新しい仲間? それとも、安い労働力?
セリアは今、目に涙をため、頬をほんのりと染めて、
さらに、いたずらな髪の毛を少しだけ口に含んでいる。
こんなに可愛らしく、守ってあげたくなるような姿は、
思わず、可愛いものを壊したくなるような衝動を掻き立てる。
少女は、もうこみ上げる感情を抑えられなくなり、
スキーナに抱きついた。指先が、いたずらに動く。
どうせ、もう気持ちを伝えてしまったのだから、
隠す必要などない。
「な、何するの?」
セリアの声には、慌てた様子と、少しの怒りが混じっている。
「うぃゃ…… 痛い」
女の子の脇腹は元々敏感な場所だ。
触れられた瞬間、スキーナは彼女の体が硬くなるのを感じ取った。
セリアは反射的にもがく。
だが、スキーナは放すわけがない。
欲張りな笑みを浮かべ、さらにぴったりと身を寄せる。
少女の肌は骨もないように柔らかく、
さらに、心地よい体の香りが漂って、
スキーナは少しふわふわとした気分になる。
悪い手は服の中へと滑り込み、
柔らかい肌に触れた。
「うぅ……」
こんなにいたぶられて、セリアの瞳には艶めかしい色が宿り、
体全体がぐったりと力なく崩れ落ちる。
声は蚊の泣き声のように細く、囁くように言った。
「や、やめて…… もう、いたずらしないで……」
こんな絶好のタイミング、台無しになんてできるはずがない。
スキーナは、ふっくらとした頬をつまんで、
わざと唇にすり寄せ、からまった髪の毛を抜き取った。
次第にうっとりとしていく可愛らしい顔を見て、
全身が熱くなるのを感じた。
今にも唇を重ねようとした――
その時、下の階から足音が聞こえてきた。
「タイミング悪すぎだろ」
仕方がない。この町は大して広くない。
明日になったら、町中に自分の噂が広まるなんて、絶対に嫌だ。
だが、腕の中の佳人の、
茹で卵のように白く柔らかい肌、
濡れたような瞳――
こんなに可愛らしい姿を前にして、
やっぱり我慢できなかった。
手のひらで、少女の太ももをぐっと強く揉みしだく。
まるで、利息を払わせるように。
「運が良かったね。今回は許してあげる」
二階に上がってきた婦人は、二人とすれ違っていく。
まさか、この二人の牧師が、戸外で危険な状況になりかけていたとは、
夢にも思わないだろう。
スキーナはセリアの手を引いて、店の外に出た。
空はもう夕暮れ時だ。
外の清々しい空気が、
セリアのぼんやりとした頭を、少しだけ覚ましてくれた。
それでも、頬の紅は、まだ消えていない。
「あなた…… ス、スキーナさん……」
「言うなよ。言い争うなら、お前も共犯だぜ」
スキーナは横を向いて彼女を見る。
目には、やり遂げた笑いが宿っている。
指先で、セリアの手のひらを軽くつまんだ。
「もし怒るなら、手加減しないぞ」
その言葉を聞いて、セリアはぷっと頬を膨らませて横を向いた。
この世に、こんなに意地悪な人がいるなんて。
だが、スキーナに手を引かれたまま、抵抗しようとはしない。
通りには、冒険者たちがだんだんと増えてきた。
二三人一組のチームが道端で集まり、
武器を点検する者、任務の振り返りをする者、
あるいは、戦利品の分配か、連携のミスかで言い争う者もいる。
その時、突然、泣きじゃくる声が、二人の耳に飛び込んできた。
「お、お願いします…… 今回は本当に違うんです!
私、火の玉術を習得したんです!」
スキーナは足を止め、思わず声のする方を向いた。
少し離れた街角で、一人の少女が、
冒険者チームの一員の袖を、必死に掴んでいる。
彼女は、明らかに体に合わない魔法使いの服を着ていた。
袖口も裾も、ぼろぼろに手直しされていて、
古着を拾ってきたように見える。
姿は…… 痩せ細り、みじめで、それでも強がっている。
「お前はもう要らない」
チームの一人が、いらだたしそうに手を振り払った。
「まともな魔法も使えないくせに、
一緒に街外れの任務に行きたいだと?」
「私、遠距離から援護できます!
