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聖剣になってしまった少女は、勇者になれますか?  作者: 風間 蒼月


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リオノラの地下室

「しばらく、わらわの無作法を我慢してもらう」


 リオノラの声はとても柔らかく、少年時代に聞いた童謡のように人を惹きつける調べを帯びていた。

 スキーナの心は、奇跡的に落ち着いた。


「零縛界」は発動可能だ。

 今ここで拘束を解いても、またすぐに捕まるに決まっている。

 いったいこいつが何をしようとしているのか、まずは様子を見るべきだ。


 少女の小さな靴が石畳を踏む音が、澄んで響く。

 魔術師の装いながらも、帽縁に金が施され、衣に鎖の飾りがついたその姿は、まるで魔術師たちの王そのものだった。


 こいつは一体何をするつもりだ?


 石段は深く暗く、蝋燭の火がゆらゆらと揺れる。

 リオノラは城の地下へと降りていく。

 まさか、自分を幽閉するつもりなのか?


 そんなの全然面白くない。

 しかも、準備ができてからにしてもらわないと。


 火の光が、壁のぼこぼこになった壁画をぼんやりと照らし出していた。

 空を舞う魔女たちが元素を操り、雲の上に雄大な魔法使いの塔がそびえ、そして教廷の騎士たちが狞猛な面持ちで剣を振りかざしている姿。

 不鮮明だが、当時の壮絶さがうかがえる。


「魔女の時代が滅んだのは、わらわたちの慈悲が招いた結果だ」


 リオノラの言葉は、せせらぎのように流れる。

「わらわたちは人類の救世主であり、魔法の起源だ。だが汝らは卑劣さで勝ちを収めた。この歴史は、正されなければならない」


 スキーナはこの言葉に対して、肯定も否定もしなかった。


 二人はひたすら降り続け、ついに城の地下室に辿り着いた。


 ここは地上よりも一層冷たく陰気で、火の光はちらつき、二人の影を長く歪んだものに引き伸ばしていた。


 空気には血の臭いと錆の臭いが充満していた。

 石段の突き当たりには広々とした暗牢が広がり、牢の扉は精金で造られ、幾重にも重なりながら闇の奥へと続いていた。


 スキーナの表情は厳しくなった。

 牢の中から、強大な気配を嗅ぎ取ったのだ。


 まさかここは、リオノラが集めたエセラン王国に反旗を翻す強者たちのアジトなのか?

 もしそうなら、自分は「闇から明へ」寝返ることになるだろう。


 だが次の瞬間、轟くような雄叫びが、スキーナの魂を飛び出さんばかりに響いた。


「リオ!リオノラ!!!」


 鎖を引きずる音と共に、男の声はますます大きくなる。

「お前を殺す!お前の肝臓を食いちぎり、体が俺の腹の中に消えていく様を、生きたまま見せてやる!」


 まったく、どれだけの恨みがあるんだ。

 自分がこうして捕まっているのに、ここまでの考えは浮かばなかった。


「ふっ」

 少女は柔らかい唇から、静かに息を吐いた。


 ランプはまるで命令を受けたかのように、「パチッ」と明かりを灯した。


 スキーナはようやく全貌を見た。

 ここには「反逆の義士」なんていない。

 そこにいたのは、巨体の地獄犬だった。

 頭はトラックの車体ほどの大きさで、六つの血赤い瞳は、六つの小さな血の月のようだった。


 だが今は二つの狼頭が少女に向かって罵り倒し、残りの一頭は歯ぎしりをしながら鉄格子をかじりつけていた。


 さらに目を上げると、これはリオノラの「コレクション」の一つに過ぎなかった。

 ここには鱗に覆われた岩魔も閉じ込められている。拳は石臼ほどの大きさだ。

 さらには形の定まらない影の妖も、闇の中を行き交い、時折耳をつんざくような金切り声を上げていた。


 これらの魔物の気配は、先ほど城壁で見た獣潮よりも数倍強大だった。

 どれ一つ外に出れば、町一つを壊滅させるだけの力を持っている。


 だがリオノラは平然とした表情のまま、言った。

「アノラス、お前はここにどれだけいる?」


「37 年と 45 日だ!!!」


「随分と長く飼ってあげたものだわ」


 スキーナが目の当たりにしたのは、純粋で圧倒的な魔力が一気に流れ込み、地獄犬の首が一太刀で跳ね飛ばされる光景だった。


 ぷしゅっ――


 黒い血が地面に飛び散り、地獄犬は痛ましい悲鳴を上げ、どさりと地面に倒れた。


「ひどい!」


 スキーナは心の中で戦慄した。

 この魔女は、本当に「魔」そのものだ。次に何をするのか、全く予測がつかない。


 それに彼女は感じ取った。

 リオノラの魔力の質は、かつて会った老牧師よりもはるかに高い。

 さっきの技はどの系統の魔法にも属さず、ただ魔力で威力を高めただけのものだった。


「どうだ?」


 何がどうだって?

