第五話 思いと戦士と友達
「田沼、今マンションに着いたぞ」
『分かった、今入口あけるから……えっと、うちは四階の……』
田沼のマンションのホール。田沼の家まで駆けた俺は、そこで田沼に連絡を入れた。マンションの前までなら来たことがあるが、さすがに中までは入ったことがない。素人目にも、このマンションに堅牢なセキュリティがあることが分かった。
それでも、あの人形相手にどこまで通用するかわからない。あの人間離れした挙動でもってすれば、これくらいの障害なら難なく乗り越えてしまうだろう。
緊張した面立ちで佇んでいると、通話を切ってから一拍の後、入口の自動ドアが開いた。俺達はそのまま、足を一歩踏み入れる。
「平賀殿、先に言っておくでござるよ」
「ん? どうした司?」
エレベーターが来るまでの僅かな待ち時間に、司は真剣な表情で俺に語りかけてきた。その表情に、思わず俺も引き締まる。
「拙者は確かに人形と戦うでござるが、田沼殿を守るのは平賀殿でござる。それだけは、努々忘れないでほしいでござるよ」
「……どういう意味だ?」
「文字通りでござる。終わった後に田沼殿の傍にいるのは、平賀殿がいい。拙者では――役立たずでござる」
チン、という音を立ててエレベーターの扉が開く。サッサと入ってしまう司を、俺は慌てて追いかけた。
「だから、どういう意味だって?」
司が言いたい意味がいまいち理解できない。人形と戦うと言うことは、人形から俺と田沼を守るということではないのだろうか。
「拙者には人形と戦うことしかできないでござるよ。必ず勝つつもりでござるが、その時に田沼殿の傍にいてあげて欲しいのでござる。田沼殿は気丈な方だと思うでござるが……きっと、平賀殿が必要でござる」
エレベーターが目的の階に到着する。まだ納得できない俺は、なおも司に突っかかっていた。
「だから! なんで俺が」
「平賀殿」
とある一室の前で、司が足を止めた。そのまま、俺の事をしっかりと見つめる。
「もう少し、女心という物を学ぶでござるよ。――ほら、ここが田沼殿の部屋でござろう?」
司がその部屋の表札を指差す。そこには確かに、『田沼』の文字があった。
俺はまだ司に色々と言いたいことがあったが、このまま聞いても司は教えてくれそうな気配がない。仕方なしに、俺はその部屋の呼び出しブザーを押した。
『……はい』
「田沼か? 平賀だけど」
『あ、ちょっと待ってて』
インターホンのスピーカーから田沼の声が聞こえる。そのまま俺達が来たことを伝えると、音声が切れて、代わりに扉の向こうに人が近づいてくる気配がした。カチャリカチャリと、鍵をはずしていく音がする。
そして扉が開いた瞬間――俺は一瞬呆けてしまった。
「お待たせ……って、平賀? どうしたのよ、そんな顔して」
「え……いや……えっと、誰?」
確かに、その声は田沼のものである。学校であれだけ怒鳴られているんだ、聞き間違えるはずがない。じゃあ目の前の女の子は……誰だ?
