EP1-14.
ブレードはレットが整備したBDに乗り、テーマパークを目指していた。
MOTで開発された最新鋭機もあってか、ブレードの背中から感じるGは一際大きかった。
その状況でもブレードは地上で走る車を運転するかのような表情でBDを操作をしていた。
「さすがレットだ。これだけのスピードが出ているのにも関わらず、バランスレベルも安定している。最新鋭のテクノロジーだけではこうもいかない。」
搭乗しているBDは大きなウイングを背中に取り付けており、風が抵抗してくると機体がバランスを崩さないように自動制御してくれる。
機体は風を切って進んでいて、ウイングの後ろには飛行機雲が綺麗に発生していた。
ブレードは目的地を設定し、自動運転モードに切り替えて今後の作戦を考えていると、通信信号が入ってきた。どうやらMOT基地からの通信だ。
「こちらBR1、最新情報は受け取れたか?」
「こちらフォースβ(ベータ)、現地の状況ですがステルス機も現れていて戦闘エリアが大きくなってきているようです。詳しい戦況は把握しておりませんが、反乱組織も現れており、四つの組織が戦闘エリアにいるようです。」
MOT基地は九尾那市に送り込んでいる隊員からの情報を受け取って、ブレードに伝えている。
「なるほど、そうなる状況は予想範囲内だ。それぞれの被害状況は受け取れてないか?」
「テロリスト側と思われるBDが中破して撤退をしているようです。他には陸上兵器が何機か大破しているとの情報を受け取っています。」
陸上兵器というのは旧式ではあるが人工知能(AI)を搭載した戦車やミサイルポッドなどで、各都市では緊急自体が発生した時に自動で防衛するシステムを有している。
「テロリストは少し旧型を利用しているとの話を聞いた事があるな。だが数で攻めてくるのがあいつらの手口、民間に被害が無ければ良いが…」
「今の所、警察や救急が上手く動いており、民間には被害が出ていないとの情報は傍受しています。しかし、それも本当かは分かりません。」
「そうだな、パニックを防ぐ為の情報操作は仕方がない。こちらも後20分程度で到着する。」
「ラジャー、BR1の信号は向こう側ではキャッチ出来てないはずです。作戦が無事完了する事を願っています。後方支援はお任せください。」
「ああ、信頼している。」
ブレードは通信を切ると、もう少し操作に慣れておこうとマニュアルモードに切り替え、機体速度を少し上げた。
「きっとヨージンが現れるはずだ、素晴らしいダンスを期待しているぞ。」
日本支部のエリア38と呼ばれる地域はテーマパークから約2km離れた場所にあり、そこには日本支部軍隊の重要拠点である、BDの生産工場もある。NFの技術開発をしているメーカーもこの辺りに集結しており、テロリスト達はテーマパークのイベントとこの拠点を同時に狙った形だ。
生産工場に隣接している軍部の基地から派遣されたBDの部隊は、襲い掛かってきたテロリスト達の攻撃を防戦していた。
「旧式のBDだと思っていたがチームワークが良い、本当にテロリストか?」
「ステルス性のある自動戦闘機を導入してきている。裏組織も絡んでいそうだ。」
日本支部のBD部隊はテロリスト達が扱っているBDより機体性能が良いので、正面での戦闘になると勝敗確率が高いが、小型でも戦闘力のあるステルス機とのコンビネーション攻撃に苦戦を強いられている。
テロリスト達はスナイパーの様に隠れながら戦闘を行うスタイルに徹底していて、ステルス機を巧みに扱い生産工場をじわじわと攻めていた。その結果、工場の一部が破壊されている。
それでも機体性能の差があるので、防戦している日本支部の方には余裕が生まれてきた。
「少しずつしか攻めてこない理由は何だ?」
「きっと他の地方に重要な物があるのでしょう。こちらはあくまで時間稼ぎですよ。」
「そうだろうな。しかし、相手の戦力もはっきりしていない状況で攻めに転じる時ではない。」
「ですね。ここは耐えながら応援を待つことにしましょう。無駄に戦力を使用するのは間違いです、消耗戦になりますが相手の方が不利ですので。」
「よし。各機、状態が悪化したらすぐに後退し、自身の安全確保に努めよ。また、それぞれがフォロー体制を続けよ。」
ロボットメーカーのスタッフ達はBDを起動させ、待機場所から脱出を進めていた。事前に用意していた操縦者は連絡が付かなくなっていたので、ある程度操縦出来るスタッフがBDを操縦していて、他のスタッフ達はバックパックに取り付けられたコンテナに身を預けている形だ。
そして、待機場所から少し進んだ所でテロリスト達に足止めされていた。
「皆さん、荒い操縦になっていますが大丈夫ですか?」
操縦者が他のスタッフ達に無線通信で声をかけている。
「問題ないです。それより機体の状態は大丈夫ですか?一度被弾をしていたようですが…。」
メーカーのBDはテロリスト達が潜んでいた通路に出た時に腕に砲撃を浴びている。
「はい。芳賀さんが開発協力して頂いたシールドを展開出来ましたので、本体は無傷です。」
「さすが、自動展開するシールドですね。相手は3機でしたか、大丈夫ですか?」
「銃撃が鳴り響いていますが、突破は可能か?」
「相手を避けて進むことは出来なさそうです。こちらも追尾ミサイルなどで反撃していますが、中々上手くはいかないですね。」
そう話しているうちに二撃目の砲弾が脚部に命中した。その砲撃も特殊なシールドが展開し、機体を損傷させる事は無かった。
しかし、衝撃は吸収したので機体はよろめき、バックパック内にいたスタッフ達には中々の衝撃ダメージになった。
「あいたっ!少したんこぶが出来たかもな。」
「あ~、湊君。左下にある水色のレバーを引きなさい。」
「水色のレバー…。あっ、いきなりの戦闘で忘れていました。」
操縦者はすぐに水色のレバーを引いた。すると、BDのモニターの縁が白から青に変わった。
「相手が旧式だとそれでなんとかなると思う。」
「そうですね、頑張ってみます。」
メーカーのBDは機体を立て直し、テロリスト達に持っている銃で反撃を行う。しかし、自動制御に頼り過ぎた銃撃はテロリスト達のBDには命中しない。
相手が素人同然と分かってきたのか、テロリスト達の動きが少し単調になった。
正面から砲撃をするテロリストのBD。連続で砲撃をしてメーカーのBDを行動不能にするつもりだ。
先ほどの攻撃と同じくBDはシールドを展開したが、連続して襲い掛かる砲撃の衝撃は人体に影響が発生しそうになった。
「うわぁ!」
操縦者も衝撃吸収の座席に座っているとはいえ、背中を殴られたような衝撃を受けた。
「大丈夫か!こちらは無事だぞ!」
「あいたたた…。あっ、テロリスト達は全て行動不能化されたようです。」
BDが表示しているモニターには大破したテロリスト達のBDが3機とも映っていた。
2機は操縦席も破壊されたようで、一人だけが手を上げて操縦席から出てきていた。
「相手は新システムの実力に驚かされたでしょうね。」
メーカー側のBDは攻撃を受けた瞬間に相手の位置関係を正確に読み取って、腰に装着されているパーツからレーザーで自動的に反撃をしていた。それによってテロリスト達は行動不能にされた結果である。
「旧式のBDでは、こいつのレーザーに耐えられなかったようだな。」
「世界を平和にする為に開発された兵器です。積極的にアピールしていきましょう。」
「少し休憩をしてから先を急ぎますね。」
操縦者はテロリストの一人をBDから発射された特殊な縄で拘束して、ゆっくりとした動作で通路を進めた。




