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聖剣になってしまった少女は、勇者になれますか?  作者: 風間 蒼月


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朝の艶めき

 スキーナはもがきながら体を起こし、頭を上げると、三頭の魔狼の目に浮かぶからかいの色が目に入り、腹立たしさが込み上げた。


 狩りに成功した獲物をからかうのか?

 まるで自分を食らいつくすと決め込んでいるようだ。


 彼女は頭の中で素早く計算した。

 わざと彼らを一斉に飛びかからせ、その場で聖剣に変身すれば、逆転できるだろうか?


 思い切って囮になろうとした瞬間、

 遠くから慌ただしい馬蹄音と叫び声が突き抜けてきた。


「旦那!助っ人を連れてきたわ!」


 闇夜の中、数人の影が馬を駆って駆けつけてきた。

 先頭は牧夫の妻で、後ろには四人の屈強な男たちが従い、

 巨大な斧を担ぐ者、弓を構える者、長刀を握る者がいた。


「町の冒険者チームだ!」

 牧夫は驚きと喜びで声が掠れ、「助かった!」


 この言葉がスキーナにとって特効薬のように効き、気力が湧いてきた。

 彼女は左手で剣身をなぞると、炎が「ボッ」と燃え上がった。


「かかってこい!まだ戦えるわ!」


 挑発に対し、魔狼たちは喉元から低い唸りを上げた。

 凶暴ではあるが愚かではなく、新たな脅威が急速に近づいていることに気づいていた。


 スキーナはすぐにでも戦って時間を稼ぎたかったが、

 肩の激痛が腕を伝って全身に広がり、

 これ以上剣を振れば体力を消耗しきるだけだと分かった。


 狼たちも飛びかかる気配はなく、何かを待っているようだった。

 そうして双方は対立状態に陥った。


 遠くから長く引き伸ばされた狼の遠吠えが響いてくるまで。


 三頭の魔狼はただちに逗留することなく、

 振り返って闇の中に駆け込み、姿を消した。


 スキーナはほっと深く息を吐いた。

 やっと終わった。


 ずっと堪えていた力が抜け、体がすぐに崩れ落ちそうになった。

 その時、数人の影が馬を駆って目の前に到着し、土ぼこりが少し舞い上がった。


「娘さん、大丈夫? けがはない?」

 牧夫の妻は馬から飛び降り、焦りの色を隠さずに言った。


 同行した冒険者たちも次々に馬から降り、武器を収めて囲んできた。

 大きな声の男が地面の狼の死体とスキーナの傷を見て、感心しきりの目をしていた。


「すげえ! 一人で狼の群れと魔物に耐えたのか? よく戦ったな!」

「娘さん、先に治癒薬を飲んで休みなさい。傷がかなりひどいようだ」


 弓使いはより細やかで、スキーナの蒼白な顔色と肩の傷に気づき、

 リュックから治癒薬を取り出して差し出した。


 スキーナは返事をしようとした瞬間、喉元から血のにおいが込み上げ、

 全身の力が潮のように抜けていった。


 その時、慌てた足音が駆け寄ってきた。

「スキーナ!!」


 セリアだ。


 彼女はよろよろと駆け寄り、スキーナが全身傷だらけで立っていられない姿を見ると、

 目が赤くなり、涙がどっと溢れ出した。

「大丈夫……?」


 懐かしい声を聞いて、スキーナは「大丈夫だよ」と笑おうとした。

 口元が少し上がった瞬間、視界が突然真っ暗になり、体がふらりと倒れ、

 柔らかく暖かい胸に飛び込んだ。


 安心感が一気に彼女を包み込み、その場でぐっすりと眠りに落ちた。

「スキーナ!!」


 セリアは崩れ落ちる彼女を強く抱きしめ、血色のない蒼白な顔を見て、

 心が強く締めつけられ、痛くて言葉も出なかった。


「遅くなってごめん…… 早く家の中に入りましょう。

 風を防げるし、きれいな場所があるわ」

 牧夫の妻は後悔と焦りで言った。


 巨大な斧を担ぐ男が進んで手伝おうとしたが、

 セリアは首を振って断った。

 もうスキーナを自分から離したくなかった。


 セリアは慎重に全身の力を込めてスキーナを抱き、

 一歩一歩ゆっくりと木造の家に向かって歩いた。


 月光が二人に降り注ぎ、影は長く伸びていた。

 他の人たちは皆静かに後ろに従い、原野の火はまだ燃えていたが、