田沼の家から出てきたのは、有体に言えば可愛い女の子だった。髪の毛は少しウェーブがかった長髪で、ふわふわとしたイメージがある。泣いていたのか、少しだけ目が赤くはれているが、それでも決してその子の花束のような可憐さが失われてはいなかった。
「は? ……ちょっと平賀、何言ってんのよ? 私よ、私。田沼次美!」
俺のよく知る田沼の声で、よく知らない女の子がしゃべる。いや、理屈の上では二人が同一人物だとわかっているのだ。しかし、二人が頭の中で繋がらない。今まで俺が田沼だと認識していたコードが、全て無くなっている気がする。
「えっと、本当に田沼殿でござるか?」
「司君まで、何を……って、あ。眼鏡忘れてた……」
そう言って田沼らしき女の子は顔をぺたぺたと触っていた。そう。田沼の一番の特徴である、あの眼鏡がないのだ。それと、あの三つ編みも。その二つさえイメージすれば……確かに、目の前の人物が田沼だとわかる。
「まあ、見えるからいいんだけど……でも、二人とも来てくれたんだ。ありがとう」
そう言って、目の前の女の子は微笑んだ。司の太陽の明るく輝く笑顔とは違う、花の咲いたような暖かい笑顔。やっぱりその笑顔はいつもの田沼だとは思えないけれども――俺の心臓は、不思議なほど早いペースで脈打っていた。
「あ、ああ」
「もう、どうしたのよ平賀。いつもだったらもっと食いついてくるのに」
目の前の女の子が俺の気の抜けた返事に、少しだけ顔をしかめる。その顔がいつもの田沼と重なって、ようやく俺は少しだけいつもの調子を取り戻せた。
「悪い、ちょっとぼーっとしてた」
「もう。大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫だ」
それでもまだ少し早い心臓の鼓動を必死に押さえながら、俺は田沼の声に答えていく。まだ、この田沼には慣れそうにない。何となく、今の俺の状態を田沼に知られるのはまずい気がした。
「やれやれ。この二人はどうしてこう……お互いに鈍いのでござるな」
「? 司君、何を言ってるの?」
「何でも無いでござるよ。そんなことより田沼殿。ひとまず、中に入れてもらえないでござらぬか? これからの事を話し合いたい故」
「あ、ごめん! ほら、平賀も固まってないで」
田沼が俺達を家の中へと招き入れる。俺と司はお互いに顔を見合わせて――田沼に従って入った。女子という生き物は、ときどきもの凄く意外な一面を見せる。田沼のあとに従いながら、俺はそんなことを思った。
田沼の家は綺麗だった。靴が丁寧にしまわれた玄関、塵一つ落ちていない廊下。リビングもきちんと整頓されている上、そこかしこに観葉植物などを飾り、部屋の持ち主のセンスの良さを感じさせていた。
俺と司はそのリビングに通され、ソファの上に腰かける。そしてそのまま、田沼が入れてくれたお茶を一口飲んだ。乾いていた喉が潤う。
一息ついた俺は、話すきっかけが見つからずまごまごとしていた。
辺りを見れば、田沼の方も何かを聞きたそうにして俺と司をチラチラと伺っている。奇妙な均衡関係が生まれ――少し、沈黙が生まれてしまった。
「……コホン」
意外なことに、その沈黙を破ったのは司である。わざとらしく咳払いをし、言葉を続けた。
「とりあえず、ここに来るまでに仲間にも連絡入れておいたでござる。緊急事態と言っておいたので、うまくいけば応援が駆けつけてくれるはずでござるよ……ところで田沼殿、ご両親は今日どちらに?」
「明後日まで出張に出てるわ。どんなに急いでも、帰れるのは明日くらいになっちゃうって言ってた」
「そうでござるか。しかし、今回はちょうどよかったでござるな。下手に巻き込まれないで済む故。……拙者も、安心できるでござる」
司は自分の横に置いておいた竹刀ケースのジッパーを開け、中から一振りの真剣を取り出した。そのままその柄を握って、感覚を確かめる。その姿は小さいながら、一人の剣士。
