4!
「ただ、櫻が捕まりに行ってくれたおかげでアンチリファードを良い気にさせたんだ。それは逆に余裕を与えたってことなんだよ。ビオナフィラキシーのように、この戦いは楽勝だーとか思えば、その分イグズィスティンクスは守る必要がなくなる。そう思った分、防御力が減るんだ。そこに極大な一撃を与えられたからもっと確実に、大一と玲奈を助けられた」
そこまで聞いた時、櫻はハ、と目を見開いた。力を入れることを忘れていた。
「だからわたしも高菜も、東堂も、百合奈も、みんな櫻に感謝してる。……ありがとうな」
「そ、そんな……ほ、本当にか、感謝されて、――そもそも感謝していいことなのかよっ!」
「いいんだよ。そもそもお前が一番死ぬ思いして頑張ったんだぞ? 感謝くらいされなきゃよ」
『櫻はちゃんと百合姉の力にも、みんなの力にもなってたんだからなっ』
そう言ってくれた高菜の言葉が、また彷彿された。
「……そう、……だったんだ……」
涙が目に熱く滲んでくる。
「無駄、じゃ……なかった……」
――今すぐ藤谷に会いたいっ。そして謝りたいっ!!
その気持ちが急激に込み上がってきた。だから櫻は自然と俯き加減になっていた顔を上げた。
真梨の表情が穏やかそうだったが、なんだか微笑んでいるようにも見えた。
「……でも……藤谷は、……僕が戻ってきた時にはいなかったけど、どこなんだ?」
「……家に帰ってんだろうよ。……昼寝する前くらいにはいたからね」
「なんだと!? じゃあ真梨はっ、藤谷がそこまでだと、分かってる上で眠そうによろよろ歩」
「そっちかい! ……あーあーそうかい。もっぺん食らわないと身にも心にも染みないのねえ」
櫻はガッと目を剥いてガッ、と強烈な生命の危機を感じた。
「ったく、……あまりなことだと一人になりたいもんだろうが」と真梨が不機嫌そうに言った。
「……それでも……昼寝できるって……」
「わたしじゃないっ。百合奈のことだ! まさか、無神経だと誤解してんじゃないだろうね!」
「ご、ごめん! 真梨、自分のこと言ってんのかって……」
「誤解させたのこっちかい……。ただ! あーいう時の百合奈は一人になって泣き尽くしたいのさ。……きっと自分だけなんて嫌なんだよ。……それとも泣き虫なのを見られたくないのか」
櫻は一瞬間、分からなかった。自分だけ、のところが。ただ、今は一つなら分かる気がする。
真梨は藤谷の方が傷ついていることが分かっている。しかし、真梨たちも傷ついている。
……僕も、自分だけが辛いと振る舞うのはしたくない。
もしかして藤谷は、自分の中だけで処理しようとしている?
……いや、そうじゃない。今までだってあまりなことだったんだ。余裕なんてないはずだ。
それなのに一人になるなんて……もしかしたら何か……。事情? 理由?




