EP1-7.
「ここで合っているはず、だな?」
洋人は周囲を見渡し、テーマパークの最寄り駅に降り立ったことを確認する。
駅から出てくる人は子供と一緒にいる家族が多かったが、訓練を見に来たと思われる、男性陣もちらほらと見られる。
目線の先に零奈達と話をしたテーマパークが見えたので、洋人は少しほっとした。
「大丈夫のようだな。それにしても周りはこの状況が分かっていないな、戦争が起こるかもしれないというのに…。」
テーマパークを楽しみにきている人達を見ながら呟く洋人。過去に別の国で最新鋭の技術を使用して行われた模擬戦を狙って、テロリストが現れて火の海になった出来事があった。それを洋人は鮮明に覚えている。
「まあ日本支部自ら戦争を起こす事は無いと明言しているわけだから、それを問題視する奴らはあまりいないか…。でも、警戒するに越したことはない。」
洋人は自身の携帯端末で地図アプリを開いて確認する。地図はテーマパーク周辺を表示しており、ある所に赤い点が表示されていた。
「数日前に準備をしたが大丈夫みたいだ。さてと、まだ集合まで時間はあるから偵察をしておくか。」
洋人は周りの人達の流れに乗って、テーマパークへと向かった。
「おい、聞こえるか?」
通信しているスピーカーから声が聞こえた。男は応答するために通話ボタンを押してオンラインモードにする。
「ああ、問題ない。そちらの状況は?」
「こっちは中心に潜入した。まあ普通にしていたらバレるわけがない状況だ。」
「だが知ってる奴もいるから気をつけろ。一応正規軍と接触する可能性があるわけだからな。」
「ああ、そっちも十分に警戒をしておけよ。なんだって最新鋭機に乗ってるんだからな?」
「もちろんだ。何事もなく目的が達成できれば良いが…、そうもいかない気がしてならない。」
「問題が発生した時は攪乱をしてくれればいい。危険だと感じたらすぐに離脱しろ。」
「もちろんだ。あまり通信をし過ぎると暗号を解読されかねない、そろそろ切るぞ。」
「OK、じゃあまたBARでな。」
「ああ、祝杯を挙げよう。」
男は通話ボタンを再度押してオフラインに切り替えた。そしてアンテナレベルを上げて、通信をより拾えるようにした。
「……よし、聴こえてくるぞ。もっと警戒していた方が良いぜ?まあ、こっちにとっては好都合だけどな。」
男は真鍮製の容器を手に取り、蓋を開けて中に入っている飲料を一口飲んだ。
「まあ、こっちも暴れたい気はあるからな。目立ってくれてもいいぜ?」
ニヤリと笑みをこぼす男の頬は少し赤くなっていた。
「お待たせっ!」
「ごめんなさい、電車トラブルがあって少し遅れちゃった。」
零奈と智里は駆け足で来たおかげで、少し息を切らしている。
「いやいや大丈夫だよ。ちゃんと連絡をもらってたし、こいつとはさっき合流したばかりだ。」
「え?集合時間は20分も前だけど、どこか道草食っていたわけね?」
零奈は洋人に歩み寄って問いただす。
「それはそうだ。遅れると理解しているのにただ待っているのは無駄だろう?途中の本屋に寄っていただけだ。」
洋人は無表情のまま返答する。
「む、むぅ。」
零奈は遅れているのは自分達なので強く言えないでいた。
「浩二君はちゃんと待っていてくれてたよね?」
「ああ。俺はここに時間通りにいたけど、退屈はしていなかったから問題ないよ。こいつと二人で待っているのもなんだしな。」
「ま、まあそうね。話してても勿体ないから行こっか。」
「そうだよ、遅れた分は取り返せば良いよ。」
「うん♪込み具合とかちゃんと調べてきたから、楽しんでくれたらいいな。」
「さすが篠塚さん。文化祭でも凄いと思っていたけど、リサーチ力半端ないね。」
話しながら歩く四人。
「調べるのは得意なの、模擬戦イベントまでは時間あるから先ずはあれだよ!」
智里が指差した先には大きな洋風のお城が立っていた。
「あれは、このテーマパークのメインキャラが集うフェスタキャッスル!え?あれって待ち時間ヤバいんじゃないでしょうか?」
浩二が心配になって智里の顔を見る。
「ふふ~ん、これを見よ!」
智里は携帯端末に表示された画像を誇らしげに浩二達に見せた。
「こ、これは!限られた人しか見たことが無い、通常の列に並ばずにVIP列に通してくれるワンダフルチケットじゃないか!?」
「そう!テーマパーク公式アプリの週一で抽選できるクジでなんと当たったの!普通なら1時間待ちなんて当たり前のフェスタキャッスルをすぐに楽しめるのだ!」
「私もビックリしたよ。ちさがワンチケを当ててくれたから今日をより楽しめるってわけ。ありがたいと思いなさいよ。」
「ははー、ありがたき幸せ。」
浩二は立ちながら土下座のポーズをして見せる。
「そのチケットだが、俺も手に入れたぞ。」
「え、何言っているの?そんなわけないでしょう。」
「ほら、これだろう?」
洋人は携帯端末を三人に見せて確認させる。
「ほ、本物のワンチケだ。」
「まさか咲原君がアプリを入れているなんて、すごい!」
「ということは、もう一つのアトラクションもVIP待遇でいけるってことだね?」
「そ、そうね。まさかワンチケダブルなんて、素敵すぎる!咲原君、ありがと!」
零奈は笑顔で洋人に感謝したが、洋人は無表情のまま、
「効率よく動けたらと行動しただけだ。」と答えた。
「とにかく、フェスキャスにレッツゴー♪」
零奈は智里の手を引いて駆け出した。
「わっ!零奈ちゃん、走っちゃあぶないよ~。」
引っ張られている智里も楽しそうだ。
「待ってくれよ~。」
「……。」
4人はテーマパークの中心にあるフェスタキャッスルへと向かった。
「チェック、ファイナルフェイズに入る。」
「……ファイナルフェイズに移行、問題無し。」
「各センサチェック、…正常状態。」
「SASチェック、少し出力が出ていない状態です。」
「テスト運転だ、問題無い。よし、駆動部分を確認しろ。」
「了解、起動します。」
十数人が端末を操作している空間の中心で一体の機体が頭部にあるメインカメラを光らせて立ち上がった。
「よし、正常起動したな。今日の模擬戦のメインを担うんだ、ミッションの確認は問題ないな?」
機体を眺めている一人がマイクを使って話す。機体の中にいるパイロットに通信しているようだ。
「はい、問題ありません。日本支部の復活を見せてやりましょう。」
「貴重なシステムなんだ、下手な操作はするなよ。」
「緊張はしていますが、わくわくが止まりません。バックアップは頼みましたよ。」
「もちろんだ、良いパレードにしよう。」
起動した機体の後ろにもそれぞれ特徴ある機体が並んでいた。