「司君……それ……? 本物……?」
「本物でござるよ」
田沼が息をのんでいる。当然だろう、司の雰囲気は先ほどとは全く異なる。今の司は先ほどまでの明るい雰囲気がない。一本の剣のように、研ぎ澄まされている。
「……司君って、何者なの……?」
多くの期待と、少しの恐怖を湛えた眼で司を見る田沼。司はその目線をまっすぐに受けて、それでも目をそらさずにこう言った。
「拙者は戦間司。人形を追い、人形を斬る。ただ、それだけのモノでござるよ」
司はただ淡々と答える。その瞳、その立ち方、その在り方。その全てがその言葉を肯定していた。
俺はその姿に大きな安心感と――少しの、悲しみを感じた。
「で、ぶっちゃけた話。奴さん、今日来ると思うか?」
俺は司に感じた悲しみを振りはらうように、話を切り出す。
噂話では、被害者の前に人形が現れてから殺しに来るまで少しブランクがあるように言われている。そうであるなら、俺達はどうするべきなのか。
「それは……わからぬでござるよ。ただ獲物だと思われていた平賀殿を相手にするよりも田沼殿を狙ってきたことから、相手は田沼殿にかなりの執着があるのではないかと思うのでござるが――」
「ちょ、ちょっと平賀!? 何で平賀が狙われてるのよ!?」
司の言葉に、田沼は驚きを隠せないようだった。確かに俺は、田沼達にそのことを言っていない。……ここまできたらもうそれも意味がないか。
「かいつまんで言えば、昨日の夜中にアレ襲われた。司に助けてもらった。そんな感じだ」
俺は本当にさっくりと事の次第を説明する。そのざっくばらんな説明に満足したわけではないだろうが、田沼はそれで静かになった。というよりは、少しさびしげな目をしている。
「そんな……なんで学校でそのことを教えてくれなかったの?」
「……教えたところで意味はないからな。巻き込みたくもなかったし」
それは間違いなく俺の本心だった。俺はあの時、いきなり死にかけて助けられて。一緒に人形探しをするという約束までしてしまった。……確かに非日常に脚を踏みこんでしまったのだ。
「お前や源六は俺の『友達』だから。巻き込みたくなかったんだ」
俺にとって二人は俺が学校に行く意味であり、大切な親友だ。こいつらがいたから、俺はまだ日常を生きていられた。だから、こいつらを巻き込みたくはない。……そう、思っていた。
「……はぁ。ねえ平賀?」
「……何だ?」
「バカじゃない?」
「バカ!?」
田沼はストレートに俺の胸をえぐってきやがった。田沼はさっきまでの真剣で悲しげな瞳が一転、あきれ顔になっている。その眼差しに、俺は反論できず口をパクパクとさせていた。
「あんたの口ぶりじゃ、まるで私たちを除けものにしてるみたいじゃない」
「……い、いや違う! 俺はお前たちを友達と――」
「はいはい。まずは私の話を聞きなさいって」
俺の言葉を遮った田沼は口にお茶を含んで湿らすと俺の目をまっすぐに見てしゃべりだした。
「いい? あんた今私達の事を友達って言ったけど、じゃあ友達って何? 都合のいい時だけ助けたり助けてもらったりする関係? 違うわよね、少なくとも私はそう思ってるわ。でもあんたの口ぶりだと、まるで私達を自分より上位において――まるで、なんかのシンボルみたいな扱いじゃない。絶対に汚したくない旗、みたい。ふざけるんじゃないわよ! 本当に友達だと思ってるんなら、そんなこと気にせずに一緒にどうにかしてくれ、くらい言いなさいよ! いつもあんた言ってるじゃない。自分ができることなんてたかが知れてるって。だから周りに任せるんだって。は! 結局、ここぞというところで私達を頼ってないじゃない! いい? 私もあんたが言う、自分にできないことを他人に任せるっていうのは別に嫌いじゃないわ。だから、頼りなさいよ! 私を、松平を! 言っちゃなんだけど、私のほうがあんたより強いのよ!?」
