私はSランクの任務を受けます
どうすれば強くなれるのだろう。
スキーナは、自信のある者は強いと思っていた。
だが、自信は彼女にとって、一番頼りないものだった。
一夜じっとこらえて、二人は冒険者協会へと足を運んだ。
「S ランクの依頼を受けたいです!!」
スキーナの声は堂々として大きく、
それを聞いた瞬間、協会の中が一瞬、静まり返った。
次の瞬間、どこかのスイッチが入ったかのように――
「プッ――」
誰かが我慢できなくなり、
たちまち協会中に笑い声が広がった。
受付の豊満な女性係員は、手が震えて羊皮紙に曲がった墨痕を残した。
だが顔は、いつも通りの穏やかな笑顔を崩さなかった。
「S……S ランクの依頼、でしょうか?」
彼女は念を押すように繰り返し、
目の前の二人が本気なのか確かめようとした。
掲示板の前で依頼を見ていた中年冒険者がゆっくり振り返り、
スキーナとセリアをくまなく眺めた。
最終的に視線は、まだ新しい牧師服に止まり、
「最近の若者は寝不足で頭がおかしいのか」と言わんばかりの目つきだった。
セリアはゆっくりと横を向き、口をぽかんと開けたまま閉じられなかった。
「わ、私たちはやっぱり――」
「スライムみたいな初心者向けから始めて、
少しずつランクを上げて、装備を整えて、仲間を見つけて――」
「実力も経歴も揃って、
少なくとも A ランクになってから、そういう依頼に挑むものじゃないですか?」
彼女は慌てて手で流れを説明するように動かし、
まるで、先人たちが証明した唯一無二の道だと言わんばかりだ。
スキーナは、当然だというように頷いた。
「確かに、それは合理的だ」
セリアがほっとしたのも束の間、
彼女の言葉は突然、方向を変えた。
「だが、それは普通の人間のやり方よ」
「え?」
スキーナは指を一本立て、真剣な面持ちで言った。
「一つ目。私たちには牧師がいる」
「は、はい。牧師はいます…… でも私、そんなに強くないです」
「大丈夫。牧師がいるだけで、最高の戦力なの」
「それから、私には聖剣がある!」
彼女はセリアの耳元で、こっそりと囁いた。
「一週間前まで、あなたは農家の娘で、
剣術なんて習っていなかったはずですけど?」
セリアは近さに戸惑い、頬を赤らめながらも反論した。
後ろの列がだんだん長くなり、
退社時間も気になる受付嬢は軽く咳払いして、話を戻そうとした。
「あの……」
彼女はスキーナを見て、柔らかく、
だが諫めるような口調で言った。
「S ランクの依頼は、通常、
A ランク以上のチームが最低条件です」
「それに、高難度の実績も必要です。
お二人に、冒険の経験はありますか?」
スキーナは真剣に考え、正直に答えた。
「今のところ、ないわ」
「でしたら、私の提案としては――」
受付嬢の笑顔は優しいままだが、
礼儀だけでなく、分別のない若者を憐れむような眼差しに変わっていた。
「D ランクか C ランクから始められては?
難易度に合った依頼をお出ししますよ」
セリアがほっとした瞬間、
彼女はさらに言葉を続けた。
「じゃあ、C ランクからにする」
あっという間に依頼を受け、
初めての仕事に、スキーナは抑えきれない興奮を覚えた。
町を出ると、スキーナは守衛の前を何度か行ったり来たりした。
自分を覚えていなければ、入城税を取らせた隙にからかってやろうと。
だが、どうやら見破られていたらしい。
依頼の場所に着くと、
広々とした原野が目の前に広がっていた。
草が風に揺れ、遠くの低い丘が柔らかい線を描く。
二人の任務は、この原野に現れた狼の群れの駆除だ。
依頼主は裕福な牧畜主で、羊がいつのまにか減っていき、
食べかけの死体から狼の歯形を見つけたという。
報酬は高くないが、危険度は初心者向けより明らかに高い。
理由は単純で、数も不明、行動範囲も広く、冒険者側が不利なのだ。
「スキーナ……」
「大丈夫ですか? 狼の群れですよ。
しかも大人は下位魔獣です」
スキーナは原野の真ん中に立ち、
風を受けて遠くを眺め、穏やかな面持ちだった。
太陽が牧師服に降り注ぎ、その白はまぶしいほどに光っていた。
この世界に来て、彼女は一つ、確かに思い知ったことがある。
慎重だからといって、世界が優しくしてくれるわけではない。
残酷さは、ゆっくり進めば緩むものでもない。
「無理をしているわけじゃない」
スキーナは小さく声に出し、説明するように続けた。
「私は自分の実力に自信がある。それに――」
「明日と、不測の事態。どちらが先に来るかなんて、誰にも分からないの」
セリアは一瞬、息をのんだ。
彼女はスキーナの背中を見つめ、
この子が、どれだけの苦しみを抱えているのか、と思った。
強さを、こんなにも切実に求めるようになった理由が。
胸が、きゅっと締め付けられるようだった。
「じゃあ…… 少なくとも、私はついています」
その言葉を聞いて、スキーナは眉をひそめた。
なんだ、最近この子は、いつもいいことを言う。
まるで天地が二人のために時間を止めたかのように、
原野は二人の緊張に応えることなく静かだった。
太陽は傾き、空は穏やかなオレンジ色に染まる。
風が吹き、草は波打ち、虫の声だけが細く聞こえる。
昼間の狼の噂は、大げさだったのかと思えるほど。
スキーナはすぐに飽きてしまった。
少し盛り上がった土手にもたれて座り、
草を口にくわえ、ぼんやりとセリアの教会の昔話を聞いていた。
気づけば視界は霞み、意識は夕暮れの風に溶けていった。
目を覚ました時には、もう夜だった。
頬に柔らかい感触がある。
スキーナはまばたきし、状況を飲み込めないまま、
無意識に口元を拭った――
指先に、湿ったものがついている。
「……」
視線を上げると、ちょうどセリアが下から見つめ返してきた。
「ス、スキーナ!」
セリアの頬が真っ赤になり、声に慌てた調子が混じる。
「起きてくれてよかった…… ずっと、深く眠っていたので」
スキーナは体を起こし、咳払いした。
珍しく、どこか後ろめたい表情だ。
「咳っ。俺は…… 戦術を考えていて、
つい深い瞑想に入っただけだ」
セリアは、あまり信じていない様子だが、
そっと頷いて小さく提案した。
「もうすぐ夜になります。
明日、改めて来ませんか? 夜の野外は危ないです」
スキーナは空を見上げた。
夜の気配が完全に訪れ、
遠くの丘は輪郭だけを残している。
「だめ」
彼女は首を振った。
「狼が羊を襲うのは、たいてい夜なの」
セリアはきょとんとした。
スキーナはすでに立ち上がり、
牧師服の草を払い、当然だという口調で言った。
「野外で待つより、牧畜主の家に泊まるのが一番。
待ち伏せにもなるし、金も節約できる」
「え? そういうの、アリなんですか?」
「もちろん」
スキーナは堂々と言い切った。
「私たちは問題を解決しに来たの。
金を使いに来たんじゃないわ」




