EP1-4.
~中東サウジアラビア_カシャック油田~
数多くの石油タンクが並んでいる場所を、二体の人型機が崖の上から見下ろしている。
その場所は出っ張った箇所になっており、下から見ると突き出た部分が大きく見え、
上に何かがいる事を確認するのが難しい場所になっている。
「偵察には丁度良いポジションだな。」
人型機に乗っている一人が無線通信を使用して相手に話しかける。
「だが、ここから覗いているだけでは意味がない。お宝はあそこにあるらしい。」
そう言うと、コントローラを操作してモニターに黄色い〇を表示させた。
〇で囲われた場所には小さな小屋がある。
「あんな手薄そうな所に?すぐに終わりそうな内容だな。」
「そうでも無いみたいだ。あの小屋の中に例の箱があるらしいが、埋め込まれていて掘り起こす必要があるとの事だ。」
カメラを操作して、モニター越しに周囲を確認する。
小屋は石油タンクの中央にあり、タンクの周りには数体の人型機が配置されている。
「なるほど。周囲にいる奴らを片付けて、ゆっくりと抜いたら良いわけだ。」
「そんな簡単にいくかよ。あの小屋を破壊すると警報装置が作動するそうだ。先ずはそれを無効化する必要がある。」
「それはどこにあるんだ?」
「ここだ。」
モニターに新たに青で〇が表示される。囲われた場所には人型機が密集している。
「おいおい、それじゃあ施設ごと敵という事じゃないか。分が悪すぎる。」
「その為の最新機を頂いたんだ。手堅くやってやろうじゃないか。」
一体は武器を持ち構える。長距離射撃用のライフルみたいだが、口径が戦車に搭載するくらいに大きいサイズだ。
「そうだな、色々と試すのも悪くはない。」
同じく、もう一体もライフルを構える。
「一撃加えたら見つかるが、あちらの武器だとここは狙えない。」
「その間に各個撃破していくか。」
「そういう事だ。先ずは警報装置を無効化させてもらう。」
男はボタンを押すと画面に「ジャミングシステム 作動」と文字が点滅表示した。
「これでセンサ関係は使えないはずだ。」
「便利な物を産み出したもんだ。」
「よし、じゃあやってやろう。俺は右の奴を狙う、お前は左からだ。」
「了解。」
二体の人型機はライフルの照準を見張りをしている人型機に合わせる。重力も考慮して狂いの無いように自動調整される。
「よし、いくぞ。ファイア!」
ドンという大きな音が鳴り響き、数秒経った後、見張りの人型機の動力部に命中した。
機体は小さな爆発音と共に倒れだした。
二体を破壊されると同時に他の見張りは素早く動き出した。
「油田を盾に出来ないから丸裸すぎるぜ!」
もう一度大きな音が鳴り、命中した機体は燃えながら倒れ込む。
「次ももらう!…何?」
もう一人が撃ち放った三発目は相手機体の横を抜けて地面に命中した。
「しくじったのか、ちゃんと狙え!」
「いや、確実に狙ったはずだが、相手は数秒先を読んでいるかのような動きだ。」
銃撃を躱した機体は頑丈そうな鋼鉄の壁の影に隠れたので、崖からは確認する事が出来なくなった。
「まあいい、見える奴らは蹴散らした。一気に終わらせるぞ。」
「了解。大丈夫だと思うが、さっきの奴には警戒しながら攻めるぞ。」
二体は長距離用のライフルを放棄してグレネードランチャーの様な武器に持ち変える。
そしてスーッとした動作で機体を浮かせながら坂道を降りていく。
ホバー技術を用いて砂に巻き込まれないように動ける仕組みだ。
「これも良い技術だ。」
「応用すれば水の上だって行動出来るって話だ。」
見張りの死角を確認しながら坂を下りていき、油田近くまで辿り着くと二体は周囲を警戒した。
「どうだ?レーダーでは近くに敵は見られないが…。」
「どうだろう。さっきのシステムでこっちも問題が無ければ大丈夫だろう。」
「よし、一気に小屋まで攻め込む。」
「俺が前に行こう。確実に終わらせるぞ。」
ゆっくりだが、すぐに対応出来る動きで小屋に近づいていく二体。
途中、何機かの見張り機が現れて、グレネードランチャーによって破壊される。
「今の奴らにさっきの奴は?」
「いや、いなかったはず。」
「逃げたのか?まあまだ小屋までもう少しある、しっかりと対応していくぞ。」
油田の側面に沿って、自分達が撃たれない様に二体は行動し、小屋の前まで辿り着いた。
途中、何体か見張りがいたので、中距離用ライフルで狙撃対応した。
「ここまでは順調だな、システムの稼働も問題なし。」
「小屋の屋根を破壊して回収しても問題ないんじゃないか?」
「ここまでスマートに来たんだ。最後まで慎重にいくのがセオリーだぜ。」
「…回収までの時間は?」
「そうだな…およそ10分という所だ。」
「了解。じゃあ話していた通り、周囲を警戒しておく。」
「じゃあ、行ってくる。危なくなったらお前だけでも離脱しろ。」
「そうならないように頑張るさ。」
一人は機体から飛び出し、必要な道具を持って小屋のドア前に降り立った。
検知器を取り出し、ドアの状態を確認する。問題無いと判断したのか、別の装置を取り出して、ドアのロックを解除した。
「ここまで順調過ぎると何かありそうだな。」
「こういう事もあるさ。相手は守れないと判断したんだろう。」
通信は常に行っているので二人は会話出来る状態だ。ドアをロックした一人は小型銃を持って中に進入した。
「中もクリア。で、対象物も発見した。中央にあって、他には何も無い。」
「よっぽど守備には自信があったんじゃないか?」
「そうかもな。よし、じゃあ回収に入る。」
「こっちも問題ない。」
通信機に甲高い音が鳴り響く。小屋の中で機械を使って掘り出し作業をしている音だ。
余りにも大きいのでボリュームを下げようとすると、ピタっと音が止んだ。
「もう回収出来たのか?」
機械音が鳴って数分くらいしか経ってないので、機体の中にいる一人が不思議に思った。
「集中しているのか?合図くらい出来るだろう。」
10秒程度応答を待ったが、相手からの返答が無いので、流石に何かがあったと判断した。
周囲をもう少し集中して警戒する。だが、こちらを狙ってる機体や歩兵の姿は無い。
「(対象物を放棄するか、確認するか。)」
行動を考える。結果、小屋を破壊して中を確認する事にした。そして、そのまま対象物を回収して撤退する考えだ。
屋根を破壊する為に大型ナイフを取り出した瞬間、目の前が真っ暗になった。
「こんな時にカメラが故障だと!?」
外が見えない状態になり、復旧を試みて再起動させるが変化は無い。このままでは危険と感じ、外に出る事にした。
操縦席のハッチがプシューと音を鳴らしながら開く。操縦者はライフルを構えて外を確認する。
「前方は問題無し、行くしかないか。」
操縦者は身体を外に出して周囲を確認しようとした。そのタイミングで側面から胸に穴を開けられた。
「なっ!どこに潜んでいた…。」
操縦者は身体を支えられずに地面へと落下し、息絶えてしまった。
その様子を確認した狙撃者は油田区域から去って行った。