 殺気は消え、暖かさだけが残っていた。


 木造の家の中。


 セリアはスキーナをきれいなベッドにそっと寝かせ、

 血に染まった神父服を慎重に脱がせ、熱いタオルで体を少しずつ拭きながら、

 小さく囁いた。

「怖くない…… 早く目を覚まして……」


 家の外では牧夫が柵を補修し、損害を数えており、

 すべてが穏やかに進んでいた。


 だがスキーナの意識の奥底では、別の光景が広がっていた。


 彼女は真っ白な空間に浮かんでおり、体の傷は少しも痛くなく、疲れもなく、

 ただ暖かく重い力が彼女を包んでいた。


【祈願の響】祈りを捧げた後、極めて低い確率で特殊な応答が発動する

【契約の共鳴】力と意識が契約者と深く共有される

【不壊不滅】剣身は絶対に破壊されない


「これは……?」

 スキーナの意識体が立ち上がり、ぽかんとした。

「経験値バーが満タンになって新しい能力をもらったの?」


 どうやら…… 一つしか選べないようだ。

「祈り? 一番嫌いなやつだ」


 やっとレベルアップしたのに、金に関する能力が一つもないの?

 せめて錬金術くらい来てくれよ! 今一番金貨が足りないのに!


 一つ目と二つ目は彼女にとって全く役に立たない。

 この一生トラブルだらけで運が悪いのに、他人と力を共有するなんて、考えたくもない。


 スキーナは少しも迷わず、すぐに【不壊不滅】を選んだ。

 だが…… 何の変化もない。


「何なの? 騙されたの?」

 彼女は急いで確かめようと、勢いよく目を開けた。


 視界には真っ白な光景が広がっていた。

 昼になった? 違う…… この日差しはなんだか心臓が躍るようだ!


 じっと見つめると、朝の光が布に降り注ぎ、

 柔らかい輪郭がはっきりと浮かび上がり、呼吸に合わせてゆっくりと上下していた。


 少女は黙って唾を飲み込み、のどが渇いてたまらなかった。


 セリアにこんなに近づいたのは初めてだ。

 まつげの影がはっきりと見えるほど、

 柔らかい香りが空気からではなく、彼女自身から漂ってくるほど近かった。


 起きたくない、このままもう少し寝ていたい。


 彼女の呼吸が荒かったためか、セリアのまつげが少し震え、

 ゆっくりと目を開けた。


 まだ寝ぼけた澄んだ瞳は、起きたばかりの子供のように、ぽかんとしていた。


 視線が焦点を合わせた瞬間、彼女は呆気に取られ、

 二人の距離に思わず息を詰めた。


「…… お、おはよう」

 朝の光に飲み込まれそうなほど小さな声だった。


 彼女はまばたきをし、すぐには返事をせず、

 ただ惜しむように深く息を吸った。


 スキーナは黙ったまま彼女を見つめ、こっそり彼女の香りを深く吸い込んだ。


「ど、どうしたの?」

 セリアは慌てて言った。

「私、体が汚いの? 昨日クリーニング術を使ったのに……」


「君の体…… レモンの香りがする」

「教、教会の浄化ハーブなの…… レモンに似た香りがするの……」


 セリアは起き上がろうとした瞬間、手首をスキーナに引っ張られた。


「起きないで」

 柔らかい甘えた声で、「もう少し一緒に寝ていて」


 肌が触れた瞬間、セリアは全身の力が抜け、

 心臓が「ドキドキ」と激しく鳴り、胸から飛び出しそうだった。

 手首の温度が魔力のように全身に伝わり、体中が熱くなった。


 何とはなしに、彼女はまた横になった。


 しばらくして、スキーナは突然息を吸って言った。

「くっ…… 体がだるい。昨日無理したせいかも」


 息がセリアの首筋にそっと吹きかかり、白い肌が一瞬にして桜色に染まった。


 彼女は目を上げると、キラキラと期待に輝くスキーナの瞳に飛び込んだ。


 セリアはたちまち吃った。

「た、多分…… 筋肉痛なの。治、治癒術を使えば治る……」


 彼女は思わず手のひらに淡い治癒の光を灯したが、

 スキーナが黙っているため、小さく尋ねた。


「ど、どこが調子悪いの?」

「全部だよ」

 スキーナは堂々と言った。


 セリアはどうしようもなく、頬を赤らめて小さく言った。

「じゃ…… じゃあ上半身から先にしましょう」

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