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ep7.勇者召喚の犠牲が目の前に現れた時に俺は

 何事にも、何をするにも少なからず犠牲を伴う。

 例えば勉強はどうだろうか?言わずもがな時間を犠牲にしている。友人と遊べるはずだった時間。だが、結果もちゃんと着いてくる。それが成功であれ、失敗であれ。

 失敗の場合は次に進むための大事なヒントを手に入れることが出来る。成功の場合は次に進む権利を得ることが出来る。

 勉強だってそうだ。時間を犠牲にしているが、知識として身についてくる。高校生までの勉強に無駄な物は無いのだから、絶対に無駄なんかじゃあない。

 例えば友人と遊ぶことだってそうだ。さっきと同じく時間を犠牲にしている。だが、それによって得られる経験は大人になったときに生きるだろう。ガヤガヤ馬鹿やること然り、喧嘩すること然り、そして仲直りすることも然り、だ。

 ならば勇者召喚はどうだろう?魔力は当たり前だ。魔力という基が無ければ元も子もない。書物を調べたところ、二度と召喚魔法は使えなくなるようだ。だが、その二つの犠牲に対して同等の価値を必ずしも得ることは出来ない。その犠牲に対応するように強制的に等価交換が発生する。

 これは元居た世界と今の世界の二つの間の等価交換だ。まあ、簡単に言えば関係の全くない人間が巻き込まれると言うことだ。

 その結果が、コレだ。


 「ゆ、幽霊だああああ!?」


 「あ、あはは。レ、レイナちゃんでも苦手なことが……ひうっ!?」


 「お前等怖がりすぎだろう……。この可愛いのの何処が怖いんだ?」


 「だ、だって、そ、そのお腹から出てる臓器とか、頭が半分腐ってるって所とか……」


 「リア、ちょっと待て。俺が見ている光景は全然そんなんじゃあ無いよ。物凄く可愛い幽霊が見えて居るんだが」


 リアやレイナールにはそういう風に見えていると言うことは、もしかして俺達異世界人がみる幽霊とこの世界の人間が見た幽霊は違って見えていたりするんじゃあないだろうか?

 と、言うことは、だ。リア達のSAN値がガリガリ減ってってんじゃあないだろうか。……早急にどうにかせねば。


 「で、幽霊ちゃん。どうして君は此処にいるんだ?」


 「……解ラナイ。気ガツイタライツノ間ニカ此処ニ居タンダ。何デ皆私ヲ見テ怖ガルノ?私、何カ悪イ事シタ?謝ルカラ……」


 「あー、君は今物凄い事になってるんだよ。俺を除いてまるでゾンビの様に見えているらしいからね。えと、だ。自己紹介をしよう俺の名前は白鷺葵。魔王だ」


 「……魔王?厨二病?」


 「グフッ……。いや、は、ははは。そ、そうだよな。今時勇者やら魔王って痛いよな……」


 こ、この幽霊物凄く精神にダメージを与えに来るな……。まあ、現代人からすれば当然か。

 それはそれとして、同郷の者として同情してしまうな。まさか、巻き込まれてこんな状況になるだなんて思いもしなかっただろうし。



 この魔王様(仮)が言うにはあたしは異世界に来てしまったらしい。そして、あたしの容姿はとても醜くなってしまったらしい。

 どうして異世界に来てしまったんだろう……。どうしてあたしはこんなことになってしまったのだろう……。

 何で、あたしなんだろう。何で、どうして……。


 「あー。何だ。魔王としては君を追い出すが正解なんだろうが、俺は元勇者でな。そんな事は出来ないんだよ。ついでに、君を助けようとしてしまっているんだ」


 「……全然魔王ラシク無イネ」


 「良く言われる」


 ……片言にしか喋れない自分がウザイ。どうしてこうなったんだろ?何が悪かったんだろ……。

 出来るのならば人間に戻りたい。出来るのならば普通に話したい。出来るのならばこの優しい魔王と話したい。


 「まあ、何だ。俺が君を助けるから、勝手に助かってくれや」


 「エ?」


 助かるのかな……?元の姿に戻れるのかな……?右も左も解らないし、無理なら無理でしょうがないよ。この優しい魔王に出会えなかったらこういう機会は無かったんだし、信じてみよう……。


