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「そんでだよ。……片山のことなんだけれど、」と話し始めた真梨の表情が不機嫌そうだった。
そして片山があんなだだっ広い空間にしただけでなく、アンチリファードの全員を追い討ちのように殺したことを聞かされた。独似三次元空間を空間創造するやり方で、独似三次元空間さえもコピーできることも聞かされた。どんな空間でも、現実の一つだからできるらしい。
だからあの、広大で重厚な扉の向こう側を、コピーした空間――二つ目の独似三次元空間を、特殊なイグズィスティンクスを混ぜた薬液でみっちり満たした。その薬液は予め用意していたものらしい。その二つ目の独似三次元空間を、一つ目の独似三次元空間にとっての現実にすることで溺れ(おぼ)させて、その全員の体を薬液による化学反応で破裂させた。イグズィスティンクスは流動体に浸透しやすい、という特性で薬液も一緒に浸透したことで、破裂させられたそうだ。
ただ、薬液についても片山から話されたが、覚えてられなかった、と真梨は言った。
片山がそこまでしたほどの理由も、真梨から話された。アンチリファードに騙されたために、屈辱と自己嫌悪の生き地獄の中で生きなくてはならなかった、ということが理由だった。
片山がアンチリファードに入るまでの経緯も、理由だった。
片山の父が、酔った勢いで母を殺した後、自殺して、残った片山に博打の借金を押しつけた。
返すしかなくなったから片山は仕事に必死になった。
頑張り過ぎた。ドクターストップもかけられた。それで仕事を辞めることになっても、返済しなければならない。その時片山は頭がおかしくなっていたために確実な一発千金を狙って、イグズィスティンクスとアンチリファードを知った。
だからもう、藁にも縋る思いでアンチリファードに懇願した。するとアンチリファードの方も、イグズィスティンクスの平和的利用に協力して欲しい、と頼んできた。
しかし、頼んできたその大人は受付担当というだけで、いざ中に入れば子どもばかりだった。
その後に片山は思い知った。アンチリファードの腹の底では、イグズィスティンクスにしか興味がなかった。そして人間そのものがカモだった。もう手遅れだった。取り返しもつかない。
屈辱に自己嫌悪。五年の生き地獄。もうずっと、殺したくて殺したくて堪らなかったらしい。
そしてその二つについては、櫻が家に帰っている間にインプリシットの全員が片山本人から聞かされたことだとも、真梨は言った。




