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町の片隅で  作者: 那海晴
11/13

小豆バー

「おう、燕!何処に行くんだ?」

燕は自転車を止める。ききぃっと甲高い音が鳴った。

「おう、魚屋のおっちゃん!今年の打ち上げ花火の準備の手伝いだよ!人手が足りねぇみたいでさっ。」

まぁ毎年毎年人が減っていくしな、と悲しそうな呟き。

「直哉は帰ってくるのかい?」

「あー?辻?帰ってこないんじゃね?」

セリフと共に、また走り出した。



自転車を倒して、燕は走り出す。

「おっまたせーっ!」

「おっせぇぞ、燕!」奏舞だ。「もう準備、始まってんだからなぁ!」

「悪りぃ悪りぃ。」観客席を用意したり、駐車場の案内をだしたり、祭りの旗をあげたりと、この日、町は賑やかになる。

でも、少子化が進んだこの町の祭りは、後少ししか続かない気がするんだ。駄菓子屋みたいになっちゃう気がするんだ。

「てか燕。駄菓子屋の件、どーすんの?もう後一週間だよ?」梨絵の声に、目を逸らす。

「この間話してたのでさぁ……本当、上手くいくわけ?」

「だぁいじょうぶだって!」燕は旗を担ぎ上げながらにかっと笑った。「俺等の高校でも駄菓子屋通ってた奴は多いし、それに現役小学生の彩がいる!」

「まぁそうだけど……。」

兄貴がぽん、と梨絵の肩を叩いた。

「ま、やれるだけやってみよーぜ。な?」

頷いた。



***



青年は、そっと息を吐いた。カルメ焼きの入ったタッパーをあんこ玉の墓の前に供える。

後、一週間。

祭りが近づいて、町は珍しく騒がしい。楽しい雰囲気で溢れかえっている。

あーあ。

何してんだろ、俺。

エプロンを着る。

店の前に水をまく。

菓子を綺麗に並べる。

窓を開ける。

ドアの札をopenにする。

レジの所に座ってお釣りがあるかを確かめる。

何時もの毎日。

後一週間しかない毎日。

あ、これからどうしようかな、と青年は考える。就職口を探さないと。

あ、あんこ玉の墓、どうしよう。

あ、荷物、片付けていかないと。

あ、

あ、

あ、……。

「ごめんな。」何度目だろう。「守れなくて。」呟くのは。壁を、そっと撫でる。夏の空気を吸ったのか、どことなく温かい。

この店が好きだった。

守りたかった。

何時も一緒にいてくれた、恩返しをしたかった。

「……ごめんな。」

からん。

音が鳴った。燕だ。

「あっちー。兄ちゃん、スイカない?スイカ。」

「……此処は駄菓子屋だ。」

「ちぇー」

どっか、とレジ台の目の前に座る。

「……アイスならあるぞ。」

「おおおっ!神ってる!」

「駄菓子屋だからな。」

代金を払ってすぐに、小豆バーをかじった。

「小豆バーか。美味いよな、それ。」

「なーっ!」

不思議な味。大好きな味。

「……なぁ、兄ちゃん。」

ん?、と青年は燕に目を向ける。

「もうすぐ、花火だな。」

町の名物、打ち上げ花火。

「……あぁ。」

「……辻、帰って来ないのかな……。」

有名人になってしまった友。

遠くなってしまった、友。

そりゃ、寂しいよな。

「……帰ってくるさ。」

「え?」

俺がお前等に出来る、最後の事。

「辻君は帰ってくる。絶対に。」

「あー……お、おうっ!」

そう言ってもらえるだけ、嬉しかった。



燕の背中を見送りながら、ふと思う。後何回、この背中を見送れるだろう。

ゼロ?

これで、おわり?

それも、ありえる。悲しいけど、ありえるのだ。

「有難うな。」

その背中に、小さく呟いてみた。

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