第6話 卒業旅行出発!!
ピンポーン
家のベルが鳴った
朝から何?
急いで重たい体を起こし、玄関に走っていった
ガチャっと扉を開けると――
「おはよう、百合」
「え?」
そこにはいつも見ている長身の少女が立っていた
「なんで!? すみれが!?」
え、もしかして遅刻!?
「いやー、百合遅刻しそうで心配だったから」
時計を見ると6時半。全然まだ間に合う
てかいつもならまだ寝てる
「あら、すみれちゃんいらっしゃい」
「おはようございます、水瀬さん」
「ごめんね、来てもらっちゃって。この子絶対ギリギリまで起きなそうだったから」
「いえ、私が来たかっただけですし」
「相変わらず丁寧な子ね。こんな子が百合の奥さんになるって考えられないわ」
「ちょっとお母さん!?」
何言ってんの!? ほんとに
「水瀬さん、どちらかと言うと私は百合の旦那ですね」
「あら、それでも大歓迎よー」
なんか、すべて私が大事な話なのに、勝手に進んでる気がする
「ほら、それより百合、すみれちゃん待たせないように早く支度してきなさい」
「は……はい」
―――
「すみれちゃん」
「どうしました?」
「百合のこと、ほんとにごめんなさい」
目の前の女性が頭を下げてしまった
あなたが謝るべきじゃないのに
「それは水瀬さんが言うべきことじゃないですよ。失うのは私だけじゃないんですから」
というか、私と百合の思い出はこの2年間だけで、水瀬さんはこの18年の記憶が百合からなくなる
この人のほうが辛いだろうに
「お願いがあるのだけど、良い?」
「百合のことなら何でも」
水瀬さんが少し息を呑み、言い淀む
「……最後まで、忘れるまであの子のそばにいてくれないかしら。あなたが一番傷ついてしまうお願いなのはわかってる」
そんな傷
傷でも良いから抱えていたい
私はもう百合の居ない未来なんて考えたくない
百合さえいればほかは何もいらない
私の記憶が消えればあの子の記憶が消えないなら喜んで消す
何かを生贄にして、消えないのならば喜んでなんでも捧げる
それがたとえ私でも
「えぇ……百合がたとえ忘れても一緒に居ますよ。それが私の願いなので」
百合がたとえ私のこと
私との記憶を忘れたとしても、
すべての記憶を教えれば良い
百合が信じないなら、少し無理矢理にでも
逃げてしまうなら、
愛して
縛って
私のものに
どこにも行かないように、
何度も私を思うように
私しか考えないように
私だけで百合の世界を作ってしまえば良い
「絶対に離れないですよ」
水瀬さんに聞こえないように小声でそう呟いた。
「すみれー!! ごめん待った!?」
百合がドタバタ2階の自室から落ちるように降りてきた
慌ててる百合も可愛い
少し寝癖が残っている髪も可愛い
私のことを心配してくれるところも愛おしい
あぁ、私はこの子といられるだけで
幸せ
絶対に忘れない
「待ってないよ、早く行こ」
この幸せを……




