ep4.不本意ながら魔王になった俺は
お義父さんの不意打ち的な決定によって魔王になってしまった俺は政務をどうやったら楽しく出来るかを模索中である。
しっかし、親父達はこんな静かで何の音も聞こえない中仕事をしていたのかと思うと、本当に尊敬するぜ。
俺は自習するときでも何でも静かな環境では出来なかった。暴れたりはしないが、シャーペンを机に『カッカッカ……』と打ち付け続けた覚えがある。
モチロン監督の先生に怒られたんだが。本当に静かな環境で集中出来ない体質ってのは厄介だ。
この世界に来てからは常に話し相手がいてくれたから良かったんだが。
「葵っ!葵ぃっ!!」
「ん?急にどうした?」
「よ、漸く出来たんだよ!!結構辛かったけどねっ!」
「……あぁ、あの観察するための魔導具か。ほうほう、出来たのか」
「うんっ!!」
そう言って手渡されたものはまるで鏡の様で、色は紅。大きさも手に馴染んで良い感じだ。
色は魔王っぽくて、ワインレッドだった。この世界でワインレッドで通用すると言うことに吃驚したけどな。
それにしても、だ。なんというフィット感だろうか。まるで身体の一部かのように感じる。
「葵の言ってた魔力消費量を5割カット出来たよ!」
「……は?いや、ちょっと待て。アレでも結構少なめに言ってた筈なんだが」
「えへへっ。葵の為にちょっと頑張り過ぎちゃった!」
いやあ、レイナールは可愛いなあ……。じゃなくて、だ。こ、こいつ其処までのレベルだったか。
甘く見過ぎていたようだ。正直アレでも少なめだった筈なんだが、まさかの5割カットと言う低燃費。
DAI○AT○Uも吃驚のTNPなコトで。つか、レイナールが本気出したらどんだけカットできるんだろうか?
「良くやった。今度何か一つ言うことを聞いてやるよ」
「じゃ、じゃあ!処女を貰って!!」
「……あ~、あ~。俺には何もキコエナイ!」
それだけは駄目だ。絶対に駄目だ。先ず未だ俺自身の職が安定……はしてるが、子供が出来たとしてキッチリ面倒を見る覚悟は未だ無い。
それに養うための金はあるが、未だ魔王として何一つなしていないからな。
ああ、そうだ。最近勇者召喚について調べたんだが、驚きの事実が明らかになった。
1.勇者を召喚する際にかかる加護は自分の好き勝手に弄ることが出来る。
2.召喚する際には召喚した者の力に合う程度の勇者が召喚される。
3.一生の内に召喚できる勇者は一人である。
4.召喚できる者は王族のみである。
まさかこんな風になっていたとは。俺の身体能力が高かったのもコレで納得することが出来た。
だが、調べている資料には魔力についての件は一切書いてなかった。と、言うことはだ。もしかして魔法については此処に来るまで一切努力していなかったのに、最初から使えたということは元の世界に居たときから魔法使いの資質を持っていたんだろうか?
