ep12.スライムの大群に出会った勇者は
初の完全勇者話。リメイク?前も含めて初めての試み。
想像以上の性格になってしまったなあ……。
人は誰だって疑問を抱きながら生きている。
どうして地球は回っているのか?どうして人間は言葉を交わせるのか?どうして争いは無くならないのか?
どんな疑問を抱いているかは十人十色。いろんな物があるだろう。友人関係についてだったり、恋愛関係だったり、仕事についてだったり、夢についてだったり。
俺の今の疑問はこれだ。俺は何で勇者として呼ばれたんだろうか?いや、俺自身夢に見ていたことではあるんだけども。それに俺じゃあ力不足じゃ無いだろうか?だって俺はつい最近まで先輩に恋いこがれる普通の高校生だったんだ。
なんで急にそんなことを言い出したかと言うと、目の前のスライム達に苦戦してるからだ。
「……くっそ、刃が通らないっ!」
「魔法も無効化されてしまいますっ!!」
「きゃあ!?服も溶かされる!?」
なにその夢生物……ゲフン!ナニソレ卑猥。つか、服溶かされるならならアリアさんが溶かされろよ!!なんでよりによってエンヴィーなんだよ!!
……ゲフン。それにしても足を引っ張るなよとか言ってたけど、この旅が始まって一番足引っ張ってんのテメェじゃないかよ。
なんだ?なんだよ、なんですかあ?その残念さ溢れた状態はよォ!!
「15柱の光の精霊よ。かの者を浄化せよ。【クリナップ】!!」
この呪文は広範囲に光の矢を降らせる魔法だ。味方に当たらないというアレもないが、多分さけられるだろう。モチロンアリアさんには降らない。コレ決定事項。想いを力に!ってヤツだな。
「ピギィイイイイ!?」
「お、光が弱点か!」
「流石です、勇者様!」
おお、アリアさんに褒められた!!ktkrキタコレ!!テンションもMAXになってきたし、ちょいと無理して広域殲滅魔法でも使おうかね。
……ま、まあ、覚えたてだから、使いこなせるかはアレだが。
「30柱の光の精霊よ。かの者達を殲滅せよ。【ションゲンゲビエット・パージ】!!」
オーロラが降ってくる。まさにそのイメージだ。地面についたオーロラは波になり、一気に殲滅する。わりとえげつない魔法だな。
「……ッチ」
「おい、舌打ち聞こえてんぞ、痴女」
俺が見たいのは先輩の裸かアリアさんの裸なんだからな。テメェみたいな牛のような体型には興味の欠片も沸かないんだよ。
まあ、男としての本能で気づかれない程度にチラチラみてしまっているのは内緒だ。
「にしても、よくもまあこんなにスライムが沸いてきたな」
「そうですね、30匹も出てたらギルドに何かしらの依頼が行く筈なんですがね」
「魔王の仕業じゃあないかしら?」
「姫さんよ、なんでもかんでも魔王の仕業にしてるけど、本当に魔王が悪いのか?」
「ええ!魔王が全部悪いのよ!!聞いた話じゃあ、私が召喚した勇者が魔王をしてるらしいし。あのクソ勇者は私の経歴をどれだけ傷つけたら気が済むのかしら!!!」
……まあ、確かに?こんなお姫さまじゃあ逃げてしまうのも解る気はするんだが。今思ったら、俺が召喚された時に周りの俺を見る目は完全に見下す眼だったし。
そういうことに敏感な人は逃げるんじゃあないだろうか?なお、アリアさんは純粋にみてくれていた模様。さすが俺の片思い相手!!
