ep6.勇者パーティ誕生を傍観した俺は
リアとレイナールと駄弁っているという楽しい状態で過ごす時間はあっという間に過ぎていく。
幼稚園児の時は友達と公園を駆け回るのが大好きであっという間に時間が過ぎた覚えがある。
小学生の時は皆でサッカーしたり、バスケしたり、時にはゲームをしたり。それはそれで楽しくてあっという間に時間が過ぎた。
中学生の時は手の甲に紋章を書いたり、変なポエムを書いたり、色んなことに手を出して失敗したりして。それもまた楽しくて時間はあっという間に過ぎていった。
昔皆一度は言われたことがある『あの頃に戻りたいって大人になったら皆言うんだ』というセリフ。
アレはきっとそう言う意味なんだろう。
かく言う俺も高校生であるに関わらず『昔は良かった』なんてセリフを吐いたことがある。親父に『未だそのセリフを言うには早い』と言われ殴られたがな。
別々の高校に進んだ中学生の時の友人と久しぶりに遊んだときに感じたことを話していたらつい口から出てしまったんだよ。しょうがないね。
「……で、なんでレイナールの俺に対する初見の印象が『ヒーロー』なんだ?俺がレイナールに初対面でしたことなんて引きこもっている状態から、今の状態にしたこと位だぜ?」
「……う~ん。葵覚えてないのかなっ?まあ、思い出して欲しいし、少し話そうかなっ。僕って自分で言うのも何だけど天才でしょ?過ぎた才能の持ち主は必ず一人ぼっちになっちゃうよね。僕は唯一信じてた親友に裏切られて、落ち込んで、引きこもった訳だよ」
「え、えと、レイナちゃん。そ、そんな重い状況だったの?」
「うん。あの時の僕は髪の毛も伸ばしっぱなしで、手入れもせずに放置して、声の出し方も忘れかけてた状態だったね。そんな中に急に葵が入ってきてね。僕のことを最初は司書か何かだと思ってたみたいで」
「あぁ、俺がこの国の歴史書を探して欲しいって言ったんだよな。んで、出して貰ったは良いけど何処か辛そうなレイナールの顔を見て外に連れ出したんだっけか」
……でも、俺そんな辛い状態にいるとは知らなかったんだよな。なのに力尽くで連れ出した俺って最低なんじゃあないだろうか?今になって自己嫌悪してしまう。
俺としては出来れば笑っていて欲しいと思ったし、こんな美少女なのに勿体ないとも思ったわけで。
……結局は良かったんだから俺の行動は良かったんだよな?
「そそっ!その時の葵がヒーローに見えてさっ!葵は先ず僕を散髪に連れて行ってセミロングにしたんだよねっ!その後に服屋に連れて行って貰って、楽しかったなあ……」
「ねえ、葵。葵ってさ、いつレイナちゃんの所に行ってたの?」
「さっき言った歴史書を調べるって言ってた時だな。あの時に始めて会って、気が合って、仲良くなって、こうなったんだよ」
「その後に僕が『もう、期待させないで。僕は人と一緒に居られないんだよ!一人で居なきゃ駄目なんだよ!』って言ったら葵ったらなんて言ったと思う?。『誰が決めた?お前が一人で居なきゃならないなんて。さあ、手助けはしてやる。側にいて一緒に眺めてやる。だから一緒に外へ歩き出そうや』ってさ。凄いよね。こんなこと言われちゃ惚れちゃってもしょうがないよね!」
「葵って私に告白した後にこういう事言ったんだよね?……ふふふふふふふふふ」
「……あ~、なんて言ったら言い訳にならないか解らないんだが。まあ、その、なんだ。俺って落ち込んでいる人見たら、引き上げたくなるんだよ。んで、笑顔が見たくなる訳だ。これは俺の癖?だからしょうがない」
「……ま、其処が良いところでもあるから何とも言えないんだけどさ。やっぱり、私だけじゃあ駄目だったのかな?なんて考えちゃってさ」
「ンな事はない。言っておくが俺はリアに告白したのはノリでも何でもなく、本気だ。それに俺みたいなのがリアだけじゃ駄目なんて言えるはずも無いしな」
本当に真剣でリアに一目惚れしたし、リアが居れば何も要らないというレベルで物事を考えている時期もあった。
まあ、ほんのちょっとの時間だけだったんだが。俺の考え方は危ないなんてお義父さんに言われたり、殴られたり、喧嘩ふっかけられたりもしたしな。実際思考が危なかった訳だし。
……あの時の俺は一体どういう思考回路をしていたんだろうか?アレがヤンデレかけてたという事なのだろうか。まあ、この世界に来ての始めての拠り所に依存しかけていたってところだろうが。
