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袴田(あいつ)はな、お前の再現化された本心(ルニ・オーソナー)にも群がる、お前の友達にも虫唾(むしず)が走った。復讐(ふくしゅう)だよ。しかしお前がチクったせいで台無しにされた。叶わなかった。袴田(あいつ)は気が遠くなる時間の中で、辛く苦しくもどかしく生きることを、お前に強制させられてしまったんだよ」

 まさに袴田(あいつ)が被害者のような言い方だ。――そうだっ。袴田(あいつ)が被害者みたいじゃないか! 例えそうだとしてもどうすることもできないっ。僕が学校から消えなければ解決できない。

 もう、もう気が済まない。殺意しか感じない。下から(にら)みつけるだけでは気が済まない。

 袴田(あいつ)のために、僕がぶっ(つぶ)される方が筋合いだったのか?

 僕がやられるがまま追い込まれるのが、人として最善の行いだったのか?

 痛いのも、辛いのも苦しいのも、どんな人間だって、どんな動物だって、嫌がるのにっ。

「さぁ死にたくなってくれたかいよ?」

「なって(たま)るかぁああああ!!」(のど)が潰れてしまいそうでも()えなければ気が済まなかった。

 (おう)は全身に力が入る中で、よろめきながらも立ち上がった。

「……あーそう。じゃあお前は俺に殺されてしまうよ」

「何だと!?」しかし少年は、あーそうと言った時からまた斜め上を向いているままだ。

「イグズィスティンクスを求めないばかなお前を殺さなきゃ、大切な妹を返してくれないのさ」

「……で、でも僕は何も、欲しいとか何も言ってないだろ!?」

「だからって、どうしてもイグズィスティンクスが欲しいだなんて、思ってないんだろ?」

 その通りだから、櫻は(うな)るしかなかった。顔を向けてきた少年を(にら)むことしかできない。

 もう逃げるしかない。だから周りを見渡したがどの出入口の扉も閉まっている。

 ――逃げられない!

「逃げられるもんなら逃げてみろ。ここはな、家の中のような三次元空間だ。俺はここへの空間移動(かんどう)に、お前も巻き込んだんだよ」

「な、何を言ってんだっ。間動(かんどう)をそんな風に使えるわけないだろ!」

「勝手に間動された理由が、お前を巻き込んだからなのにそう言うのか?」

「そんなの」――櫻はハッと思い出した。知らない声に、二度目に囁か(ささや)れた直後の感覚を。

 そういえばiCPC(アイスィーピース)を開いた時、エクスクラメィションマークがなかった。『確認』というボタンを押さなければ半永久的に消えない〝AREAcode(エリアコード)〟の確認画面が表示されていなかった。

しかし、不思議なほど独特な感覚だった。入空間移動(にゅうかん)の感覚だった。――それは今日の学校でも抱いた感覚だ。学校や()山層()建山()()内の施設に行った時でも抱く感覚だ。

 ……まさか、知らない声に囁かれた時からもう、巻き込まれていたのか!?

空間移動(かんどう)のことも話してやろうか。ゾッとするよ?」少年がまさに遊び半分で口にした。

 もう、気持ちが、それに答えているどころではない。櫻はもう、何もかもが終わったとしか感じられない。涙が込み上がってきて、目にわずかな熱が(にじ)んだ。――腹の底から悔しいっ。

 死にたくないっ。死にたくないんだっ! まだっ。まだっ!! 絶対に嫌だッ!!

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