「姫さん、どうどう」
「私は馬じゃないわよ!この駄勇者!!」
理不尽過ぎるわ。なんだよ、このツルペタ姫さんは。もう、なんつーか、本気で俺も逃げてやろうか。アリアさんを連れて。
まあ、思うだけだけど。俺って偉い。
「姫様、それが窮地を救ってくださった勇者様に言う言葉ですか?」
「いや、良いよ。姫さんだし」
「……まあ、それはそうですね」
「どういう意味よ!!アンタ、私の部下の癖にそれは無いんじゃあないかしら!?」
「いつもご自分がどの様な態度で過ごしているかを思い返してくださったら解るんじゃあないでしょうかね」
「俺が来る前からこうだったの?」
「そうですね、姫様は姫様です」
……アリアさんの言葉が辛辣過ぎる。俺が姫さんの立場だったら泣いてるわ。流石に辛すぎる。なんだよ、この口撃は。
いや、まあ、乗ってる俺も俺なんだが。それにしても、アリアさんはずっとこの姫様に付き添って来たのか。……可愛そうに。
いや、昔は物凄く純粋で可愛かったという線が……。
「おい、勇者、姫様にその言葉遣いはないだろう!!」
「入るにしても遅すぎる件について。で、何の役にも立たずにスライムに服を溶かされただけの女戦士Eさん、それを言うなら一応形式上姫さんと同じ位を持ってる俺にその言葉遣いはなんなの?」
自分で形式上って言うのって案外辛いと言うことが解った。形式上って、完全にお飾りだもんな。しかも今の話聞いたことによって姫さん自身の位は最下層の可能性あるんだよな。
その場合はただの足枷だよなあ。うん、そう考えたら邪魔すぎてしょうがないな。
「え、いや、お前はお前だろう!!」
「なにそれ、もっと違う場面で聞きたかった」
結構憧れるセリフだよな。俺は言いたい方だが、多分言われるのも嬉しいんだろうな。……アリアさんから言われてみてぇなあ。『勇者だろうと、なんだろうと貴方は貴方です!』みたいな?
……まあ、そういう風に言われるまで好感度が上がるかどうか自体が問題なんだが。まあ、どちらにせよ、経験してみたいなあ。
「で、その苦し紛れの雄叫びの後は?何かあんのか?え?」
「……っぐ」
詰まるなよ。いや、俺の面倒とか考えたら詰まってくれた方が有り難いんだが、詰まってんじゃねえよ。やるならキチンとやれよ。それが男だろう!!いや、一応女だが。
「……勇者様、そろそろ止めておいた方が良いですよ?そろそろ手が出ますから」
「アリアさんは結構毒づきますね……」
思わず敬語になっちまったよ。アリアさんの一言でエンヴィーが切れるという考えは無かったのだろうか?いや、もしかしたら切れても止められる確証があるんだろうか。
「アタシをスルーするな!!20柱の火の精霊よ。かの者を燃やせ。【アグニ】!!」
「ちょ、おま……。ええい、12柱の光の精霊よ。我が身を護れ。【プリズム】!」
防御魔法だけが物凄く特化していくのはこういうハプニングのお陰だろうな。姫さんさまさまってヤツだ。まあ、なんだ?迷惑なことに変わりないし、防ぎ損ねたらアリアさんに当たるかもしれないし、もしかしたら近くの森が燃えるかもしれない。
それにしても、防御特化の勇者ってどうなんだろうか?いや、やること、為すことを考えると防御特化の勇者が当たり前ではあるんだが、物語の勇者は基本的に攻撃特化だったりするからなあ。
それを考えると先輩勇者とかになってそう。あの人何でも出来るし、優しいし、モテるしな。いつも隣にいる女性もかなり美人だったし。
……完全に先輩ってバトルファンタジーギャルゲの主人公スペックだよな。
「……っと、やめなさい。はしたない。どっかの虚無嬢みたいな性格はモテねぇぞ?」
「誰よ!虚無嬢って!!そしてなんで、アヴァロン最強の私の魔法を少ない精霊の数で防げるのよ!!そんなの絶対可笑しいわ!!」
「なんというか、喧しいわ」
「ですね」
「キイイイ!!」
「……ああ、憤ってる姫様は良いなあ。あの姿にしてるのが勇者なのが気に入らないがな。全く持って気に入らないんだが」
おい、テメェ聞こえてんぞ。喧しいわ。好きでこんなヒステリ嬢のヒステリックを聞きたくねえよ。つか、なんでこんな姿が好きなんだよ。俺には全く理解出来ん。
つか、百合百合すんのは良いがコッチを巻き込まないで欲しいなあ。




