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「さらにだ」と少年が真剣な表情で続けてくる。
「お前に知られたくなかったからなんだろうけどな、できない奴らみんなにも、本心を再現化させられるやり方を、袴田は知っていた。袴田は交換条件を出した。『大竹櫻をぶっ潰すのを手伝ってくれたら、やり方を教えてやってもいい。俺はそのやり方で安全に成功した。それを教えてもらうまでは、ルニ・オーソナーできる奴が一人いれば問題ないだろ?』って」
そう言って、少年がまた気味の悪い笑みを浮かべた。
……頭がぼんやりしてきた。
「友達が敵になったのは、袴田からやり方を教えてもらうための交換条件だったんだよ」
視界まで揺れた。――いつの間にか膝をついていた時の痛みも他人事だった。
「そーなっちゃうよねー。ま、再現化された本心は新しい人生って呼称されるほど憧れさせる代物だ。友達や家族以上に、恐らくは、他人の生命以上に魅力的だったからなんだろうなー」
だからと言われても櫻は信じられない。
「――あぁ、違うか。何で袴田はそこまでしてでもお前をぶっ潰したかったのかの方か。けど、これは理不尽なことだ。お前が袴田と出会っちまったせいなんだなぁ」
「……何を……言って……?」
「袴田はお前が感覚的に嫌いなんよ。そしてそういう気持ちを抑えられなかった。まだそんなに長く生きてないからな。だからまだ感情を上手に制御できないんだよ。それなのに、さらに、ルニ・オーソナーの中にまでも、望んだ覚えのないお前が現れる。いつだって現れてしまう。脳は正直だが意識はそうではない。その二つが一致してれば幸せなのに、不一致だった」
――そういえば、と櫻は目を剥いた。
袴田を殺し続けることが快感だった頃の、狂った自分が、一気に彷彿された。
「ルニ・オーソナーでは正直な脳の願いが叶えられてしまった。忘れられないほど気にかかる存在が勝手に現れてしまったんだ」――同じだとも気づいた。袴田が先に苦しんでいたんだと。
「さらに袴田は、お前が本心を再現化させられるのを知ってるんだ。袴田は、自分が苦しんでいるというのに、再現化された本心そのものは同じでも、中身が全く違うそこで、ぬくぬくと楽しんでるお前が、殺したいほど許せなかった。だからその願いが叶ったのさ」
不愉快なほどザワザワする、理由の分からない最悪な罪悪感に、胸の奥底を掻き毟られる。
「袴田は、ルニ・オーソナーの中で何度も何度もお前を滅多刺しにして、また現れては四肢を千切って出血死させたり、頭をかち割って脳を握り潰したりして、殺し尽くそうとしてやった。だがその後は決まって、無意味さを思い知って虚しくなる。殺した感覚が現実でも、目の前で起きたのは似て非なる現実だ。最早一〇〇パーセントと九九パーセントなんだ。しかも実際に死んでくれてないんだよ。苦しいさ。辛くて悲しいさ。そのせいでまだ精神病院だぞ?」
今も胸の奥底を掻き毟られている。
――その尋常ではない罪悪感を許せなくて、櫻は唇の裏側で歯を食いしばり続ける。




