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聖剣になってしまった少女は、勇者になれますか?  作者: 風間 蒼月


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少女たちの街歩き

「まじで、ベッド一枚だけなの?」

 宿に着いたノヴァは口を覆い、嫌な顔を隠そうともしなかった。

 道中、ずっと期待していたのに。


「だから、みじめな家だって言ってるだろ?

 お前が住む場所なんてないって言うんじゃなきゃ、こんなところに連れてきてやらなかったんだよ!」

 スキーナは鼻で笑った。

 彼女たちも最初は知らなかった。

 こんな辺境の町の宿なのに、こんなに家賃が高いなんて。

 仕方なく一部屋しか借りていないのだ。

 幸い、リビングはあった。

「お前、ソファで寝なさい!」

「いやだ!」


 二人の言い争いを見て、セリアは困り果て、仲介役に回った。

「あの…… じゃあ、私がソファで寝ましょうか?」

「いいよ!」

「だめ!」


 意見は真っ向から対立し、またしても刺し違える雰囲気になった。

 最後には仕方ない。

 ソファは木製だし、セリアは細い女の子に寝させるわけにもいかない。

 結局、みんなで寄り添って寝ることになった。


 元々大きくないベッドに三人は窮屈に横たわり、

 しかもノヴァはいびきまでかいている。

「こんなやつ、明日には理由をつけて追い出して、

 セリアと二人きりになろう」

 スキーナは心の中でそう囁いていた。


 高らかな鶏の鳴き声と共に、スキーナは目を覚ました。

 あくびをしながら、目の下にはくまがはっきりと現れている。

 昨日はよく眠れなかった証拠だ。


 体を起こすと、だるく、目もかわいている。

 ベッドを見れば、ノヴァは気持ちよさそうに眠りこけており、

 白い脚で布団を挟み込んでいた。

「この野郎、昨日寒かったのはお前のせいか」


 彼女をまたいで部屋を出ると、キッチンからベーコンの香りが漂ってくる。

 セリアがエプロンをつけて料理を作っており、

 顔はのどかで穏やかだった。

「セリア、後で、どこの鍛冶屋が鎧を作ってくれるか探しに行こう?」

「ん?いいわ。朝食、できたよ」


 ノヴァを起こそうとしたら、彼女はもう起きていた。

 ぼんやりとした目でテーブルに座った。

「先に歯を磨きなさい!」

 スキーナに叱られ、ノヴァはぺろりと舌を出してトイレに入った。


 そのスラリとした脚が目の前を行き交うのを見て、スキーナは頬を赤らめた。

「ノヴァ、寝るときは上着だけじゃだめだぞ!」


 最悪な朝食がやっと終わり、二人は街に出た。

 ここはとてもにぎやかだ。


 狼族の依頼のため、彼女は気合を入れていた。

 とにかく安く済ませたい。

 品質は、そこまでこだわらなくてもいい。


 スキーナもセリアも、珍しそうにあちこちを見回した。

 だが鍛冶屋は街の突き当たりにあり、探すのに苦労した。


「カーン、カーン」という槌の音が聞こえてくる。

 二人は扉を開けて入ると、熱気と金属のにおいが押し寄せた。


 鍛冶屋の主人は額の汗を拭い、顔を上げて彼女たちを眺めた。

 二人の牧師だ。

 なぜ牧師がここに?

 もしかして恋人のために剣を買いに?

 そう疑わずにはいられなかった。

「お客様、何をご所望ですか?

 武器、防具、修理、何でもどうぞ」

「狼の鎧を、特注で作りたい」


 主人は一瞬、眉をひそめた。

「狼の鎧ですか…… 人間とは形が違いますから、少し難しいです。

 うちでは、普通は請け負わないんですが……」


「カチャカチャ」と、お金が流れるように出される音。

 主人の言葉は、その瞬間、ぴたりと止まった。


「難しいってのは、解決できるもんだよ。

 金が欲しいだけだろ?

 もちろん…… 無理強いはしないけど」

 そう言ってスキーナはお金を掴み、立ち去るような姿勢を見せた。


 鍛冶屋の主人の目は一瞬で大きくなり、

 手を止めることもできず、慌ててスキーナを引き止めた。

「作れます!作れます!

 完全に、作れます!

