ep2.自分の家で二人と駄弁っていた俺は
魔王城に帰って、レイナールに頼んだ俺は次の日自室でダラダラしていた。
特に何もすることもないので、本を読もうと思ったのだが俺が字を読めないというでっかい壁にぶつかった。
まったくどうしたものか。
リアとレイナールは買い物に行っている。俺も荷物持ちとして着いていくって言ったんだが、リアが『次のデートで着る服を買いに行くから、ね♪』なんて言われてしまったので俺にはどうにもすることは出来なかった。
リアにそんなコトを言われてしまえば俺は手も足も出ない。全く、困ったものだなあ。
そんな魅力的な笑顔で言った魅力的なセリフに見惚れてしまいどうにもこうにも何にも出来なかった俺は今こうやって暇な時間を過ごしている。
やることも無いから鞄を漁ることにした。ついさっき気づいたのだが、俺は此処に来てから自分の鞄を開いていなかった。
もしかしたら鞄の中にラノベが入っているかも知れないし。
……あ、朝に見た夢が微妙にむかつくものだったので、スライムを『アヴァロン』からここに来る最短の道に召喚しておいた。
スライムについてだが、単体だとFクラスの魔獣で、十匹以上の群れになるとCランクに跳ね上がる。
その情報を得ていた俺は、十匹を召喚した。モチロンお義父さんの許可を貰ってだ。
お義父さんに話してみると『面白そうだからOK』と言って貰うコトが出来た。まあその隣でリアは呆れて苦笑していたが。
「暇だなあ。暇だねえ。暇ですねえ。の三段活用を活用してしまうくらい暇だな」
そんな馬鹿なことを言っていると鞄の中からトランプが出てきた。うん、どうして入っていたんだろうか?
まあ、あって良かったし何も言わないが。
因みにトランプはこの世界には無い。ギャンブルなどは基本的に競馬を中心としている。まあ、競馬とは言っても馬ではなくUMAだが。
別に上手いこと言ったなんて思ってなんかいない。正直誰もいないのに赤面しそうだ。
トランプで独りで出来るものと言えば、ブラックジャックや神経衰弱、ソリティアくらいだろうか。
正直寂しい気持ちで一杯になるが、無いよりかはマシだ。
「たっだいまーっ!!」
「応、おかえり」
「うん、ただいま。葵寂しくなかった?」
「んにゃ、別に。暇を持て余してただけだしな」
トランプ独り遊びを実行する前に帰ってきてくれて良かった。と心の中では思っている。
正直に言わないのはちょっとした意地だ。何故か?って聞かれたとしたら男は馬鹿だからと答えるだろう。
リアもレイナールも結構大きめの荷物を持っている。どれほど買ってきたんだろうか?
「ねえ、葵っ。それなぁに?」
「ん?コレか?コレはトランプと言ってだな。一人から四人まで遊べる便利な暇つぶしツールだ」
「へえー。楽しいの?」
「それに関しては人によるってことしか言えないなあ。俺は結構好きだぞ」
トランプを出してみると、はらりと足下に何かが落ちた。
何かと思い、拾い上げてよく見ると結構最近に書かれた手紙の様だ。
どんなことが書かれているのだろうかと開いて読んでみると、『私は三年二組の相良美春という者です。以前ナンパから助けて下さったときに一目惚れをしてしまいました』みたいなコトがつらつらと書いてあった。
「……うえい?」
「どうしたの?まるで元居た世界の元居た学園の先輩から貰ったラブレターを見てしまったかのような顔をしちゃって」
て、的確過ぎて怖いんだが。まあ、浮気をしていたとかそんなことじゃあ無いし、別に平気だけど。
それにしても女性の第六感ってエグイほどに当たるよなあ。婆ちゃんの第六感は本当にエグかった。
他に比べる者がないほどにエグかった。
「リアって直感スキルAだったりするのか?」
「あ、当たってたんだ。ふ~ん……」
「リアって俺の世界の文字読めない、よな?」
「読めないよ。もしかして私に見られたら不味いコトでも書いてあった?」
「んにゃ。トランプのルールブックが入ってたから」
そう言いつつ俺は鞄の中からルールブックを取り出す。タイトルは『合コンでも盛り上がれるトランプゲーム!?』だ。
なんと巫山戯たタイトルだろうか。だが、書いてあるとおり本当に盛り上がれるのだからツッコミきれなくて微妙な気分になる。
何というか切ない気分だな。……ああそうか。失恋に似ているんだ!
