EP1-15.
日本支部の待機場所では、重厚な黒いフォルムをしたBDが車のエンジン音くらいの騒音で起動を開始していた。
背中にはBD本体と同じくらいのバックパックを背負っており、まるで歩く戦車と認識されそうな重量感を周囲にアピールしている。
「こちらアルファ、システムの立ち上がりを確認した。操縦席では特に問題は無さそうか?」
「そうだな…ドッキングも正常状態、大丈夫そうだ。ベータ3、すぐにでも動けるぞ。」
「了解した。メーカー側もBDを起動させて外へと向かっているようだ。ガンマ部隊の救出をしてくれたら良いが、あちらも必死だと考える。」
「あいつらはそれなりに鍛えられている。自力で脱出も大丈夫だと思うがサポートはしてくるさ。」
「頼むぞ。それとテロリスト達の動きが静かになっているようだ。別の組織も動いているかもしれん、警戒して対応しろ。」
「了解した。ここの安全を確保したらエリア38まで向かうで良いんだな?」
「それで問題ない。通路の安全を確認後にこちらも脱出対応を行う、では作戦開始だ。」
「アジュールD、戦闘システムに移行。ベータ3、発進する!」
日本支部の重量級BD「アジュールD」はジェネレーターの出力を抑えながらも通路内では最速スピードにて移動を開始した。
少し進んだ所で、ロケットランチャーからの砲弾がアジュールD(AD)に向かって飛んできた。ADは腕パーツから連続的に銃弾を発射し、砲弾に命中させて無効化させる。
「くそっ、あれは新型BDだ!敵う訳がない、撤退だ!」
「テロリスト達と認識した、対応させてもらうぞ!」
テロリスト達は重たい銃火器を捨てながら逃走を図ろうとしたが、ADのスピードにすぐに追いつかれてしまい、左手に用意されたレーザーブレードにて対処された。
「スムーズな動作で実に動かしやすい。この機体を量産した時にはきっとここも良くなる。」
日本支部の待機場所近くに辿り着いたADは、バックパックから自動で腰にマウントされた銃火器にて分厚そうな壁を破壊して空洞を作った。
「ベータ3よりアルファ。テロリスト達を沈黙させた、近くに熱源反応も無さそうだ。」
「了解。では脱出行動に移行する、ベータ3は引き続きガンマ部隊の救出を進行せよ。」
「了解した。」
ADは大きな通路に入った時に出力を増大させ、スピードを上げてメーカー側の待機場所へと向かった。
洋人は日本支部のBDに乗り込んでシステムを起動させていた。
「俺が操縦していたBDとシステムは似ているな。これなら問題無さそうだ。」
洋人はテキパキと端末を操作して、操縦しやすいようにシステムをカスタマイズしていく。
「聞こえているか、ヨージン。」
「ああ、通信は大丈夫だ。先ほどは助かった。」
仮面の男はゲートが開いた瞬間に兵士達を無力化していた。洋人もスピーディな戦闘は得意な方だが、どの様に対応したのかが見破れなかった。
「BDを譲る代わりに要求を聞いてもらいたい。」
「何だ?出来ることなら聞こう。(敵に回す時は厄介になるな…。)」
「そなたはこの後、大変な戦闘に巻き込まれるだろう。その時にこの装置を起動して欲しい。」
サブカメラで確認すると、仮面の男は洋人が乗るBDの脚部に何等かの装置を取り付けていた。貼り付けではなく、丈夫そうなプレートで固定をしている。
「装置はスリープ状態にしている。システムと接続してもらえれば遠隔で起動可能なはずだ。」
洋人は仮面の男から話を聞きながら端末を操作していく。
「…ユニットを確認した。その装置が何かは教えてくれないんだな?」
洋人は返答が分かっていても仮面の男に尋ねてみた。
「すまないが、それは致し兼ねる。そなたには危害は加えない装置だ、これだけは約束する。」
「大変な戦闘とは何だ?何故お前に分かる?」
「それも秘密とさせて頂く。ただ、危険に陥った時に起動してもらえればよい。」
「まるで俺が負けると分かっているような言葉だな。」
「いや、君のスキルは分かっているつもりだ。ただこのBDは少し旧式、新型と戦うのは苦労すると考える。勝利を祈っているさ、すまない。」
「まあいい。そろそろ行動を開始する、離れてくれ。」
「承知した、良いダンスを踊ってきてくれたまえ。」
システムを再起動させて、BDを立ち上げる洋人。壁側に設置された武器格納庫から耐BD用ライフルを持ち構える。腰回りにもグレネード類を装着させた。
「サポートしてくれた事は助かった。今度会う時も敵じゃない事を願っている。」
「ああ、私もそう思っている。では、さらばだ。」
洋人はブースターを起動させてBD格納エリアから外へと向かって行った。
「ふぅ、ここまで来たらとりあえず大丈夫そうだね。」
「1kmくらい歩いただけなのに、とんでもない疲労感よ。」
零奈達は駅から離れた海が見える公園に徒歩で移動していた。
「ほんとだぜ。ああでも、人混みの中を抜けれて良かった。途中で買い物も出来たしな。」
「うん、非常事態でも運営してくれていて助かったよ。感謝、感謝。」
公園内にあるベンチで少し休む事にした三人は、早速購入した飲み物でそれぞれの喉を癒した。
「これからどうなるんだろう、電車動くかなぁ?」
「ここで野宿するなんて嫌だよ。でも、歩いて帰るのも大変だよね…。」
この公園から零奈達が生活しているエリアまでは約15kmほどある。
「明るいうちに家には着かないだろうなぁ。」
「でも、ここにいるよりは家に向かう方が安全だと思う。ほらあれ。」
零奈は海の向こう側を指差して話す。指が示す先には建物が燃えていたり煙が見える。
「あっちって、基地がある所だよね。ここまで飛んで来ないよね?」
「大丈夫だと思うけど…。でも、貧困層達の暴動って少しづつ増えているよね。平和な時って何で短いんだろう…。」
「今そんな事考えている場合かよ。さあ、身体動かしてここから逃げようぜ。」
「そうだね、先ずは自分達の安全確保。頑張って歩きますか!」
「はぁい、途中でタクシーとか拾えたらいいなぁ。」
「そうだな、良いことを考えて歩いてたら大丈夫さ。」
「うんうん、帰ったら美味しい物食べるぞぉ~!」
零奈達は人混みを避けるように迂回する経路で、家路へと向かう事にした。




