EP1-13.
火山のアトラクションに入った洋人は、途中で「スタッフ専用」と記載された道を発見し、そこから中へと侵入した。
幸いスタッフ達は避難等で外へ出ており、中の通路には人の気配が無かった。
それでも十分に警戒しながら先に進むと、「No,1」と記載されたゲートを見つける。
近づきゲート端末を確認すると、セキュリティがONされている状態だったので、洋人は持っている端末を使用してセキュリティを解除しようと試みた。
「通常のセキュリティモードなら、これで開錠出来るはず。」
数秒間待つとゲート端末から起動音が鳴り、ゲートの開錠を表す画面表示に変わった。
「今の状況を考えると「非常モード」になっていないのが不思議だが、それどころじゃないという事なんだろう。」
洋人がゲートを通り抜けると、すぐに壁に身を潜めた。通路の先に人が立っているのを見つけたからだ。
「あの服装は日本支部が採用しているBD用アーマーだな。」
相手がこちらに気付いていない事を確認した洋人は、アーマーを身に着けた男を尾行する事にした。
「(一人で行動しているのはよほど緊急性があるのか…。)」
通路を曲がった所の奥で男は大きなゲート前にいる別の男と話をしていた。その男はライフルを持っていて周囲を警戒しながら話をしているのが気配で分かる。
男達は少し話をした後、ライフルを持った方が大きなゲートを開いた。アーマーを着た男は何かをライフルを持つ男に手渡ししてゲートを抜けていった。
「(さて、中を見させてもらうには…。)」
洋人はゲート側を警戒しながらリュックから小さなペン状の筒を取り出す。そのペン状の筒の側面にあるボタンを押して、電源をONさせる。
男達が話している最中に仕掛けたカメラで通路の様子を探る洋人。相手は警戒はしているが、ライフルを持っていることで自信があるのか、あまりこちらを窺ってはいない様子だ。
洋人は男が別の方向を向いたのを確認したと同時に通路へと身体を傾け、ぺン状の筒から小さな針を発射させた。
針は男の首元に刺さり、一瞬にして男を眠りにつかせた。
洋人はすぐにゲートへと走り出し、他の見張りが隠れていないかを確認する。問題無い事を確認した後、ゲートに端末を当てて中の状況を確認する。
「中は広いな…奥にBDが数機、起動状態。周囲にも人の熱源があるな。ここに入るのは厳しいか。っ!?」
洋人は瞬時の動きで端末を捨てながら横に飛んだ。ゲート端末横の壁に銃弾が当たり、衝撃音が鳴る。銃弾を回避した洋人は、さらに襲い掛かる銃弾を転がりながら回避し、銃弾の軌跡を判断し、持っていた銃から数発銃弾を発射させる。
銃弾は相手が回避行動に入ったために腕をかすめて壁に当たった。相手はサッとした動作で壁の影に隠れた。
「お前が着ている服は日本支部の物ではないな、どこの所属だ?」
洋人は転がった勢いで身体を起こし、隠れている場所に正確に銃を構える。
「さすがだ。私服で怪しい奴が格納所の前にいると思ったら、こちらの事も少しは分かる奴とはな。見たところ高校生くらいに見えるが、歴戦の兵にも見える。」
「そんな事を話している余裕はあるのか?こうしている間に状況が悪化していくと思うが?」
「BDによる武力衝突は免れない。私達はそこに介入出来ない同志のはず、そうあせる事はないだろう?」
「まるで、この状況になる事が分かったように話すのだな。概ね西洋のどこかの軍という所か?」
洋人は跳弾をさせて相手に当てようと瞬時に周囲の壁を確認するが、有効な手段は思い浮かばなかった。
「感が鋭い者は好きだ。そうか、君がそうなのか。」
「いちいち気に障る話し方だな。何が分かったというんだ?」
「貴公、ヨージンであるな?そうであろう。」
「聞いた事が無い名だな、人違いだろう。」
「いや、その若さで良い洞察力。行動力、判断力も申し分ない。そして東洋人、間違いない。ここで会えるなんて光栄だよ。」
洋人には相手が何を言っているのかを理解出来ずにいたが、手強い相手という認識をし、左手で次の行動準備にかかる。
「俺が誰であろうと、お前はこちらに危害を加えるつもりでいるのだろう?そこでずっと隠れていては面白くないんじゃないか?」
「いや、どこの誰かが分からない状況ではもう無い。ヨージンという事ならば、今はこちら側の人間という事になる。」
「(こちら側というのは、俺の今の状況がバレているのか。)なら、もう牽制し合うのは中断しようじゃないか。」
洋人は相手は見えないが、明らかにまだ殺意があるのが読み取れる。すぐに対応出来るように左手にはボール状の個体を隠し持った。
「(恐らく少しでも隙を見せると相手は一撃で仕留める用意をしているはずだ、さっきのは本当に運が良かった。)」
「そうだな、ここは貴公の行動を再開させるとしよう。だが、時はもう次のステージに移行されたようだ。」
「なんだと?」
殺意を感じなくなったので、洋人は端末をゲートに再度当てて確認をした。
「(BDの熱源がないという事は外に出たというのか。)BDの気配が消えたようだ、何故お前にそれが分かった?」
「なあに簡単な事だ、こちらもスパイみたいな事はしているからだ。」
相手は壁に隠れながらもスッとした動作で何か棒状の物を洋人に見せた。だが、洋人にはそれの用途を考えつかなかった。
「まあ知らないのも無理はない、最新鋭のスパイ道具だ。魔法のステッキとでもお伝えしておこう。」
「そんな事はどうでもいい。BDがいなくなったという事は更に被害が出てしまうじゃないか。」
「それは貴公がどう動いた所で何も状況は変わらない。まあ、まだ中にBDは残ってそうだが、どうされる?」
それもあの魔法のステッキという道具で分かってしまうのか、と洋人は少し驚きを感じた。
「さっき「こちら側の人間」とか言っていたな。という事は俺に味方してくれるのか?」
「そうだな。貴公も少しウォームアップしてみたくなってきたのではないか、と思っただけだ。一般人の生活は窮屈だろう?」
痛い所を突かれた洋人は少し考えに迷っていた。
「ここまで来たのに引き返しては面白くないのではないか?中は手薄になっている、良いタイミングではあるぞ?」
「…これは皆を守る行動になるはずだ。俺を導いてくれるか?」
「ああ、問題ない。ゲートを開けて戦場への手ほどきをさせてもらおうではないか。」
相手が壁から出てきた。仮面とローブを身に着けているので素性は全く分からない状態だ。ただ少なくとも敵意を向けていない事が洋人は感じた。
「右手に一人、左奥に一人、BDの横に一人だ。先ずは左奥から対応しよう。」
「一番危険性が高い奴って事だな。まだ信じ切っていないがよろしく頼む。」
「騎士道にかけても約束は守る、さぁ行こう。」
「行くぞ!」
洋人は銃のモードを切り替えてゲートを開いた。