因みに俺は姉貴分に告白してしまったことがあるが、それも黒歴史の一つだ。どうしてあんなコトをしたのか今の俺には解らない。
でもきっと年上好きのきっかけはそれなんだろう。
「じゃ、俺が読むから一緒にやるとしよう。うーん。オーソドックスな大富豪で良いかな」
「解らないからそれで良いよ~」
「僕もそれで良いよっ!」
●
……気がつけばもう夜だったとかいう事実。
久々にやったトランプは意外に面白くドンドンのめり込んでいっていつの間にかこんな時間に。
「リアってお義父さんトコ行かなくて良いのか?」
「ああ、今日は泊まってこいって言われたんだよ。ついでに完全に心を手に入れて来いだってさ」
「お義父さんェ……。で、レイナールは帰らなくて良いのか?」
「うん!僕は僕で葵の心を盗んでいくつもりだからねっ!」
それを人は寝取りと言う。なんて言うのはKYなのだろうか。
貴方は大切なものを盗られました。……それは貴方の心です。ってか?どこのカリ○ストロだよ。
それにしても女の子と泊まるなんて何時以来だろう?幼稚園の時くらいだろうか。
いや、そんなことはなかった。高校入ったときも普通にアイツは泊まってやがったしな。
アイツとは、俺の姉貴分であり、生きる黒歴史書だ。俺の今までしたこと全て知ってるからな。
腕にシルバー巻いて登校するとか、眼帯付けてカラコンつけて登校するとか。
……やべぇ、恥ずかしくて悶え死にそうだ。なんつう黒歴史を綴ってきたんだ俺は。
「大丈夫だよっ!葵の黒歴史なら全部知ってるから!……信じられないみたいだね。じゃ、今から言っていこうかっ?例えば葵が葵の姉的なポジションに告白したこととか……」
「やめいっ!何で知ってんだよ!?お前はアレか?何でも知っている素敵愉快な大天災なのか!?」
「いやいや、何でもは知らないよ?所詮は知ってることだけしか知らないんだよ。え~と、確か無知の知だっけ」
……うん、正直レイナールを侮っていた。まさか黒歴史まで知っているとか。
知ってることしか知らないのは当たり前だけど割と解らないことだと思う。誰しも知ったかぶりをして知っている風に見せかける。そして知らないことを無かったことにする。
俺は知らないことがあると解っても知らないとは言えない側の人間だ。誰でも見栄を張りたいものだしな。
「それが解ってる時点で結構こちら側だけどねっ」
「一つ言わせて貰えるとしたら、テメェは何で俺の心をさっきから読んでるんだよ」
「愛だね」
「……なら私も読めたりするかな?」
「多分、リアなら直ぐに読めるようになるよっ!」
「「愛故に」」
「重ねてんじゃねぇよ。恥ずかしいだろ、バカヤロー」
絶対に顔赤いぜ?俺。情けないことにこんなことを直接言われるだけで血流が顔に集中しちまうんだよ。
どうにもならないからなあ。この習性は終生修正されることはないだろうね。
それにしてもずっと喋ってるけど飯食ってないコトに気づいた俺はどうすれば良いんだろうか。
「あ、葵もお腹空いてるみたいだし、僕が晩ご飯作ってくるねっ!!」
「……失礼なことは重々承知で言うが、レイナールって飯作れんのか?」
「本っ当に失礼だねっ!葵だから許すけどねっ!僕はこう見えて、この世界で三本の指に入る程度には料理が上手いコトを自負しているんだよっ」
「リア、本当なのか?」
「何でリアに聞くのっ?酷くないかなっ!」
「大丈夫、レイナちゃんは私と同じくらいには上手いよ」
……今のは自分もこの世界の中で三本の指に入る程度には料理が上手いと言うことを暗に言っているのだろうな。
ま、実際リアの飯は物凄く美味しい。兎に角食べるコトに集中するほどに美味しい。
うん、リアに胃袋を掴まれているような気がする。いや、掴まれて居るんだろうなあ。
俺、もう、リアの飯が無ければ生きていけないほどには駄目になっているからな。
……もう、どんだけ嫌なコトがあっても元の世界に帰るなんてコトは言えなくなるんだろうなあ。
「それにしても何でまたお義父さんはリアに今日泊まりに来いなんて言ったんだろうなあ?」
「さあ?」
……なんか嫌な予感がするんだが。例えば娘を託すとか言われたような。そんな変な気分。
「……ちょっと出てくる。飯作って待っててくれ」
「うん、急になんでそんなことを言い出したのかは解らないけど解った。聞かない方がいいんでしょう?」
「センキュ」
此処だけは本当に心を読まれなくて良かったと思う。そしてリアの心遣いに感謝だな。
正直、俺のこの予感が当たっているなら、最悪災厄に見舞われているだろうからな。
出来るだけ速く、早く行かなければ。なんだかんだで俺からしたら恩人という認識でもあったからな。
折角異世界にきたんだ。力も偶然とは言え得ることが出来た。どんなコトがあろうと俺は拾い上げてみせる。
なにせ俺はハッピーエンドを望んでいるんだからなッ!!
次の話でプロローグは終了です。
今回短いのは、次への繋ぎという意味合いが多いです。
まあ、長くしようと思えば長くできるんでしょうけどね。
次の話で本当の第一話は終了です。