戦利品も欲しくないです。
チャンスをください。絶対に期待に応えます!」
少女は、自分自身を土の塵まで貶めて、必死に願い求めた。
「前回も、お前そう言ったよ」
別の男が冷やかしに笑った。
「結果、大事な場面でヘマをしたじゃないか」
その言葉で、周りからは、ざわめきと笑い声が上がる。
少女の顔は、一気に真っ赤になり、
唇をぶるぶると震わせた。
それでも、後ろには下がらなかった。
「私…… もう、改善しました。
今回は、きちんと制御できます……」
返事をくれたのは、背を向けて去っていく、数人の姿だけ。
彼らは通りの先へ消え、
少女だけが、その場に取り残された。
ざわめきは過ぎ去り、周りの人たちは、
興味を失って散っていった。
彼女は、ついに耐えられなくなり、
力なくしゃがみ込んだ。
肩をびくびくと震わせて泣き、
これまで受けてきた屈辱を、一気に泣き出そうとしているようだった。
スキーナは、その場に立ったまま、しばらく見ていた。
「…… なんて、残酷な世界なんだ」
「魔法使いは、珍しい存在じゃないんです」
セリアはそっと頷き、スキーナに気づかれないように、少しだけ寄り添った。
「長期的に安定したチームに所属せず、
実績もない下級魔法使いは、なかなか信頼してもらえません」
その言葉を聞いて、スキーナは理解した。
この少女は、魔法が上手に使えず、
一度ミスをしたせいで、どのチームからも断られてしまったのだ。
これは、ある意味、当たり前のことだ。
スキーナは、息を切らして泣く少女を見て、頭を振った。
異世界に、涙は通用しない。
イサの町を逃げ出した時から、スキーナは信じていた。
力こそが、生きていくための土台なのだと。
見るのをやめようと、視線を戻そうとした――
その瞬間、少女は、何かに気づいたように、突然、顔を上げた。
真っ赤に腫れた瞳が、スキーナの視線と、ばっちりと合った。
まるで、蛇に体を巻きつけられたような、執着の強さ。
スキーナは、この相手が手ごわいことを悟り、
慌てて振り返り、厄介ごとから逃げようとした。
「待ってください!」
こんなに早く?
一瞬の隙に、少女は、悲しそうな顔でスキーナの服にしがみついてきた。
「あなたたち、メンバーが足りないんでしょ?!」
「俺たちは…… 定員に達してる」
「しかも、あなたたち牧師さんでしょ?!」
少女は、二人の反応を待つ暇も与えず、
牧師服をじろじろと見ながら、まるで最後の藁をすがるように言った。
「牧師さん二人のチームなら、
きっと、きっと火力が足りないはずです!」
セリアは、思わずスキーナの側に身を寄せた。
「私、私たちはただ……」
「火力は、私が担当します!」
少女は、急いでアピールした。
「今は、下級の火の玉しか使えません。
でも、でも頑張ります!
危ないことにも、怯みません!」
…… この展開、おかしいぞ。
スキーナは、彼女の強い意志に感心しつつ、
ゆっくりと、目の前の少女を観察した。
年齢はまだ若く、黒髪は少し乱れ、
毛羽立った髪ゴムで、適当に後ろに束ねている。
それでも、数本の髪が頬に落ちている。
髪色は、けたたましくはないが、清潔だ。
そして、同じ黒い瞳には、強い一途さが宿っている。
「はぁ――」
断りたい気持ちもあった。
だって、俺たちはボロボロの貧乏暮らしだ。
任務もまだ慣れていないのに、メンバーを増やすなんて、無謀すぎる。
だが……
もし、きちんと身なりを整えれば、
きっと、美人になるだろう。
「先に言っておく。俺たちのチーム、金なんてほとんどない」
これは、もう、諦めてくれ、という暗黙の合図だ。
「大、大丈夫です!」
少女は、希望が見えたと思い、嬉しそうに答えた。
「報酬なんて、要りません!本当に!」
スキーナは、きょとんとした。
「…… 何、言ってる?」
「食事だけ出していただければ!」
彼女の目は、輝きを宿している。
「雑用もします。練習相手もします。
床について、暖房代わりにもなります!」
どうやら、魔法に、心を奪われている少女らしい。
しかも、食事だけで雇えるなんて、
こんな安い働き手、どこにいるだろう。
だが、目に燃えるような情熱を見て、
やっぱり、冷や水を浴びせておかなくては。
「落ち着いて」
スキーナは、優しく笑った。
「俺たち、冒険者に登録したばかりで、
別に、強いチームじゃない」
「大丈夫です!」
少女は、すぐに頷いた。
「私も、強くないです!」
これを、堂々と言われてしまい、
逆に、スキーナは言葉に詰まった。
「…… それ、良い点じゃないだろ」
「違うんですか?」
「…… ち」
スキーナはため息をつき、
隣にいる相棒の方を向いた。
「お前は、どう思う?」
突然指名されて、セリアはどぎまぎした。
こんな、メンバー加入の重大なことに、
自分の意見を聞いてもらえるなんて、思ってもみなかった。
彼女は、少女を見て、スキーナを見て、
小さな声で言った。
「彼女…… 本当に、私たちに入りたくて仕方ないみたいです」
「それに、一緒に行動するだけなら……」
少女は、すぐにチャンスを掴んだ。
きちんと立ち、敬礼をした。
「ノヴァと申します。
絶対に、指示に従います!」




