私は乗ります
「パンが硬かったら焼けば柔らかくなるし、食料が足りなければ腐った木の中の虫を探せばいい。タンパク質は牛肉の六倍だ。
牛肉は生きたまま殺した新鮮なものが一番で、肉がまだピクピク動いているくらいがいい。それに野菜とパンを合わせれば、それはハンバーガーさ……」
「スキーナ、どうしたの?怖がらないで。絶対に帰れるから」
ノヴァはスキーナの肩を揺らし、心配そうな顔をしていた。
二人はこの曲がりくねった土の道を長い間歩き続けていた。終わりの見えない道は体を疲れさせるだけでなく、心まで削り取る。どうやらスキーナは気が変になってしまったらしい。
少女の独り言はまだ続いていた。ノヴァはひと突きの平手打ちで彼女を醒まそうか迷った。こんな様子のスキーナを連れて帰ったら、セリアはきっと自分を殺すだろう。
…… って。
スキーナの目は虚ろだ。朝から魔物を倒して一日中疲れ果て、午後からまた長距離を歩いたせいで、体が勝手に脳へのエネルギー供給を抑えてしまったのだ。
「少し休もうよ!」
ノヴァはスキーナを支え、道端の柔らかい芝生に腰を下ろそうとした。火でも焚けば、これから訪れる長い夜を乗り切れるかもしれない。
彼女がスキーナを支えて座らせようとした瞬間。
突然、スキーナはスイッチが入ったかのように表情を引き締め、指を唇に当て、ノヴァに「シッ」と静かにさせた。
「聞いて!」
ノヴァは急いで耳を澄ます。地面から微かだがはっきりとした振動が伝わってくる。
車輪が路面を碾く音だ。
「来た!」
やがて道の突き当たりから、三輌の馬車が次々と現れた。先頭の馬車は濃い赤で塗られ、縁には銅の縁取りが施されており、一見して並の品ではないことが分かった。
「待て、何するの?」
ノヴァはスキーナが自分のスカートに切れ目を入れようとするのを慌てて止めた。
「何が分かるの。こんなに暗いの、こうしなきゃ馬丁の目に留まらないでしょ」
「じゃあ自分のを切れば?」
二人が言い争っている間に、馬車はすぐそこまで来ていた。スキーナは慌てて声を上げた。
「止まってください! 道に迷ってしまって……」
声を聞き、馬丁は手綱を締めた。馬が一声嘶くと、車の暖簾が内側からめくられた。
現れたのは、やや抜け目ない顔をした男だった。
彼は彼女たちを数秒間眺め回し、視線は特にスキーナに長く止まり、唇にはかすかな笑みが浮かんだ。
「幸運だな、今日こんなところで二人の嬢ちゃんに出会えるなんて。早く乗りなさい」
スキーナは男に会釈して礼を述べ、ノヴァの方を振り返った。まるで「見て、私のやり方、効いたでしょ」と言わんばかりに。
車内は豪華に調えられ、柔らかい絨毯が敷かれ、菓子と茶が用意されていた。
広さは十分あったが、スキーナは困った。男が真ん中に座り、足を大きく開いているため、端には一人分しか座れない。思わず眉をひそめ、注意しようとした。
だが男は気づかず、目の前の美少女を見つめて呆然としていた。まるで彼女を瞳に焼きつけようとするように。
満足げに、彼は舌を唇にはわせた。真っ白な長い髪は細い首とよく似合い、その顔は彼が見たどの貴族の嬢よりも繊細で、まるで神様が彫り上げた芸術品だ。息を飲むほどの美しさだった。
「ねえ、足をもう少し寄せてくれない?」ノヴァがスキーナの代わりに声を上げた。
それなりに大きな声だった。男は夢から引き戻されたように一瞬硬直し、それから意味ありげに笑った。
「すまない、すまない」と口では謝るが、足は形だけ少し内側に寄せただけで、相変わらず大半のスペースを占めていた。
スキーナの指先がかすかに丸まった。だが目の底には凍てつくような冷気が宿っていた。
車内の蝋燭の火が揺れ、暖かい黄色い光が彼女の顔を照らす。輪郭は柔らかいのに、どこか冷たく見える。彼女は黙ったままゆっくりと目を上げ、男と見つめ合った。
