EP1-8.
「フェスタキャッスルの装飾、すっごく良かった!住人の皆も早めに行くといっぱい出会えるんだね。私が好きなリラとミルのミニダンスも見れるなんて最高だった♪」
「そうだね、あれだけ皆が集まったのを見ること出来たのは初めてかも。いつもこっそりとしか現れないベイが見れたのは嬉しかったよ。」
零奈と智里はフェスタキャッスルのアトラクションを十二分に満喫していた。
二人の会話に出てきたリラ、ミル、ベイとは、それぞれリス、モモンガ、スカンクをモチーフとしたキャラクター(住人)で、リラとミルは華やかなダンスで人々を楽しませるのが得意である。ベイはいつもコソコソと行動していて少しイタズラする事もあるが、仲間がピンチの時には果敢に立ち向かって助けてくれたりもする憎めないキャラクターだ。
「咲原は推しの住人が見つかったか?寡黙なヒョイとかお前に似ていると思うぞ?」
浩二が少し気を使いながら洋人に話す。ヒョイとはいつも無口だが、知識豊富で皆が困っている事を解決する縁の下の力持ちみたいなキャラクターだ。
「雑誌や動画で事前調査したが、皆がここに来て日々の疲れを癒しに来るということがよく分からない。優先入場出来なかったら、とても長い時間待ったうえにCGや着ぐるみで誘惑してくるキャラに振り回されることになるぞ。そこまでして、写真や握手をすることが癒しになるのか?」
「メディアだけで見ていた住人や世界観を、実際に会って体験する事がワクワクや癒しになるんだよ。はぁ、そういう視点でこの場所に来ている人はいないと思うぞ…。」
「そうそう、そういう大人の考えなんてしてないで、子供に戻ってピュアな気持ちで楽しむんだよ。」
智里が人差し指を立てて洋人に言い放つ。
「こいつには流石に無理じゃない?今回の目的はメカなんだしね。さぁ、時間がもったいないし次に行こ!」
「次もいつも激混みな皆大好きドリームツリー!これもワンチケで楽しんじゃうよ。」
「今度のアトラクションはフェスタキャッスルとは全然違うから、きっと良い経験が出来ると思うぜ?」
「そうか。こんな機会でしか体験出来ない貴重な時間として、色々と情報収集させてもらおう。」
「ほらほら、急がないと乗り遅れちゃうよ~!」
零奈が小走りで目的のアトラクション方面へと向かう。
「零奈ちゃん、また走る~。」智里も遅れまいと零奈についていく。
「なんか、普段の水野さんと違うな~。私服のセンスも良いからさらに可愛く見える。」
「ああいう服は機能性という意味では間違いなく選択してはいけない構成だ。」
「お前というやつは、可憐なお二人と付き合っておいて何を言っているんだか…。」
先に行った二人を追いかけるように後ろの二人も追いかけた。
~MOT極東基地 格納庫内~
戦車型、ヘリ型、人型と様々な機体が並んでいる格納庫でブレードは何かを探している様子で歩いていた。
この格納庫は極東基地の中では広くはない方だが、それでも東京ドーム数個分ほど入る広さを有している。
「さっき連絡したらここで整備をしていると聞いたはずだが…、レットはいないか!」
少し大きい声でレットという人の名を呼ぶブレード。周りでは工具や端末を持った人達が慌ただしく動いているが、ブレードの声には振り向くことは無かった。
「まったくどこに行ったんだ。呼びかけても反応がない、という事は…。」
人型の機体が数体並んでいるエリアに入るブレード。ここに並んでいる人型の機体は綺麗な銀色一色でカラーリングされていてライトの光に反射している。
中央に立っている機体だけが頭部側面に赤い板状のパーツが付けられている。
その機体の足元に整備士と思われる人が立っていたのでブレードは声をかける事にした。
「すまない、ちょっと良いか?ジャンバスを見かけなかったか?」
端末を操作していた整備士はブレードの声掛けに反応して顔を向ける。そして、ブレードを確認するとすぐに敬礼を返した。
「ブレード中尉!はい、ジャンバス整備長はこいつのコクピット内にいます。連絡しても通信エラーが出たでしょう?」
整備士は機体の胸部辺りを指差して話し始めた。
「やはりそういう事か、それなら良い。私も上がっていいか?」
「もちろんです。今、最終チェック段階です。」
「了解した。」
ブレードは機体の前に設置されたエレベータに乗り込み、胸部へと上昇させた。
そして、胸部横にある板状の窪みに自身の手を当てる。すると、一瞬だけそこが光り、コクピットのハッチが開いた。
「おいパージ!重要な設定をしている最中に開けるんじゃねぇ!」
「調整中に開けてしまってすまない。」
「ん?って、シルスじゃないか。そういえば通信していたな。」
中に入って整備をしていたのは少し黒髭を生やした太り気味の男性だ。
コクピットの中は人が二人入れるかくらいの広さを持っている。入ってすぐに複数のモニタが目に入る。
「レット直々にこれを調整してくれるなんてな、期待しているぞ。」
「まかせとけ。こいつの初陣なんだ、最高のコンディションで行かせないと俺の立場が無いからな。」
「フルバリアコーティングの新型、きっと素晴らしい動きを見せてくれよう。」
「一般的な通信が出来なくなるのが難点だが、専用通信ユニットを設けたから大丈夫なはずだ。」
「近距離の通信にはあのユニットは必要ないのか?」
あのユニットというのは、先ほど見た頭部側面に取り付けられた赤色板の事だ。
「大丈夫だ。1km程度の暗号通信はアレが無くても可能だ。そうだシルス、可動部の調整はデータトレースで良いのか?」
「いや、少し機敏にしてくれると有難い。初陣だが無理をさせる展開になるかもしれない。」
「聞いたが、何やら雲行きが怪しいらしいな。無理はするなと言っても聞かないだろうが、体は無事に帰ってこいよ。」
「ああ、良い報告を期待してくれ。そして、いつもの酒を飲もう。」
「おうさ。じゃあもう少し待っててくれ。終わったらまた連絡する。」
「頼んだぞ。」
ブレードは作業しているテットに敬礼してコクピットを閉じた。そして、銀色の機体を眺める。
「ゴディスブレス(女神の加護)、聞いた時から興奮が止まないな。」