 スキーナは訳が分からなかった。


「これがわらわの調べたことだ」彼女は言った。

「聖剣は、強敵を打ち負かし続けることで強くなる。これで十分じゃないか?」


 これでスキーナは理解した。

 確かに、プログレスバーが更新され、200/3000 になっていた。

 たった一体の地獄犬で、800 近くも上昇したのだ。これは魔物の狼百匹分に匹敵する。


「十分だ、もう十分だわ」


 スキーナは全く疑わなかった。

 もし自分が十分じゃないと言えば、こいつはここにいる魔物を全て殺し尽くし、果ては魔王にまで挑みに行くに違いない。


 幸いなことに、新しいスキルが追加されていた。

【冥火】地獄の炎、消すことができない


 まあ、この魔女お嬢様は、明らかに自分ほど運が良くないわね!


 スキーナがさすがにもう手を引くだろうと思った瞬間、リオノラの姿が一瞬にして動いた。

 まるで金色の稲妻のように、魔物の群れの中を縫うように駆け抜けていく。


 続いて、魔法が豪雨のように降り注いだ。

 長槍、鋭い刃、光の盾が次々と現れ、一撃一撃が正確に魔物の急所に突き刺さる。


 スキーナはぽかんと見つめていた。

 これは完全に一方的な虐殺だった。

 自分と契約したのは、目隠しの美少女なんかじゃない。まぎれもない殺戮機械だったのだ。


 わずかな時間のうちに、暗牢の最外層にいた強大な魔物たちは、リオノラによって皆殺しにされていた。

 彼女の足元の白いスカートは血で真っ赤に染まっていたのに、依然として尊く、冷たいままだった。


 金髪は血に濡れて束になり、湿った臭いを放ちながら頬や首に張り付いていた。

 だが彼女は全く気にする様子もなく、暗牢の最も奥へと歩いていった。

 足取りは平穏で、さっきの虐殺などただ蟻を何匹か踏み潰しただけのことだったかのようだった。


 蝋燭の光はますます弱くなり、闇は一層深みを増していった。


 暗牢の最下層に辿り着くと、目の前に巨大な精金の檻が現れた。


 檻は腕ほどの太さの精銅の柱百本で鋳造され、柱には封印のルーンがびっしりと刻まれていた。

 ルーンは淡い紫色の光を放ち、心臓が締め付けられるような威圧感を撒き散らしていた。


 檻の中には、巨大な影がうずくまっていた。


 一双の暗金色の巨大な竪瞳が、突然、鋭く光った。


 スキーナの思考は、一瞬にして止まった。


 これは、竜だった。

 生きた本物の竜を、初めて見たのだ。


 白竜の体は数十丈もの長さがあり、鱗は真っ白な雪のように清らかだった。


 両翼は体の脇に丸められ、翼膜には大きな裂け目が走り、中の白い骨がむき出しになっていた。

 竜の頭は垂れ、一本の角が折れている。今、その瞳には怒りが満ちていた。


 リオノラが近づくと、白竜は突然頭を上げ、耳をつんざくような轟音の咆哮を上げた。


 咆哮は雷鳴のように響き、石の壁は震えた。

 少女の姿はこの時、あまりにも小さく見えた。だが不思議なことに、威圧感ではリオノラが完全に上回っていた。

 ただそこに立っているだけで、無敵の存在だった。


 彼女は指先を上げ、檻に向けた。


 淡い金色の魔法紋が広がり、檻の封印ルーンを覆い尽くした。


「封印、解除」


 平穏な四文字が響いた瞬間、檻の淡い紫色のルーンは徐々に輝きを失った。

 白竜は待ちかねたように尻尾を振り回し、銅の柱をなぎ倒した。


 そして竜の爪が一気にリオノラに叩きつけられる。

 口の中には、肌を刺すような寒さを帯びた竜息が凝縮され、今にも吐き出されようとしていた。


 リオノラは依然として身動ごとしなかった。

 金色の光の盾を身前に構え、液体窒素のような寒気が吹き付けられる。

 周囲の気温は一気に下がり、光の盾には分厚い氷の層が積もった。

 竜息が終わった隙をつき、彼女の手の聖剣から、数丈もの長さの黄金の光刃が伸びた。


「わらわは真心で招き入れようとした。汝らは魔女の盟友たるべき存在だ」

 彼女は少しの失望と惜しみを込めて言った。

「道を同じくしないのなら、消えてしまえばいい」


 言葉が落ちると同時に、巨大な剣がまっすぐに振り下ろされた。

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