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聖剣になってしまった少女は、勇者になれますか?  作者: 風間 蒼月


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22/43

新しい仲間? それとも、安い労働力?

 セリアは今、目に涙をため、頬をほんのりと染めて、

 さらに、いたずらな髪の毛を少しだけ口に含んでいる。

 こんなに可愛らしく、守ってあげたくなるような姿は、

 思わず、可愛いものを壊したくなるような衝動を掻き立てる。


 少女は、もうこみ上げる感情を抑えられなくなり、

 スキーナに抱きついた。指先が、いたずらに動く。

 どうせ、もう気持ちを伝えてしまったのだから、

 隠す必要などない。


「な、何するの?」

 セリアの声には、慌てた様子と、少しの怒りが混じっている。

「うぃゃ…… 痛い」

 女の子の脇腹は元々敏感な場所だ。

 触れられた瞬間、スキーナは彼女の体が硬くなるのを感じ取った。


 セリアは反射的にもがく。

 だが、スキーナは放すわけがない。

 欲張りな笑みを浮かべ、さらにぴったりと身を寄せる。

 少女の肌は骨もないように柔らかく、

 さらに、心地よい体の香りが漂って、

 スキーナは少しふわふわとした気分になる。

 悪い手は服の中へと滑り込み、

 柔らかい肌に触れた。


「うぅ……」

 こんなにいたぶられて、セリアの瞳には艶めかしい色が宿り、

 体全体がぐったりと力なく崩れ落ちる。

 声は蚊の泣き声のように細く、囁くように言った。

「や、やめて…… もう、いたずらしないで……」


 こんな絶好のタイミング、台無しになんてできるはずがない。

 スキーナは、ふっくらとした頬をつまんで、

 わざと唇にすり寄せ、からまった髪の毛を抜き取った。

 次第にうっとりとしていく可愛らしい顔を見て、

 全身が熱くなるのを感じた。

 今にも唇を重ねようとした――


 その時、下の階から足音が聞こえてきた。

「タイミング悪すぎだろ」

 仕方がない。この町は大して広くない。

 明日になったら、町中に自分の噂が広まるなんて、絶対に嫌だ。


 だが、腕の中の佳人の、

 茹で卵のように白く柔らかい肌、

 濡れたような瞳――

 こんなに可愛らしい姿を前にして、

 やっぱり我慢できなかった。

 手のひらで、少女の太ももをぐっと強く揉みしだく。

 まるで、利息を払わせるように。

「運が良かったね。今回は許してあげる」


 二階に上がってきた婦人は、二人とすれ違っていく。

 まさか、この二人の牧師が、戸外で危険な状況になりかけていたとは、

 夢にも思わないだろう。


 スキーナはセリアの手を引いて、店の外に出た。

 空はもう夕暮れ時だ。

 外の清々しい空気が、

 セリアのぼんやりとした頭を、少しだけ覚ましてくれた。

 それでも、頬の紅は、まだ消えていない。


「あなた…… ス、スキーナさん……」

「言うなよ。言い争うなら、お前も共犯だぜ」

 スキーナは横を向いて彼女を見る。

 目には、やり遂げた笑いが宿っている。

 指先で、セリアの手のひらを軽くつまんだ。

「もし怒るなら、手加減しないぞ」


 その言葉を聞いて、セリアはぷっと頬を膨らませて横を向いた。

 この世に、こんなに意地悪な人がいるなんて。

 だが、スキーナに手を引かれたまま、抵抗しようとはしない。


 通りには、冒険者たちがだんだんと増えてきた。

 二三人一組のチームが道端で集まり、

 武器を点検する者、任務の振り返りをする者、

 あるいは、戦利品の分配か、連携のミスかで言い争う者もいる。


 その時、突然、泣きじゃくる声が、二人の耳に飛び込んできた。

「お、お願いします…… 今回は本当に違うんです!

 私、火の玉術を習得したんです!」


 スキーナは足を止め、思わず声のする方を向いた。

 少し離れた街角で、一人の少女が、

 冒険者チームの一員の袖を、必死に掴んでいる。


 彼女は、明らかに体に合わない魔法使いの服を着ていた。

 袖口も裾も、ぼろぼろに手直しされていて、

 古着を拾ってきたように見える。

 姿は…… 痩せ細り、みじめで、それでも強がっている。


「お前はもう要らない」

 チームの一人が、いらだたしそうに手を振り払った。

「まともな魔法も使えないくせに、

 一緒に街外れの任務に行きたいだと?」


「私、遠距離から援護できます!

