"怒りの日"
窓の外では飛行機が飛び立つ時の様な大きな音が続いて居て、この世のあらゆる犯罪みたいな事が繰り広げられて居る
こんなアパートに注意を払う者なんて誰も居ない
幸運な事に、天気だけはとても良かった
陽は少し昇って
今は昼前くらいだろうか
もうこの世界には、今が何時なのかなんて事を気にするやつは居ない
生きとし生けるもの総てにとって、今日が生の千秋楽だ
優しい匂いと共に、君がスクランブルエッグの乗った皿を手にして僕の近くのテーブルに着席する
僕は膝を抱えて窓の外の惨たらしい景色を視て居たが、直ぐに関心を失って、遅めの朝食に視線を向けた
「冷蔵庫の中、もう何もなくってさ」
君が寂しげに笑う
僕は「確かに、こんな中で買い物に行く気しないもんな」と
テーブルの上で、卵一個で作られたスクランブルエッグが陽射しに照らされる
僕はそこに寓話的な意味を探そうとしたが、有る訳が無かった
よりによって、ケチャップは新品が冷蔵庫に入って居て
間の悪さに僕たちは、顔を視合わせてくすくすと笑った
長く一緒に居たわけでは無い、と個人的には思って居る
何故なら、もっと一緒に居たかったからだ
時間通りなら、昼に来るらしい
僕が「皿、洗おうか?」と聞くと、君は「別に良くない?」と答えた
それでも何故か、皿は流しに置かれて上から水をかけられる
実のところこの皿は永遠に用事が無いし、なんなら叩き割ったって良い
事実として先日、窓から手当たり次第に物を投げて居る人を視たが、しかし、僕は事ここに至ってもあまりそんな気にはならなかった
「最後にさ」
君が、窓の外に顔を向けながら云う
表情は伺い知れない
「───僕らの躰を紐か何かで括り付けておかない?」
「なるべく、一緒に居られるようにさ」
そんなん意味あるかよ、と呟いて
僕は、君を後ろから抱き締めた
腕に伝わる感触が柔らかくて、とても優しい
飛行機の飛び立つ時みたいな音が大きくなって、僕は窓の外を視た
あまり真剣にニュースを視なかったからうろ覚えだが、隕石だかなんかそういう物が、もう肉眼で視えるくらい近くに在る
窓を開けると、熱い風が頬を焦がすように感じられた




