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 少年の方から、電撃音とガラスの破砕音(はさいおん)が同時に鳴ったかのような固い大音量が、連続して鼓膜(こまく)をぶん(なぐ)ってくる。少年のいる右下の方から無数の一閃(いっせん)が、まるで光の速さで藤谷(ふじたに)の周りの、ギリギリの辺りを(よぎ)っていく。その一閃たちは流れ星のような輪郭(りんかく)だ。雪のくぼみに見える淡い(あわ)青のように蒼白(あおじろ)い。それらに藤谷が囲まれている。

 突然藤谷の方で、重低音(じゅうていおん)が割れたかのような固い大音量が爆発した。その時には下へ、(たて)の見えない床を()ったかのように()け出していた。

 その両脚(りょうあし)全体の後ろから噴射(ふんしゃ)されているらしい(かすみ)の風も、周囲を過る一閃と同じ、蒼白さ。その軌跡(きせき)が広がって薄まって消えていく。

 そして藤谷は、その身に迫ったり、行く先を過ったりする一閃たちを、縦の床を蹴っているようにかわしていく。銀世界の森林の中を高速で進んでいく姿を、木の上から見ているようだ。

 そうやって藤谷が急降下していくと、ついにスケートリンクへ、インラインスケートで急な坂を下るように入った。その時シールド裏の銃身(バレル)の両側から、(なが)ナイフのような二本の外向きの黒い刃が、銃口を縦に囲むようにスライドされたと思えば、銃口を()み込んで諸刃(もろは)となった。

 ――重低音が割れたかのような固い噴出音が、右下の少年の方からも聞こえた。

 (おう)は反射的に顔を正面へ下ろしたが、少年の姿はない。代わりに床の氷が砕けて()いた(くぼ)みと、その辺りで広がって薄まる霞の軌跡があった。――左から、氷塊(ひょうかい)が爆発したような激突音(げきとつおん)

 咄嗟(とっさ)に藤谷の方へと向いた時には、藤谷と少年が激突し合っていた。それは、少年の右手の、すでに変形した後のカラス色レイピアと、藤谷のシールドからの黒い諸刃のつばぜり合い。

 その、恐らく二人の刃の間からあの、藤谷の周りを過った無数の一閃と、同じ色で輝く欠片(かけら)たちが爆散(ばくさん)している。その欠片たちが、膨大(ぼうだい)で細かすぎる水飛沫(みずしぶき)のようだ。

 ――(にぶ)く弾ける固い音。藤谷が体を反転させて、後ろ姿を見せてきながら(せま)ってきた。

「そこから動かないでっ」叱るような厳しい声で櫻はハッと我に返った。耳も疑った。まるで藤谷の声ではなかった。普段の(やわ)らかい感じが、その声にはなかった。

 そんな藤谷のツーサイドアップの後ろ姿が少し先で止まっている。氷の上なのに全く(すべ)らず、地に足をつけるようにようにしっかりと止まっている。

 突然、重低音(じゅうていおん)が割れたかのような噴出音と突風を受けたと同時に、視界いっぱいに真っ白に、(まばゆ)く光ったから櫻は目を細めた。が、その眩しさは一瞬で終わって、元の視界に戻った。

 (ヘキサグラム)の形で六方向へ噴出されているような、淡く蒼白い霞の風の名残(なごり)が、先に見えた。

 と、氷塊がけたたましく(けず)られているかのような激突音が、さっき以上に爆発し続けている。

 胸の奥底と腹の奥底をハンマーで(なぐ)られたように叩きつけられた。胸の奥底がズンズン痛い。

 櫻は半目になるほど眉根(まゆね)を寄せるが、二人を覆う異常な現象が見える。

 突風が気にならなくなって目を開けながら、体を二人の方へ向けていた。

 さっきに見た二人のつばぜり合い以上だ。


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