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EP1ー3.

一時間目の授業が終わった休憩時間、零奈と智里はある物を持って、洋人の座る机へと向かう。後ろにはもう一人、男子生徒も一緒だ。

「おはよ、咲原君。」智里から声をかける。

「水野さんと篠塚さん、それに後ろにいるのは高梨君か。何か用ですか?」

「どうしてそんなによそよそしいのよ?クラスメイトなんだし、もう少し打ち解け合えない?」

「そうだぜ咲原。俺とは校外学習で一緒にグループになった仲じゃないか。」

高梨(たかなし) 浩二(こうじ)はクラス内では盛り上げ役として頑張っており、イベントがある度に何かしらの役を受けて、皆を引っ張っている男子生徒だ。

「それは、たまたまクジでグループ分けした時に一緒になっただけです。それに学校内では親密な関係性を持たないと考えていますので。」

「なるほど、外で会った時はもう少し普通に話してくれる気はあるんだ。それって面倒じゃない?いちいち自分を作って過ごしているわけだし、ストレス溜まってそう。」

「そうだよ。少ししかない学生生活なんだし、自分が思っている事をはっきりと言ったほうが楽に過ごせるよ。」

「俺なんていつも自分を出しているけどな。」

「…感情的になった過去があるから今の自分があるので。だから思っている事をそのまま言えないです。」

「だーかーらー!私達なら本音を言っても嫌になったりしないから、普通に喋って良いって言ってるの!」

零奈が少し眉を吊り上げて洋人に感情をぶつける。

「わっ、珍しく零奈ちゃんが怒っているよ。」

「なっ、咲原。大変な目に合う前に普通に喋った方がいいぜ?」

零奈が拳を握りしめているのを見て、少し慌てだす智里と浩二。その様子にやれやれといった表情になる洋人。

「どうして俺なんかに構うんだ?お前たちにとって、何もメリットは無いだろう?」

少し低いトーンになって話す洋人。

「おっ、少しは話す気になったようね。それで良いのよ。」

「で、話したい内容というのはこれです。」

智里は洋人の机に短冊状のチケットを置いた。そのチケットを洋人は手に取って確認する。

「なんだこれは?テーマパークのチケットだと?まったく興味が無いんだが…。」

「そっ、夢を見させてくれるテーマパークのチケット。でもよく見てよ、あんたが興味ありそうな内容が記載しているでしょ?」

「興味がありそうな内容だと?」

洋人は突き返そうとしたチケットをよく見てみる。そこには迫力の模擬戦ショーと書かれている。

「何やら、日本支部の軍隊とロボットメーカーの共同で訓練みたいなのをするみたい。最新鋭の技術もお披露目するそうよ。」

「模擬戦というくらいだから、それなりに派手にやってくれると思うぜ?」

智里は詳細が分かる内容をタブレット端末で洋人に見せた。

「ふむ、そんな子供だましみたいな模擬戦なんてつまらないだけだ。俺は実戦が…なんでもない。」

「何を言おうとしたの?まあいいわ。少し旧式なら中に乗り込めるイベントもやっているみたいよ。」

「プロの人が一緒に乗ってくれて、操縦体験出来るんだって。すごく珍しい事でしょ?」

「なっ?お前いつもロボット物の雑誌を見てたりするからさ。そういうのに興味あると思って誘ったわけよ。」

「…本当の目的は昨日話した事だな?」じっと零奈を見て話す洋人。

「うっ、何よその目は。そうよ!私があんたを楽しませてやって、それで興味を持たせてやるんだから!」

「私も咲原君の事、少しは知りたいと思っているよ。」

「ハァ、その頑張りをもっと別の事に使えないのか。まあいい、操縦席に乗り込むのは久しぶりだから少しは楽しみにしよう。いいだろう、付き合ってやる。」

「おっ、決まりだな。」

「イベント日は来週末なんだけど、予定大丈夫?」

「ああ、問題ない。」

「よし、じゃあそれで決まりね。ちゃんとした服でお願いよ。」

「お前こそ、似合わない恰好はやめておけ。」

「なっ!?そんなの分かっているわよ。」

キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴った。

「あっ、次の授業が始まる。じゃ、楽しみにしているね、咲原君。」

零奈は少しイラっとした表情で、浩二はそれをなだめながら、智里はニコっとしながら洋人に手を振って、それぞれの席へ戻った。

「退屈な毎日はいつ抜け出せるんだ…。」

洋人はもう一度溜息をついた。


  ~MOT極東基地_ラウンジ~

「ブレード中尉、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

部屋の入口からドアをノックする音が聞こえる。

「レリックか、入っていいぞ。」

中からブレードと呼ばれた男性が返答した。

「ハッ!失礼いたします。」

レリックはドアの開錠ボタンを押して自動ドアを開ける。中に入ろうとすると、ブレードの他にも人がいたので半歩入った所で立ち止まった。

「これはユミル様!いらっしゃるとは知らずに入ってしまい申し訳ありません。」

レリックはまっすぐに姿勢を立て直して敬礼をする。ユミルはレリックに一礼をする。

「大丈夫ですよ、お入りください。」

ニコっとした笑顔でレリックに応えるユミル。

「問題ないから許可したんだ。さぁ、入れ。」

「ハッ!改めて失礼します。」

レリックは緊張しながら部屋に入る。中に入っても直立姿勢を止めない。

「休んでいいぞ。それで、連絡したい事は何だ?」

「はい、日本支部の中心にあるテーマパークにて行われる模擬戦ですが、その戦闘に使用されるはずのない機体が運ばれているという情報を入手しました。」

「ほぅ、模擬戦用にカモフラージュして新型を運んでいるわけか。何か匂うな。」

「それと、これは情報屋から流れている不確かな情報ですが、ヨージンを見かけたという話もあります。」

ブレードはその話を聞いて、少し眉を動かす。ユミルはお茶を飲みながら、静かに話を聞いている。

「何、ヨージンが日本支部にいるだと?あの戦闘の中で生きていられたとは思えないが…いや。」

「その情報屋から得た話を確かめる為に、こちらからも偵察を用意しております。」

「そうか、手配してくれてありがとう。私も少し情報をまとめたいと思う。他には?」

「はい、三日後にDOMとの会合がまとまりました。中国支部の上海です。」

「そうか、分かった。そちらも対応メンバを検討する。以上か?」

「はい、本日の情報は以上です。」

「迅速な対応をありがとう。少し休憩も必要だぞ。」

「はい、問題なく休みを取っております。それでは失礼します。」

レリックはサッとした動作で二人に敬礼し、部屋を出ていった。

「…そうかヨージンが。」

「えっと、ヨージンというのは初めて聞く人ですが。どのようなお方ですか?」

ユミルがしびれを切らしたかのように質問する。

「ああ、ユミル様はヨージンをご存じないのですね。では、少しお話いたしましょう。」

ブレードはコーヒーを一口飲んでから、ユミルに話し始めた。

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