、何も返せなかったのね。それはお前がトロかっただけなんじゃないの?」
ガンッ!! と頭の中を揺さぶられ過ぎて、意識が飛んだような感覚がした。
それでも。それでもだっ。
「……なんで、殺すまでしたんだッ。なんで藤谷のことを考えなかったんだッ!! 藤谷の親のこともッ!! 藤谷の周りのこともッ!! 僕だって藤谷の周りの一人なんだぞ!!」
「おいおい、相手のこと考えたら殺せねぇだろ。お前バカじゃねぇの?」
「ッ、アアアアアアアアアアアアアアア!!」櫻はよろめきながらも早く、早く立ち上がった。そして、殴りかか――駆け出そうとしたが蓮司は銃だ。刃物だった。それらで戦っていた。
……蜂の巣にされたり、斬り殺されたりしにいくだけだっ。
止めて、抑えて諦めて、両手が壊れそうになるほど握り締めるしかない。
しかしそれだけでは気が済まない。――気が済まないっ!!
「そうやって僕まで殺してぇ! 自分だけ得する魂胆だあんたはぁああああ!!」
「ィヒャハーッ! 俺はそれを罪とは思えないね。そうしてでも生きたいんだからさあ!」
そんな風に返されるとは思わなかった。信じられなくて櫻は絶句した。




