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さらに、長い時間眠るように設定すれば、外側の人生の時と同じ、一秒、一秒を認識できる時間感覚で昔の自分に戻ることができた。
他にも、感情や欲求の本能と、頭脳からの命令を捉えてくれるおかげで、戻りたい昔の自分が無意識的に選ばれて、――悪夢を除けば――要求通りの思い出を再体験できた。
まだ産まれる前の、――母親の内側の羊水の中の、これ以上ない安心感や、独特で不思議な浮遊感、下腹に温かい何かが流れ込んでくる感覚までも、再体験できた。
その時に、説明書通りだと実感できて興奮した。――思い出せない記憶はさっぱり消されたわけではなくて、思い出せないだけだったということ。そして、頭脳と心だけでは、CPUとHDDのように、全てを一度に思い出せないだけで、生命を授かってからの五感で捉えた全ての出来事、思考を一秒も逃さずに保存しておいてくれているということを、実感できた。
が、再現化された思い出でなくても、再現化された本心でも思い出に還ることまでできた。
記憶を操作して思い出以上のことまですることができた。――祐樹たちとしたことのように。
その空間のためにも必要な第三の脳が、極限まで細密な部品で製造された腕時計型の機器で、人の動きをトレースするミニチュア人造人間を使って製造された機器だ。ヒュミニーマノイドの大きさはミニから最小単位まであるが、それぞれの大きさにとっての見え方だから、製造に使用できる全てのヒュミニーマノイドを余すことなく活用して、製造された機器だ。それが内側の人生の腕時計で、それを非公式改造することで、可能なのが本心の再現化だ。
友達に裏切られる半年以上前に、目を黒く塗り潰された猫が、早口で喋り続けているGIF形式の画像を、メモ帳に、ドラッグアンドドロップしたことで現れた文字群、その中間にあるURLのサイトで配布されるファイルを腕脳にインストールして、生命を賭けて間動を試した甲斐があった。友達のみんなに、一斉に裏切られるまでは、その気持ちでいっぱいだった。
――その全てが一気に思い出されたせいで胸くそが悪くなったっ!! 遊んでいたわけではなかったことを確認できたとしてもだっ。思い出さなければよかったっ!!
「本心を再現化させて、思い出に還って、いや、恐らく思い出を歪めて遊んでたんだろ?」
櫻はガッと歯を食いしばった。こんな時に少年が苛立つようなことを言ってきやがった。
「……遊んで、ヘラヘラしてられるわけないだろッ。袴田を忘れられやしなかったんだッ! 再現化された本心で、逆に狂ってくばかりだったんだよ!!」
「あそっか、そっちねー」と少年が、やっぱり、と得意げに、憎たらしくにやけた。
そして、そんな口がまた開かれる。
「まぁどうであっても、俺の目的はそれについてでさ、これから先輩を喜ばせたいんですよ」
――やり切れない。もうやり切れない。
信じられない。本当に年下か、信じられない。こんなに手の平の上で踊らされるなんてっ。
そして、笑顔で上目遣いの少年の眼差しが、期待してきているかのように思えてくる。