そこまでを一気にまくしたてて、田沼は言葉を切った。息を切らせ、顔は興奮して赤くなっている。そんな田沼に、俺はただただ圧倒されていた。
「……そうなのか?」
「そうよ! それとも何、私とは友達じゃないって?」
俺は首を横に振った。うまく言葉が出てこない。
「そう! ならいいのよ。もう仲間外れなんていやだからね。私だって、あんたがいなくなったら嫌なんだから!」
プイッと、顔をそむける田沼。
――ああ、そうか。婆ちゃんがいなくなってから大切な人がいなくなることがどういうことかわかっていたはずなのに。結局、俺はまだよくわかってなかったんだな。
俺の胸中に、熱いものが込み上げてくる。頬が熱い、首の後ろがちりちりする。しかしそれらは、決して不快な物ではなく。――心の底から、嬉しかった。
「……ああ、わかった。俺も田沼がいな――」
「『次美』!」
「――くな……って、へ?」
「あんた、松平は源六って呼ぶし、司君は司って呼ぶでしょ。だったら私も『次美』って呼びなさいよ! 友達でしょ!? 私もひ、均って呼ばせてもらうから!」
俺の方に振り返った田沼顔はさっきのように花が咲いた笑顔ではない。トマトのように真っ赤な、いつもの怒ったような表情だったが……不思議と、今までで一番可愛いと思った。
「……あ、ああ、わかった、次美」
「それでよし!」
俺と田沼――いや、次美はそう言いつつ、二人同時に明後日の方向を向いた。たぶん、今の俺の顔はゆでダコのようになっていると思う。誰にも見られたくない。
………………
二人の間に落ちる沈黙。嬉しいようで、恥ずかしいようで――
「こほん。二人で盛り上がってるところ申し訳ないのでござるが」
「「△○×●××!!」」
――存在を忘れられていた司の一言で、俺の心臓は破れんばかりに跳ね上がった。慌てて姿勢を正して前を向けば、次美も同じように慌てて姿勢を正している。司はそんな俺達を半目になって見つめていた。
「い、いや、司、これはだな――!」
「いいでござるよ。別に。拙者、平賀殿が誰と仲良くしていても気にしないでござる」
そう言った司は、いつになく不機嫌そうだった。刀は持っていたが、いつの間にかその気配が剣士からいつもの司の気配に戻っている。俺はその目線に射殺されそうな気分になった。
「いや、だからな」
「それよりも、田沼殿……いや、次美殿」
「え、な、何かな? 司君!?」
「もしかして、松平殿を呼んだのではないでござらぬか?」
「え、ええ、そう言えば電話したかも。均たちが来る少し前だけど」
司の一挙手一投足に俺は恐怖を感じる。司自身はいつも通りに話しているつもりなんだろうが、目が全く笑っていない。そして何故か、こいつまで次美を名前で呼ぶようにしていた。
「やっぱりそうでござるか。いや何。先ほど電話が鳴ってたでござるよ?」
その言葉に、二人揃って机の上にある次美の携帯を見た。ストレートタイプの携帯電話の液晶は、確かに源六の着信があったことを示している。時間はちょうど、次美が俺に説教をしているときだった。
『ブー、ブー』
「……っ!」
慌てて源六に折り返し電話をしようとしている次美よりも早く、俺の携帯が着信を告げた。小刻みに震える携帯電話を取り出してみると、相手は件の源六である。俺は妙に緊張しながら、その通話ボタンを押した。
「も、もしもし? 源六か?」
『……均か? 今どこにいる?』
「今は次美の部屋だけど……あ、司も一緒だからな?!」
『……次美? 均、お前ようやく――』
「あ、いや、田沼の部屋な、田沼の部屋! 待ってろ、今田村に代わるから!」
「へ? わ、私? ……もしもし?!」
俺は次美に携帯電話を投げ渡すと、いつの間にか額に浮いていた嫌な汗をぬぐった。
あくまでも次美が友人だから次美と呼ぶのであって、別に、その、男女の仲のそれとは違う意味である。だから大丈夫、俺はまだ、源六を裏切っていない!
