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少年が呆れた風に鼻で笑った。
「お前の知ってる腕脳とかiCPCとかのやる空間創造とは一味違うんだよ」
そうやってついさっきに思い知ったことを直接言われたのが、何だか腹立たしかった。
「しかし間創そのものを行ったことで巻き込んだわけではないよ。そもそも間創ってさ、人間の思考空間を参考に、家や惑星みたいな、固定された空間同士の間に無理やり割り込むように新空間を創造することができるってだけだし。それができるのは、宇宙が膨張しているからなんだ。いくらだって広がれるのよ。宇宙が誕生してからの長い年月の中で、固定された空間が配置されている場所の、柔軟な空間が膨張し続けてくれて、今もそうしているからな」
そのひけらかすような口調に腹が立つ。――歯を食いしばることしかできない自分にもだ。
「だから後は空間情報を捉えるだけだ。しかしそれも簡単なことだ。光を受けた物体から反射する光には細密な位置情報が含まれていた。人間の脳はその中の微塵の情報しか識別できないが、受け取った全ての位置情報は存在証明という記憶として保存される。しかし腕脳によって識別ができるようになった。だから現実と一%しか違わない、新しい人生を創り出せたんだ」
それは全く知らなかった。そして知らない内に目を見開いていたことに、櫻は気づいた。
――まさか、何らかの手で祐樹たちのルニ・オーソナーに侵入していたから、捉えられた?
「つまり、現実の特定範囲の空間情報をコピーして間創してんのよー。さあ逃げてみな!」
もう櫻は聞いてられなかった。危機感、焦り、――ごちゃごちゃになった感情にまみれて、もう解ろうとするどころではなかった。
さらに少年が、ハンドガンの、縦長に平べったい、切っ先のような銃口を平然と向けてきた。
体がガタガタ震え出した。クソッ! と櫻は胸中で吐いたが無意識に全身が震えてしまう。そんなことで助かるわけがないのは分かっている。だから櫻は歯を食いしばって震えを抑え
固い破砕音が降ってきた。――無数のガラス細工を一斉に床に叩きつけたかのようだった。
ハッとその左上の方へ、櫻は顔を跳ね上げていた。
「ィヒャハー来たな藤谷百合奈ぁあ!!」その少年の楽しそうな叫びが聞こえた気がしたが、櫻は忘れた。信じられなかった。そんな、これほど高い、そして爆発でも破られないほど硬いはずの天井を破って下りてくるような、そんな人に思えない藤谷が、制服姿で下りてくるのだ。楽しそうな時でも大人しい雰囲気だが人懐っこい感じで、そして事情があるようでよく遅刻をしてくるし、よくボーっとしている。そんなでも真っ向から話を聞いてくれる。そんな藤谷が。
スカイダイビングのようにうつ伏せだ。大きく破られた天井から降ってくる、無数のガラスの破片と一緒にだ。夕色に輝く破片の中の、藤谷の鋭い眼差しが、まさに、静かに怒っている。
それよりもだ。右腕に身の丈ほどの縦長のシールドが装備されている。そしてその内側から、長い銃身を逆さ同士に合わせたようなそれと、切っ先のように平べったい二つの銃口が一つになったような、そんな銃口が覗いている。さらにその二丁の全てが墨のように黒い。
櫻はもう何もかもが信じられない。




