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最期(さいご)までやわい感情に覚悟だったなんてね! 破れちゃったじゃんか心臓がよぉお!」

 その不気味なほど楽しそうな蓮司(れんじ)の声で、(おう)は顔を()ね上げた。

 蓮司が嘲笑(あざわら)いながら歩いてくる。しかし全身が(ふる)えていて、地に足がついていない頼りなさ。

 そんな蓮司の様子を、櫻はぼーっと(なが)めることしかできなかった。

 しかし、鳥肌が気持ち悪い。顔も、全身も震え出したのを感じた。危機さえも感じている。

 と、蓮司が藤谷まで二三(にさん)メートルのところで止まった。

 ――さっきから、二人して、何をやっていたのか、分からない。

 いや、藤谷が(まも)ってくれたことは分かっている。

 ただ、全く分からない何かが爆発した。撃たれた。桜色の血が出て倒れた。心臓が破れた?

 ――視界が激しくブレた時、両膝(りょうひざ)が氷の床に激突した。全く反発してこなかった。

 全身が力んで、まるで燃え上がったように熱くなった。きつく眉根(まゆね)を寄せて細めた目から、痛いほど涙が(しぼ)り出されてきた。

 歯がガタガタ震える。涙が(ほお)を伝っている。いつの間にか両手を渾身(こんしん)の力で(にぎ)()めている。

 胸の奥底が(きし)んで、今にも壊れそうだ。信じられない。――ウソだろ藤谷っ!!

「ぁあっ……ぁああああっ――――!!」息が詰まるほど苦しい。「ぁぁあっ――――――!!」声が出ないほど辛い。目が閉まる。自分を抱え込むように震えている体が曲がる。両手の(こぶし)(つぶ)さんとするほど握り締める。「ゔぁゔっ――――ぁあゔあぁぁあゔっ――――!!」胸が辛い。頭の内側がジャアアアと焼きついて、今すぐ粉々になってしまいそうだッ。

 もう、胸の奥底も、全身も全部ッ。

 目の前が(にじ)みすぎて、揺れる水面のすれすれまで目を近づけたかのようだ。

 ――信じられないっ。信じられるものかっ! きっとただ気絶しているだけのはずだっ! あまりにもびっくりさせられたせいで、呆然としているのが長いだけのはずだっ。

 確かめたい。だから顔を上げて、――見て取れるほど、永遠に動く気配がないような藤谷の背中を見た。しかし、余計に(こら)え切れなくて、視界を(つぶ)すように目を細めた。

 すがりたいような気持ち。藤谷(ふじたに)へ近づきたい。前に進むことも難しくて、氷につける右手を(すべ)らせながらも、左手も両膝(りょうひざ)も滑らせながら、それでも何度も繰り返す。

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