222222222222
「最期までやわい感情に覚悟だったなんてね! 破れちゃったじゃんか心臓がよぉお!」
その不気味なほど楽しそうな蓮司の声で、櫻は顔を跳ね上げた。
蓮司が嘲笑いながら歩いてくる。しかし全身が震えていて、地に足がついていない頼りなさ。
そんな蓮司の様子を、櫻はぼーっと眺めることしかできなかった。
しかし、鳥肌が気持ち悪い。顔も、全身も震え出したのを感じた。危機さえも感じている。
と、蓮司が藤谷まで二三メートルのところで止まった。
――さっきから、二人して、何をやっていたのか、分からない。
いや、藤谷が護ってくれたことは分かっている。
ただ、全く分からない何かが爆発した。撃たれた。桜色の血が出て倒れた。心臓が破れた?
――視界が激しくブレた時、両膝が氷の床に激突した。全く反発してこなかった。
全身が力んで、まるで燃え上がったように熱くなった。きつく眉根を寄せて細めた目から、痛いほど涙が絞り出されてきた。
歯がガタガタ震える。涙が頬を伝っている。いつの間にか両手を渾身の力で握り締めている。
胸の奥底が軋んで、今にも壊れそうだ。信じられない。――ウソだろ藤谷っ!!
「ぁあっ……ぁああああっ――――!!」息が詰まるほど苦しい。「ぁぁあっ――――――!!」声が出ないほど辛い。目が閉まる。自分を抱え込むように震えている体が曲がる。両手の拳を潰さんとするほど握り締める。「ゔぁゔっ――――ぁあゔあぁぁあゔっ――――!!」胸が辛い。頭の内側がジャアアアと焼きついて、今すぐ粉々になってしまいそうだッ。
もう、胸の奥底も、全身も全部ッ。
目の前が滲みすぎて、揺れる水面のすれすれまで目を近づけたかのようだ。
――信じられないっ。信じられるものかっ! きっとただ気絶しているだけのはずだっ! あまりにもびっくりさせられたせいで、呆然としているのが長いだけのはずだっ。
確かめたい。だから顔を上げて、――見て取れるほど、永遠に動く気配がないような藤谷の背中を見た。しかし、余計に堪え切れなくて、視界を潰すように目を細めた。
すがりたいような気持ち。藤谷へ近づきたい。前に進むことも難しくて、氷につける右手を滑らせながらも、左手も両膝も滑らせながら、それでも何度も繰り返す。