「葵って結構自分を過小評価してるよねっ」
「うん、確かに。葵が好きな私たちもその程度ってことになっちゃうんだよ?」
「……あー、うん。まあ、それを言われたら終わりなんだがな。コレも俺の癖でな。元の世界でもコレが当たり前だったんだよな」
……コレを止めろと言われて止められるのか解らない程度には癖になっている。
「と、取り敢えず傍観鏡でも使ってみるとしよう」
「話しを完全にすり替えようとしたね」
「それなのに失敗したねっ!」
「五月蠅いやいっ!」
完全に今俺のキャラがぶっ壊れたが関係ないね。俺はこの変な空気から脱出したかったんだしな。
……それにしても魔力が減ってる気がしないんだが、やはり吸収の所為なのかね。収束砲の才能でもあるんじゃあ無かろうか。
……いや、普通に出来るかも知れない。努力したらどこぞの魔砲少女魔王様の収束砲とまでは行かないだろうけど、露出狂金髪執務官くらいの砲撃にはなるんじゃあないだろうか。
「……お、見えてきた。……ってもう勇者が召喚されているという」
「早いねっ。そして懲りずに超偉そうだねっ」
「葵の気持ちが分かるような気がする。物凄く嫌な感じだね。何というか、奴隷を見ているような、そんな感じの視線だね」
○
昔はいつだってそうだった。色んな夢を見て、色んな事を想像して。
俺は正義の味方になって世界を救うなんて大それた事を夢に見ていた。
俺はまるで世界征服をする様々な発明をする悪の科学者になりたかった。
俺は全ての民のために努力する、そんな理想の王様になってみたかった。
俺は昔も、今でも、そしてこれからも、誰かにとっての特別な存在になりたい。誰だってそうだろう?
俺の名前は織田勇助。しがない普通の高校生だ。つい最近尊敬する先輩が居なくなった普通の高校生だ。
何処に行ったんだろうか。なんて考えつつコンビニを出たら何故か城の中にいた。
「……え、えと。一体コレはどういう事なんでせうか?」
「我々の呼びかけに応じていただき有り難うございます」
「……は?あの、此処は一体何処何で?」
「此処は『アヴァロン』という国でございます。……」
その後のこのお姫様らしき何かの話を要約すると、俺はなにかしらの異能を持っているらしい。この国から去ったはぐれ勇者は異常なほどの異能を持っていたらしい。なにそれ羨ましい。
んで、俺はその異能を使い、魔王を倒し、真の英雄となり、世界に恒久の平和を……。が仕事らしい。なにそれ格好いい。
それにしても、最初に聞こえた【ワルター】って単語は何だったんだろうか?
「相手に動きをばれないためにも少数精鋭で旅路につきます。私、『アヴァロン』の第一位王位継承者のレイン・W・カワイア。『アヴァロン』の最上位巫女のアリア・C・クウェイサー。『アヴァロン』の地上最強の騎士のエンヴィー・S・グラトニー。そして貴方の四人で魔王に戦いを挑むことになります」
……少なくね?いや、少数精鋭っつっても限度があるんじゃあないだろうか。これは行きすぎだろ。
絶対に生け贄なんじゃあないだろうか。そうは思っても口に出さない俺偉い。
「初めまして、勇者様。私がアリア・C・クウェイサーです。宜しくお願いしますね」
!?こ、コレが一目惚れか……!?
白鷺先輩が言うには、ビビッと居たら直ぐ告白……だったよな。……いや、空気を読むか。
「初めまして。あたしがエンヴィー・S・グラトニーさ。精々足を引っ張らないでおくれよ」
……なんかコイツとは気が合わない気がする。
物凄く苛つくしな。なんというか、コイツと一緒にいると物凄くイライラする。
「それでは……」
○
……え~。完全に後輩君じゃないですか、ヤダー。いや、叩きつぶそうと思えば一瞬で叩きつぶせるがな。
それにしても元の世界の後輩君が敵か。うん、一切の手加減も要らないな。
「……え、えと葵ってば何でそんなにあくどい顔してるのっ?」
「いやあ、元の世界で俺の背後をウロチョロしてやがったクソ後輩君が勇者みたいだから合法的に潰せてラッキーだなあ。とかは思ってないぜ?決して微塵も思ってないぜ?」
「あ、あはは。葵も何か解らないけど苦労してたんだね」
「よし、前言ってた幹部全員で叩きのめす構図で行くとしようか!」
さあ、俺が魔王だったことを後悔して、後悔しきれずに涙腺ダムが崩壊してる所を見せて貰おうか。
お前をぶっ潰すのに一切の妥協は存在しない。心がミンチになるまでグニッグニに潰してやんよ。