その瞬間、彼は急に背中がぞっとするのを感じた。
「私の仲間に同じことを二度言わせたくないの」少女の声は穏やかだった。「足をきちんと閉じて」
空気が何かに押しつぶされたように重くなった。
男は慌てて笑い、足を閉じて横に寄り、しっかりとした席を空けた。
ノヴァは鼻で小さく嗤い、先に端の席に座り込み、隣の空いた場所を叩いた。「スキーナ、こっちにおいで」
スキーナは鼻をひくんだ。男の体から強い香料の臭いと酒臭さが混ざって漂い、実に不快だった。
だが彼女が座った途端、男の視線がまた思わずこちらを向いた。
スカートの丈は長くなく、彼女の太ももが覗く。男には、スキーナは身長は低いものの、その他はすべてが最高級に見えた。特に細い腰、蝋燭の光で白く輝く美しい脚は、よだれが出そうになるほどだった。
あからさまな視線にノヴァは歯を食いしばって怒り、再び声を上げようとした。だがスキーナが先に動いた。
「様、私の脚、綺麗ですか?」スキーナの声には嫌悪が滲んでいた。前世の自分は明るく陽気な男だったのに、獲物のように眺められるのは本当に不快だ。
同時に彼女はスカートを直し、下着が見えないように足を組んだ。
「綺麗だ、綺麗だ。すべすべで柔らかそうだ。触ったらどんな感触だろう」
「暇なら、自分のを触りなさい」
この男の馬車に乗っていなければ、彼女はとっくにこいつを木に括りつけていただろう。こんな遠回しな言い方になるなんて。
だがこんな言葉でさえ、この貴族青年には嫌がっているようで甘えているように聞こえた。ある種の衝動が脳に回ると理性は薄れる。特にスキーナが足を組んだ時に見える豊かな曲線が視界を占め、彼は喉を鳴らし、抑えきれない欲求にかられた。
こ、これは俺のタイプだ――
彼の手が少女の太ももに触れようとした瞬間、ノヴァの指先から一缕の火が灯った。薄暗い車内で異彩を放っている。
「車内は木造が多いの。どうか行儀よくしていただきたいわね」
男の顔色が一瞬凍った。
火の光がノヴァの瞳に映り、それは警告のようだった。
「気性の激しい嬢ちゃんだな」彼は気まずく笑った。
その後は静まり返った。スキーナはもうこいつには何も思うところはないだろう、と考えた。そうでなければ彼女は一睡もできない。
だがちょうどその時、馬車が突然ガクンと揺れた。
車の奥から微かな金属同士の衝突音が聞こえた。ノヴァは一瞬硬直し、思わず後ろを向いた。そこには暖簾があり、揺れた衝撃で端がめくれ、中の鉄格子の一部が見えた。
彼女は首をかしげ、眉根に疑問を宿し、そっと暖簾をめくった。
中は鉄の檻だった。
犬を入れるような小さな檻で、その中に少女がうずくまっている。
緑色の髪が肩に落ち、肌は透明に近い。彼女は目を閉じ、鉄格子に寄りかかっていた。囚われの身とは思えないほど穏やかな表情で、まるで眠りについているだけだった。
「これは何?」ノヴァは立ち上がり、声が冷たくなった。
「エルフだ」男はまるで当たり前のことを聞かれたかのように軽い口調で答えた。「都に運ぶんだ。珍しい品だから、高く売れる」
スキーナはゆっくりと振り返った。「売る?」
「当然だ」男は肩をすくめた。「貴族、魔法使い、娼館…… どこも争って欲しがる。品不足で、値段のつけようもないほどだ」
彼はその言葉を少し得意げに話した。
だがその言葉はスキーナの耳には鋭く刺さった。彼女の視線が沈んでいく。かつて自分も、人にモノのように扱われたことがあった。
「知っているかしら?」彼女はゆっくりと口を開いた。「創造主は、すべての者に奪うことのできない権利を与えてくださったの。生きる権利、自由、そして自らの運命を追い求める権利だわ」
その言葉はまるで晴天の霹靂だった。男はその場で呆然となった。




