猛る魔鷲
彼らが大挙して到着した時、ブレイクはまっかに呆気に取られた。
急いで駆け寄り、驚きと歓喜に満ちた表情で。
「勇者様!まさか…… まさに連れてきてくださったのですか?」
「彼らはただ、町のために力を尽くしたいだけのことよ」
少女の謙虚さが、彼の崇敬を一層強めた。
「勇者?」
最前線の者たちがその言葉を耳にし、
興奮で体を震わせ、口々に噂し始めた。
一人の老魔法使いが眉を動かし、前に出てきた。
目は見えず、長い眉が垂れ、
法衣は質素だが、誰もが彼を崇めていた。
「勇者様、あなたのお言葉一つで、私たちはどこまでも従います」
「わかった」
スキーナは辞退しなかった。
今は危機に瀕している、余計な遠慮は戦機を逃すだけだ。
「魔法使いたち!」
スキーナは城壁の上に立ち、
両脇の櫓を指さした。
「有利な陣地を確保し、城下の魔物を抑え込め!
集団の魔物、大型の魔物から優先的に攻撃せよ!」
「土系魔法で、城の外の地面に溝を作り、魔物の進行を阻め!」
「冒険者たちは五人一組に分かれろ!
城壁のスペースには限りがある。
常に補填の態勢を整え、
魔物が壁を突破した瞬間、即座に斬れ!
城壁の上に足場を与えるな!」
彼らがそれぞれ着くのを見て、
スキーナの内心は実は不安だった。
軍事指揮の経験など皆無で、
前世の戦略ゲームの知識しかない。
魔物は待ってはくれない。
攻撃が始まった。
だが、その様子を見て、彼女はほっとした。
魔物の群れの中には、
知能の高い者が指揮してはいるが、
ただ大挙して押し寄せるだけで、
消耗しきってまた溜まる、戦術など皆無だった。
「まあ、大した圧力はなさそうね」
スキーナは手を上げた。
「全員、待機!」
魔物が間近まで迫った瞬間、彼女は叫んだ。
「弓兵、一斉射撃!」
矢が一面に舞い上がり、無数の刺すような音を立てた。
魔物の数はあまりに密集し、
ほぼ矢無虚発、次々となぎ倒された。
しかも彼らは無準備ではない。
巨大な弩砲から弩矢が貫き、
一発で串刺しになり、
最前線の魔物たちは地面に打ち付けられ、痙攣した。
投石機が回転し、
巨石が唸りを上げて魔物の群れに叩きつかる。
スキーナは興奮して声を上げた。
火炎、氷槍、風刃が入り乱れ、
ダメージは大きくなくとも、
思いがけぬ効果を発揮した。
だがスキーナは予想していなかった。
一部の魔物が、鉤のような鋭い爪で
壁に食い込ませ、よじ登ってくるとは。
梯子などなく、そのまま戦士たちと戦い始め、
血しぶきが飛び、
城壁の上も下も、やがて屍が積もっていった。
それを見てスキーナはわくわくした。
ついに、自分の出番が来た。
聖なる炎をまとい、一太刀で一匹、
闘いながら彼女は思った。
セリアに、今の自分の勇姿を見せたい――と。
城壁の上の魔物は減り続け、
誰もがほっとした。
情勢は、まだ制御下にある。
どうか、暗くなる前に終わってほしい。
人間の夜視力は、魔物には及ばない。
スキーナは不安になった。
それに、休む暇もない。
彼女は夜更かしが嫌いだ。
だが、願うな、その逆が訪れる。
空は一瞬にして暗くなった。
まるで巨大な黒布が、太陽を覆い隠したかのように。
誰もが思わず、空を見上げた。
空には、いつの間にか
狞猛な飛行魔物が覆い尽くしていた。
鷲の体に悪魔の頭、鉄の嘴は鉤のように尖り、
鷲と魔獣が融合した姿。
一双一双、血赤く輝く瞳に、体が凍りついた。
刹那、金切り声が空を引き裂き、
魔鷲たちは一斉に急降下してきた。
まるで、幾千年も受け継がれた狩りの本能のままに。
捕まった者は抵抗する術もなく、
ただ絶望のまま手足をばたつかせるだけ。
堅固だった防衛線に、亀裂が走った。
