表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/221

00

YO(ヨォ)


 突然だった。

 確実に、右の耳元で(ささや)かれた。

 妙に大人びた高めの声。しかも知らない声だ。(おう)は目を見開いていた。

 ゾ、とする。背骨の上をナイフの切っ先でなぞられているような、不気味な悪寒(おかん)

 見たい。

 何があるのか、気になる。目だけでも向ければ少しは見えるだろうと思う。怖いもの見たさだということも(わか)っている。もし見たら後悔するものだったら、と不安にもなっている。……でも見たい。なのにまばたきさえもできない。動けない。目が開きっ(ぱな)しだ。(かわ)き切りそうだ。

 祐樹(ゆうき)の方を向いている藤谷(ふじたに)も気づいてくれない。呆れた風な美喜(みき)愚痴(ぐち)を聞きながら苦笑いしている。――ふと、こっちを向いて気づいてくれて、何らかの反応をしてくれたらいいのに。

DO(ドゥ) YOU(ユー) REMEMBER(リメンバー) NOW(ナウ)?」

 体の内側が後ろへと引きずられる感覚が、高速道路の料金所を通過した後に車の中で感じる慣性(かんせい)のようだった。視界も目眩(めまい)のように分からなくなった。――呼吸を忘れたかのように空気まで吸い込めない。両耳の中で膜がパクパクと鳴るような音までもパクパク聞こえてきている。

 急に景色が映った。

 最奥(さいおう)()(えだ)の木々(きぎ)の手前で、売店だった建物たちが行き止まりように通路を囲っている。その手前に横の通路。――ゲームセンターだった建物の入口から見た景色。

 遊園跡地(ゆうえんあとち)の中だ。

 五年前まで民営鉄道会社(みんえいてつどうがいしゃ)一環(いっかん)として運営していた遊園地だったが、経営不振(けいえいふしん)か何かの理由で閉鎖された遊園地の中だ。何より、ここは侵入口から近い。

 しかし櫻は分からない。何故、侵入した後のようにここにいるのか、どうしても分からない。

 と、度々(たびたび)()雨粒(あまつぶ)がビニール傘にブツブツ当たっているような音が聞こえ出した。

 あ、と思い出して振り返ると、自分のも含めた四人のサブバッグが、柱に寄りかかっている。

 ――戻っている! 

 いや、なんで強制退空間移動(たいかん)されたんだ!? ……誰かがしたのか? まさか侵入者とか?

 今度はオルゴールが壊れかけているから音程が外れて、不気味になったようなその音が爪先の方から聞こえてきた。――え? とその方へ顔を下ろすと、カード型ICレコーダーがある。

 それを拾おうと(かが)んだ時、革靴(かわぐつ)の底がアスファルトを(こす)る足音が近づいてきた。櫻は咄嗟(とっさ)にその方へ顔を向けながら、ゲームセンター跡の中へ身を(ひるがえ)そうとしたが、いつの間にか遠くに現れた黒いロングコートの警備員と、すでに目が合っているに違いないと気づいたからやめた。

 警備員が、最奥(さいおう)の建物同士の間から歩いてくる。その両手が、人差し指と中指を切断されて、その内側に回転式の拳銃(けんじゅう)を埋め込まれているかのようだ。シリンダーの前で銃身(バレル)が伸びている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