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と、少年がげんなりしながらため息を吐き出した。
「ィ、……イグズィスティティンクスは、……さっき初めて聞いたのか?」
「……そ、う……だけど……」――少年が口をポカンと開けたまま、また動かなくなった。
その圧倒ぶりは櫻まで圧倒されるほどで、そして不安になるほどだった。逆に知ったかぶりをした方がよかったかと不安にもなったので、眉根が寄せ上がるし、口がへの字に歪んだ。
少年がそのままの格好で鼻で笑った。
また吹き出して両肩が跳ねた。そしてまた両肩が跳ねて、跳ねて、跳ねるのをゆっくり繰り返すのが、次第に速まっていく。と、ついにはえくぼを作るほど笑い出した。
「なるほどぉ。そういう使い方をする奴も……。参考になるねぇ……」
少し幼い口調になっていたが、櫻はゾクリとさせられた。
嫌な予感も芽生えた。――とその時、少年がまた何気なくあさっての方へ顔を上げた。
「最初から殺しとけばよかった」
櫻はハッと目を見開いた。何気なく言われたのがなおさら応えた。身体まで震え出した。
そんな中で少年が気味悪く笑い出す。そして口の一方の角をつり上げて「ヒー」と笑った。
「その前に聞いてけよ。イグズィスティンクスって、増え続けるお金って例える以上に魅力的すぎんだ。なぜなら宇宙や空間を膨張させるエネルギーでもあって、空間創造の時にも必要な増え続けるエネルギーだ。似てたのさ。音とかが一直線じゃなく広がっていくように、生命も広がりたい。それをヒントに発見できた。命令や願いを受け止める特性も分かった」
異様に、そして不気味に半笑いしている少年が、ゆっくりと顔を戻して、向けてきた。
「イグズィスティンクスさえ多く所持できれば永遠に幸せだ。世界さえも手中に収められる。地球が終わろうが生きてられんのさ」
――そんなことを不気味なほど静かな声で言われても、その声のせいで何も考えられない。
「まず袴田のことを話そう。本人とその兄から聞いたことだ」
「え……?」
「確かに袴田がお前の友達をそそのかした。その理由までは聞いたことがないだろ?」
「……何も、話して……くれなかった、から」
「全員同じ理由だぜ? 本心を再現化させられるのは一人だけで十分っていうね」――視界が大きくブレるほどの衝撃を櫻は食らった。頭の内側を鈍器で殴られたかのようだ。
そしてその通りだとすぐに分かった。元々、友達と腕脳の非公式改造を目論んでいた。そのために、勝手に繰り返される更新を止めないと表示されない掲示板や、検索結果の80番目にある個人ブログなど、誰にも気づかれなさそうなサイトから手分けして情報を得て、何週間もかけて必要なものを集めたり、全員で試しにインストールしたりするのを繰り返していた。
しかし成功したのは僕と、友達の内、一人だけだった。シリアルナンバーや世代に機種などが影響していたせいで、ダウングレードなども何もしてやれなかったが、一人いるだけでも十分だった。