 お客様、ご安心ください。

 狼の鎧どころか、熊でも虎でも、何でも作ります!

 今、すぐに図面を描きます!」


 この様子を見て、スキーナは心の中で喜んだ。

 だが、表では平然としたまま。

「じゃあ、一式、いくらくらいかかるの?」

「板鎧にするか、鎖帷子にするかで変わります。

 板鎧は防御が一番、鎖帷子は動きやすさが売りです……」

「どっちが安い?」

「…… 鎖帷子です」

「いくら?」


 鍛冶屋の主人はにっこり笑い、煙で黄ばんだ歯を見せて、

 四本指を挙げた。

 考え直して三本に変えた。


 スキーナは余計なことは言わず、金貨九枚を並べた。

「まず三套、作ってくれ。

 来週、受け取りに来る」


 こんなに気前のいい客は初めてだ。

 しかも、この様子だと三套以上の予定だ。

 大きな仕事!大きな仕事だ!

「かしこまりました!

 この仕事、家宝級の技で作り上げます!」


 異世界の鍛冶技術がどんなものかは分からない。

 だが、まあ、そこそこの出来栄えだろう。

 そんなことは、今のスキーナには関係ない。

 彼女は今、セリアを連れて街を歩いている。

 二人の関係を深める、最高のチャンスなのだ。


「セリア、気に入ったものがあったら言って。

 買ってあげるから」

「まだ薬や生肉を買わなきゃいけないし、

 お金を残しておかなきゃ……」

 セリアは頭を振った。

「そんなもの、鎧ほど高くないよ」

 人通りの多い市場で、スキーナは可愛らしい装飾品を見つけ、手に取って見せた。


 細くて清らかな銀の鎖。

 丸くて優しい小さな玉が揺れている。

 陽の光を受けて、さりげなく輝いている。

「君に、すごく似合う」


 セリアの頬はほのかに熱くなり、

 熱意を込めて売りつけてくる店主を見ることもできず、

 スキーナの耳元に小さく囁いた。

「これ、きっと、高いと思うな……」


 はっきり断らなかった。

 つまり、気に入ったってことだ。


 彼女はすぐに店主にお金を払った。

 セリアがまだ何か言おうとする前に、

 スキーナは先回りして、セリアの首の後ろに手を回し、鎖をつけてあげた。


 銀の鎖は鎖骨の上にそっと沿い、

 小さな玉が胸元に揺れている。

 元々柔らかい肌が、一層白く美しく見える。

「すごく、綺麗だよ」

 スキーナは穏やかに笑い、真剣な声で言った。

「まるで、君のために作られたみたい」


 セリアの耳は「っ」と真っ赤になり、

 指でそっと鎖に触れた。

 心拍数が異常に速くなり、声は蚊の鳴き声のように細くなった。

「そ、そんなに綺麗、かな……」


 ふん。

 女の子で、キラキラしたものが好きじゃない子なんているわけがない。

 スキーナは心の中で嬉しくなった。

 牧師さんって、本当に純粋だ。

 目には、あふれそうな感動が浮かんでいる。


 人目を避けて、もう少し歩こうとした――

 すると、目が鋭いスキーナは、

 ボロボロのマントを着た少女がキョロキョロしているのを見つけた。

 まずい。

「セリア、早く行こう!」

「ん?」


 二人が数歩走る前に、

 後ろから、はっきりとした声が響いた。

「スキーナ!セリア!」


 ちくしょう、見つかった。


 ノヴァが、すばしこい身のこなしで人混みを縫って二人の元に駆け寄った。

「朝食食べたら、もういなかったから、探してたの!」


 このバカタレ、食べたら黙って寝てろよ。

「ノヴァも来たなら、一緒に行こう!」

 セリアは深く考えず、新しい仲間を笑顔で受け入れた。


「違うよ。依頼を受けに行くんじゃないの?」

 ノヴァは顎に指を当てた。

 前のチームでは、入った翌日には必ず任務に行ったから。

「依頼は、まだ早いんじゃない?」

「依頼は、もちろん行くよ。だけどね…… へへっ」


 スキーナは、何だか不穏な笑いを浮かべた。

 この子を試してやる。

「チームって、甘いもんじゃない」って、分からせてやる。

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