「空だ!飛ぶ魔物だ――!」
「逃げろ!」
弓は慌てて仰ぎ射ちをするが、
魔鷲の速度は速く、風を切るように動き、
城壁の上は大混乱に陥った。
「急いで櫓の中へ隠れろ!」
スキーナは即座に命令した。
対空能力は極端に弱い。
ここに残って反撃すれば、的になるだけ。
生きた力を温存することが最優先だ。
「勇者様は?」
一人の兵士が、スキーナが動かないのを見て焦って問うた。
剣光が一闪。
一羽の魔鷲が羽ばたきながら墜ちた。
「誰かが、お前たちを庇わねばならない」
彼女は、みんなが虐殺されるのを見ていられない。
彼女が呼び寄せたのだから、
危機の時に先に逃れるわけにはいかない。
それからスキーナの影は城壁を駆け巡り、
たびたび剣を振って飛行魔物を叩き落とし、
兵士たちと冒険者たちに時間を稼いだ。
だが数があまりに多く、
さらなる魔物が城壁に登り始めた。
彼女はためらうことなく、
咆哮に向かって飛び込んでいった。
力尽きるまで。
だが魔物は増える一方。
この様子を見て、スキーナは完全に絶望した。
「イグルスタの町は、もうだめだ!」
少女は激しく息を切らし、絶望の叫びを上げた。
周囲から悲鳴が絶えない。
彼女は激しく自分を責めた。
金だ、名誉だ、なんの意味がある?
地面の砂埃にすら及ばない。
もっと早く町民に知らせ、
逃げさせていれば、こんなことにはならなかったのに。
その瞬間、
一羽の特に巨体な魔鷲が、
彼女が他の魔物を薙ぎ払っている隙に、
背後から忍び寄り、急降下して彼女を捕まえた。
「ザリ――」
血が一瞬にして神父服を染め抜き、
肩に刺みたいな冷たさが走った。
彼女は反射的に圣剑を振り上げ、
魔鷲の爪を斬ろうとした。
だがその力は強烈で、
彼女を捕まえたまま舞い上がった。
どれだけもがいても、微動だにしない。
数本の矢が櫓から放たれたが、
すべて魔鷲によって防がれた。
「出てくるな!」
スキーナは痛みに顔を歪めながらも、
注意を促し、
そして剣を放り投げ、城壁の地面にしっかりと刺した。
不気味なことに、
この魔鷲がスキーナを捕まえた途端、
他の魔鷲たちは一斉に攻撃を止めた。
全身の重さが肩の筋肉にかかり、
激痛と痺れが走る。
圣剑が己に還り、
己が剣に還ったのではない――
それを感じ、彼女は一層絶望した。
さっきの距離から推測するに、
人と剣は五十メートル離れると自動的に帰還する。
「ふん、いい心算だ」
スキーナは額に汗をにじませ、
即座に覚悟を決めた。
体が光を放ち、
まばゆい白光となって、
一本の圣剑に変じた。
支えを失った圣剑は、
空からまっすぐに落ちていく。
魔鷲はそれを見て、
鋭く一声叫び、
ただちに鉤爪をたくみ、
落下する剣を追いかけるように急降下した。
スキーナはますます近づいてくる醜い鳥を眺め、
思わず白目をむいた。
「おい兄ちゃん、俺、もう剣になっちゃったぞ?
それでも興味あるの?」
間もなく、鋭い嘴が
落下する彼女をしっかりとくわえ、
翼をはばたかせ、
遠くの空へと飛び去った。
上から下を眺めて、
スキーナは改めてドルイド山脈の広さを知った。
果てしなく続く山々、
深い谷、川、滝……
だからこんなに多くの魔物が集まれるのだと。
どれだけ飛んだだろう。
魔鷲はついに速度を緩め、
翼を一振りして、
一つの城の窓台にゆっくりと降り立った。
「カチャ――!」
圣剑は冷たい黒石の床に叩きつけられ、
澄んだ音が寂しい城に弾け、
広い廊下を伝って響いていった。
「獣は獣だわ。宝物を雑に扱うなんて」
スキーナはそう言いながらも、
人型に戻る勇気はなかった。
あいつはまだそこにいる。
しかも、彼女は負傷している。