だとしたら俺は平凡では無かったと言うことになるな。呪文を唱えて魔法を使える男子高校生……どんなラノベだよ。
「あ、レイナちゃんってば抜け駆けは良くないよ」
「お、リアか」
「うん、私の泥棒猫レーダーに引っかかった奴が居たから消滅させてやろうかと思ってさ。まあ、レイナちゃんだったんだけどさ」
「……いや、まあ、何だ?レイナールはコレを作ってくれてそのお礼をしようと思ってただけだからな」
……リアがガチで怖いオーラを放って居るんだが。なんというか、親友だろうと関係ない。みたいな、そんな雰囲気の暗いオーラを。
「は、はう?!リ、リアに悪いからこの場で撤退をっ!!」
「残念、魔王命令だッ」
「卑怯だっ!?」
こんなところで【職業:魔王】が役に立つなんて俺もお義父さんも思っていなかっただろうな。
いや、あのお義父さんなら自分の女を落とすのにもしかしたら職権乱用を……。
……いや、無いか。流石に、それは。
「ま、取り敢えず居ろや、レイナール」
「嫌だよぅ……。怖いんだよぅ……」
「フフフフフフフフフフ……」
それについては激しく同意する。口には出さないがな。絶ッ対に口には出さないがな……。
昔、俺の先輩が彼氏寝取られたときに笑っていたその先輩を見て俺が「こ、怖い」って言ったら、気付いたらボコボコになっていた、というトラウマ的今になっても笑えない思い出があるからな。しかも寝取ったのが自分の友人だから本当に笑えない。
い、今背筋にツーと汗がたれた気がした。多分今の俺は冷や汗がダラダラ出ているような気がする……。今のリアからはどこぞの魔王の様な覇気を感じた気がした。
いや、魔王の娘だから魔王の様な覇気を出せても不思議では無いんだが。
「最初は私が予約してるんだから♪」
「……それを聞いてしまった俺は一体どんな反応をすれば良いのか教えて欲しい」
「喜べば良いんじゃあないかな?」
「と、取り敢えずあの魔導具の使用方法とかを教えてくれ!」
「葵、完全に話題転換したねっ!」
「う、五月蠅い」
畜生め。俺魔王になったってのに振り回されっぱなしじゃないか。爺さんも親父も言ってたな。
『俺達男はな、どれだけ戦いで勝ててもどれだけ力が強くってもな?女の涙にゃあ勝つこともできねぇし、女の嬉しいときの笑顔にゃ弱いんだよ』
その通りだぜ、二人とも……。
「……なんで葵は遠い目をしてるんだろうねっ?」
「きっと、世の中の女性という理不尽に参ってしまったんじゃあないかな?」
「え、と。取り敢えず説明するよ、葵。葵がその鏡を持って魔力を込めたら終了。込められた魔力が無くなるまで使えるし、其処に入ってる魔力はそのメーターで解るようになってるから」
「……お前本気で凄いなあ」
「ドヤァ?」
うん、本気でドヤ顔して良いレベルだわ。コレに関しては絶対誰も文句は言わないだろうし。
俺だったらドヤ顔じゃあ済まないかもしれないしな。うん、自慢しまくってると思う。『コレが我が最高傑作!!』って悪役みたいなセリフを吐きつつな。
「と、言うわけで私たち三人でイチャイチャしようか!」
「どういう訳ですか、リアさん!?」
「じゃ、僕も混ぜて貰って良いかなっ?」
「混ざるなッ!」
お前等にもみくちゃにされて俺が理性保っている可能性なんぞ公園の砂場にある砂の中から宝石の欠片を見つけ出す程度も無いかも知れないのに。
本当にやんなっちゃうな。普通、女の子ってもう少し自制が効くんじゃあなかろうか。
いや、まあ、そう言う積極的なところに惹かれてしまうというなんというか男として情けない部分があるんだけれども。
「急に黙っちゃって。……葵、大丈夫?」
そう上目遣いでいうリアにものっそい鼻血が出そうになった。
まるで一つの芸術品だなっ!だが、俺の忍耐力は防弾硝子より堅いからな!
大丈夫、大丈夫。未だそれほど焦る状況には陥っていない。俺は未だ大丈夫。
「大丈夫だ、問題ない」
「……鼻血出てるよ」
「……大丈夫だ、問題ない」
無理でした。つか、リアの上目遣いを平常心で見ていられる奴は男じゃねェだろ……。
オカマでさえ反応するんじゃないだろうか?いや、オカマでも反応するな。断定ッ!!
「リア、葵はリアの上目遣いに悶えているだけだから気にしなくて良いと思うよっ」
「あ、そうなの?」
「……」
此処で『はい』とか肯定出来るヤツを俺は尊敬するな。俺には無理だ。
例えそれが真実だとしても、例えこの状況を見て皆に『ムッ○リーニ』と呼ばれたとしても……ッ!!
絶対に嫌だがな!
「あ、葵。何時勇者召喚が行われるか解ってるの?」
「ん?『アヴァロン』の情報を集める為に今間諜を送っているから大丈夫だぞ。……多分」
「一応、僕の方でも調べておくよっ!」
「応、宜しく頼むわ」
どうか嘆かないで。仕事があなたを許さなくても、私はあなたを許します。
どうか嘆かないで。あなたが仕事を許さなくても、私はあなたを許します。
だから教えてください。仕事の量はどうしたら、減ってくれますか?
……仕事に戻るか。