心の中で必死にそう言い訳をする。決して源六に届くことのないそれは、しかし自分の頭を冷静にする効果はあった。少しずつ、熱に浮かされていた頭が冷えてくる。
そうやって心の中でぶつぶつ言っていると、じと目でこちらを見ている司と目が合った。とても何か言いたそうな顔をしている。俺はしばらく知らんふりしていたが、あまりにもじっと見てくる司についに耐えきれなくなって口を開いた。
「……何だよ?」
「……別に何も」
そう言ってはいるものの、司が俺を見る目は変わらない。
「いや、何でも無いって事はないだろ。司、少し怒ってないか?」
「怒ってないでござるよ」
「いや、やっぱなんか怒ってるだろ……?」
「怒ってないでござるよ! 別に拙者は平賀殿が誰と仲良くしていても気にしないでござる!」
やっぱりどう見ても怒っている気がする。が、俺にはそれ以上追及することはできなかった。
結局、源六を迎えに行った次美が帰ってくるまで、俺は司と気まずい空間を味わう羽目になったのである。
「……電話に出ないから本気で心配した」
「「スイマセン」」
源六が次美の家に入ってきた最初のセリフがそれだった。別に、怒っていたりするわけではない。本当に心配していたという顔なのだ。元々あまり表情の変わらない源六だが、今は優しげに微笑んでいる。それがあまりにも申し訳なく感じ、俺と次美はその漢に頭を下げた。
「……きっと均も来ているとは思った。家に行っても誰もいなかったからな」
「「……」」
済まない源六。今はお前の顔が眩しくて見えない。
「はぁ……」
頭を下げたまま微動だにしない俺の耳に、司のため息が聞こえた。ふと顔を横にやれば、呆れているような、うらやましがっているような顔の司が見える。
「やれやれ。拙者としては護衛対象が増えるのであまり松平殿にも来てほしくなかったのでござるが――」
俺と次美は顔を上げ、司を見る。源六も同じように真摯な瞳で司を見つめていた。司はそんな俺達の様子をみながら、少しだけ唇を上げていた。
「――まぁ、平賀殿たちが一蓮托生というのなら何も言うことはないでござる。最悪、拙者が人形を相手にしている間に逃げてくれればいいでござるよ」
司がさっき俺に行ったのと同じようなことを、自身の刀を手に、言う。それは覚悟。その真剣な眼差しは、力強い戦士そのものだった。決して揺るがないであろうその言葉を――
「いや。やっぱりそれは違うぞ、司」
――俺は真正面から否定する。真剣な眼差しには真剣な眼差しで。真剣な言葉には、真剣な言葉で。俺は、さっきはまとまらなくて伝えられなかった自分の思いを、言葉にする。
「……平賀殿?」
「司。お前ももう、俺の大切な人なんだ。出会って一日とはいえ、いなくなったら困る。人形に負ける気なんてないんだろ? なら、その時はお前も俺の傍にいろよ」
こいつの中では俺との関係はあくまでも人形を捕まえるためだけなのかもしれないが、俺からしてみれば違う。こいつは俺の命の恩人であり、もう俺達の仲間だ。源六や次美とはまた違った形で、一緒にいたいと思う。傍にいて欲しいと思った。
「んな!? ななな!?」「……司君……ずるい」「……言うな、均」
……そう言うことを伝えたつもりなのに、言葉を聞いた瞬間、司は慌て、次美は司をうらやましそうに見て、源六は感心したように俺を見ていた。
何だ、この空気。俺はそんなに変なことを言ったのだろうか。
「た、大切な人とな……!? いや、拙者も平賀殿のことは嫌いじゃないでござるが! その、はっきり言われると困るでござる!」
「……はぁ……せっかく一歩前進したと思ったのに……最大の敵はやっぱり司君……?」
「……均。今日のお前はいつもと違うな。ただ……正直、危ないんじゃないかと思う。……色々な意味で」
口々に何かを言う面子。せっかく俺が真面目なことを言ったのに、誰も共感もしてくれなかった。いや、別に感心しろとは言わないけど、少しは真面目に聞いてほしい。俺の熱い思いを返して欲しい。
その、砕けた雰囲気の中。
ガシャーン!!!
「「「「!!!!」」」」
それは突如として乱入してきた。
突然リビングのガラスがけたたましい音を立てて割れ、
四階という高所に吹く風が、カーテンをたなびかせ窓ガラスをまき散らせる。
そのきらめくガラスの一枚一枚に、驚愕に彩られた俺達の姿が見えていた気がした。
妙に間延びしたその時間の中で、俺の目の前に何かが迫る。
――そしてそれは、一瞬の閃きをもって俺の首を薙いだ。
後二話程で終了予定です。