 「……オ願イ」


 「何言ってんだ?君は勝手に助かれば良いんだよ」



 さて、助けるためには多分許容量以上の魔力を使わなければいけないと思うが、そこはなんとかなるだろう。俺の能力的に考えて。

 そして、問題はあの魔法をキッチリ使う事が出来るのかが問題だ。詠唱は解っているんだが。


 「んじゃ、リアとレイナールはスマンがこの部屋から出てくれ。何が起きるか解らないからな」


 「うん、何をするかは解らないけど、気をつけて」


 取り敢えず、魔方陣を書いてその上に幽霊ちゃんを乗っける。


 「それじゃあ、行くぜ?……此処に集う全属性の全精霊よ。かの者の時を戻せ。【リ・テンプラル】」


 俺の中の魔力と思われるものが急激に吸われていくのが解る。凄い吸われている。

 思ったんだが、魔法ってのは精霊に魔力を食べさせて従って貰っているんじゃあないだろうか。

 と、いうことは、だ。もしかして魔力の消費を減らす方法があるんじゃあないだろうか。例えば、質を上げるとか。

 ……っと、大幅に吸われる量が少なくなったな。思っただけで出来るとかこの能力チート過ぎんだろ。


 「……それでもふらつくな」


 「大丈夫?」


 「ああ、気にすんな。自分の身体の心配してろ」


 この感覚はどう表したら良いのだろう。吸血鬼に血を吸われている感じ……でもないし。

 そうだな、大怪我をしてドッバドバ血が出て行っている感じが一番今の俺の感覚に合って居るんじゃあないだろうか。

 と、言うことはだ、早く止血せねば今度は俺が幽霊になってしまうということか。……っと、魔力の流出が止まったな。


 「……あれ?あたし、足がある。手もあるし、胸もある。……え?」


 「勝手に一人でパニクってんじゃあねえよ。魔王様が直々に勝手に偽善でやったんだ。成功しないはずがないだろうが」


 実は心の中は魔力切れの心配で一杯だった。魔力が切れて死ぬ……と、いうことは無いだろうが、色々と魔力がない事によるデメリットが大きすぎるからな。

 うん、軽く辞世の句も考えてたし。走馬燈も軽く流れていたしな。


 「あ、あたし戻ってる!!!」


 そんな叫び声を聞いて、リアとレイナールが部屋に入ってくる。心配してくれて有り難いんだが、自分の心配もして欲しいもんだな。主に気絶的な心配を。

 それにしても、高校生だったのか。つか、青いリボンしてるってことは、俺より年上じゃねえか。

 まさか、高校の先輩と後輩がこの世界に来るなんて、なんつー偶然だろうか。そもそもコレは偶然ではなく、必然だった可能性も捨てきれないんだが。


 「んじゃ、レイナール。すまんが、風呂を……」


 「既に沸かしてあるよっ!葵が言うんじゃあないだろうか、と予想して先回りして沸かしておいたよ!!」


 「……お前は万能か、コノヤロー。いや、万能か」


 「残念っ!恋愛に関しては全然万能じゃあないよ!その証拠に葵も落とせていないしねっ!」


 その発言は一体どうなんだろうか。俺が婚約者なら殴りかかってると思うが。

 と、ふと、レイナールの横を見ると物凄い『イイ』笑顔のリアが居た。『良い』じゃあなく『イイ』笑顔だ。物凄い暗いオーラを背中に纏っている。


 「ふふふふ……。レイナちゃん?今の発言は流石に見逃せないなあ♪」


 ……アレが厨二女子がよく使うと評判の『(黒笑)』なのだろうか。あれほどにどす黒い笑みをこれまでに見たことは……二回ほどあるな、うん。

 一回目はレイナールと一緒に駄弁って、見つかった時。二回目は俺が部屋を抜け出して屋根の上でボーッとしてた時。あの状態のリアはガチで触れてはいけない。正直怖い。

 まあ、それで嫌いになるとかは無いんだが、軽い恐怖を覚える。まあ、自分で悪いコトしていた自覚があるから反論の余地すらないがな。


 「……で、先輩の名前は?」

 

 「え、先輩って……。どうしてあたしが先輩になるの?」


 「制服のリボンだよ。因みに俺は二年だった。名前はさっき言った通り白鷺葵だ」


 「……ウチの高校で白鷺君って言えば、優等生の様な評価を受けていた気がするんだけど」


 「まあ、受けるようには動いていたよ。で、先輩の名前は?」


 「あ、あたしは飛鳥紅梨。助けてくれて有り難う。本当に、有り難う。感謝してもしきれないよ」


 「いや、何回も言っているが……」


 「『俺が勝手に助けただけだから君はお礼を言う必要はない』でしょ?だったら、あたしが勝手に感謝してお礼してもいいんじゃあないの?」


 ……こういう場合はどう反応すればいいんだろうか。どう反応するのが正解なんだろうか。


 「ま、まあ、取り敢えず風呂に入れば良いんじゃあないだろうかね?」


 「変な口調になってるよ?葵ってば。私がお風呂に連れて行くからレイナちゃんの後処理をお願いね♪じゃあ、行こう……っと、君のことをなんて呼べば良いのかな?」


 「え、えと。あたしの事は紅梨で良いです。白鷺くんもそちらの方もそれでお願いします」


 「んじゃ、俺のことも葵で良いよ。んじゃあ、ゆっくりじっくりつかって来いよ」


 まあ、勇者召喚の犠牲やら、なにやらの説明はリアがしてくれる……かな?まあ、後でリアに聞いて俺がするかしないかを決めれば良いことだしな。

 取り敢えずは紅梨とリアの二人が出てくるまで待つか。……レイナールはどうしたものかな。

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