 戦利品も欲しくないです。

 チャンスをください。絶対に期待に応えます!」

 少女は、自分自身を土の塵まで貶めて、必死に願い求めた。


「前回も、お前そう言ったよ」

 別の男が冷やかしに笑った。

「結果、大事な場面でヘマをしたじゃないか」


 その言葉で、周りからは、ざわめきと笑い声が上がる。

 少女の顔は、一気に真っ赤になり、

 唇をぶるぶると震わせた。

 それでも、後ろには下がらなかった。

「私…… もう、改善しました。

 今回は、きちんと制御できます……」


 返事をくれたのは、背を向けて去っていく、数人の姿だけ。

 彼らは通りの先へ消え、

 少女だけが、その場に取り残された。


 ざわめきは過ぎ去り、周りの人たちは、

 興味を失って散っていった。

 彼女は、ついに耐えられなくなり、

 力なくしゃがみ込んだ。

 肩をびくびくと震わせて泣き、

 これまで受けてきた屈辱を、一気に泣き出そうとしているようだった。


 スキーナは、その場に立ったまま、しばらく見ていた。

「…… なんて、残酷な世界なんだ」


「魔法使いは、珍しい存在じゃないんです」

 セリアはそっと頷き、スキーナに気づかれないように、少しだけ寄り添った。

「長期的に安定したチームに所属せず、

 実績もない下級魔法使いは、なかなか信頼してもらえません」


 その言葉を聞いて、スキーナは理解した。

 この少女は、魔法が上手に使えず、

 一度ミスをしたせいで、どのチームからも断られてしまったのだ。


 これは、ある意味、当たり前のことだ。

 スキーナは、息を切らして泣く少女を見て、頭を振った。

 異世界に、涙は通用しない。

 イサの町を逃げ出した時から、スキーナは信じていた。

 力こそが、生きていくための土台なのだと。


 見るのをやめようと、視線を戻そうとした――

 その瞬間、少女は、何かに気づいたように、突然、顔を上げた。

 真っ赤に腫れた瞳が、スキーナの視線と、ばっちりと合った。

 まるで、蛇に体を巻きつけられたような、執着の強さ。

 スキーナは、この相手が手ごわいことを悟り、

 慌てて振り返り、厄介ごとから逃げようとした。


「待ってください!」

 こんなに早く?

 一瞬の隙に、少女は、悲しそうな顔でスキーナの服にしがみついてきた。


「あなたたち、メンバーが足りないんでしょ?!」

「俺たちは…… 定員に達してる」


「しかも、あなたたち牧師さんでしょ?!」

 少女は、二人の反応を待つ暇も与えず、

 牧師服をじろじろと見ながら、まるで最後の藁をすがるように言った。

「牧師さん二人のチームなら、

 きっと、きっと火力が足りないはずです!」


 セリアは、思わずスキーナの側に身を寄せた。

「私、私たちはただ……」


「火力は、私が担当します!」

 少女は、急いでアピールした。

「今は、下級の火の玉しか使えません。

 でも、でも頑張ります!

 危ないことにも、怯みません!」


 …… この展開、おかしいぞ。

 スキーナは、彼女の強い意志に感心しつつ、

 ゆっくりと、目の前の少女を観察した。

 年齢はまだ若く、黒髪は少し乱れ、

 毛羽立った髪ゴムで、適当に後ろに束ねている。

 それでも、数本の髪が頬に落ちている。

 髪色は、けたたましくはないが、清潔だ。

 そして、同じ黒い瞳には、強い一途さが宿っている。


「はぁ――」

 断りたい気持ちもあった。

 だって、俺たちはボロボロの貧乏暮らしだ。

 任務もまだ慣れていないのに、メンバーを増やすなんて、無謀すぎる。

 だが……

 もし、きちんと身なりを整えれば、

 きっと、美人になるだろう。


「先に言っておく。俺たちのチーム、金なんてほとんどない」

 これは、もう、諦めてくれ、という暗黙の合図だ。


「大、大丈夫です!」

 少女は、希望が見えたと思い、嬉しそうに答えた。

「報酬なんて、要りません!本当に!」


 スキーナは、きょとんとした。

「…… 何、言ってる?」

「食事だけ出していただければ!」

 彼女の目は、輝きを宿している。

「雑用もします。練習相手もします。

 床について、暖房代わりにもなります!」


 どうやら、魔法に、心を奪われている少女らしい。

 しかも、食事だけで雇えるなんて、

 こんな安い働き手、どこにいるだろう。


 だが、目に燃えるような情熱を見て、

 やっぱり、冷や水を浴びせておかなくては。

「落ち着いて」

 スキーナは、優しく笑った。

「俺たち、冒険者に登録したばかりで、

 別に、強いチームじゃない」


「大丈夫です!」

 少女は、すぐに頷いた。

「私も、強くないです!」


 これを、堂々と言われてしまい、

 逆に、スキーナは言葉に詰まった。

「…… それ、良い点じゃないだろ」

「違うんですか?」


「…… ち」

 スキーナはため息をつき、

 隣にいる相棒の方を向いた。

「お前は、どう思う?」


 突然指名されて、セリアはどぎまぎした。

 こんな、メンバー加入の重大なことに、

 自分の意見を聞いてもらえるなんて、思ってもみなかった。

 彼女は、少女を見て、スキーナを見て、

 小さな声で言った。

「彼女…… 本当に、私たちに入りたくて仕方ないみたいです」

「それに、一緒に行動するだけなら……」


 少女は、すぐにチャンスを掴んだ。

 きちんと立ち、敬礼をした。

「ノヴァと申します。

 絶対に、指示に従います!」

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