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EP1-10.

爆発したカバンの周囲にいた観客やスタッフ達は爆発音の方向にすぐに振り向いた。

「そっちを見てはいけない!」

零奈達の身体を上から覆いかぶさりながらも、洋人は周囲に注意を促した。しかし、何が起こったのか理解していない人達は原因となる物を注視せざるを得なかった。

「え、キャー!!」「うわぁ!!」

「!!」

爆発したカバンから何かが飛散してきたのを見ると、ようやく危険を察知したのか悲鳴が飛び交いパニック状態となった。

洋人は持ってきていた少し大きなビニールシートの様な物を、サッと皆を覆うように被った。

飛散物が接触した音が鳴るが、刺さる事なく痛みを伴う感覚はなかった。

周囲もパニック状態となっているが、悲痛の叫びは無く、怪我している状況ではなさそうだった。

「だ、大丈夫なの?」

零奈は心配そうに洋人を見つめながら聞いた。

「すまない、もう少し辛抱してくれ。」

「う、うん。大丈夫…。」

落下音が止んだので、少し待ってからシートから顔を出し、周りを確認した。

「……。」

他に異常が無さそうだったので、洋人はシートを横に避けてゆっくりと身体を起こす。

「パニックにはなってなさそうだな。」

周りではパニック状態だった観客やスタッフ達も何が起きたのかを不思議がっている様子だ。

洋人はシートに載っていた飛来した物を掴んだ。零奈達も身体を起こして状況を確認する。

「…これは。」

「び、びっくりした。一体何があったの?」

「えと、大丈夫だよね?」

「洋人に簡単に倒されてしまったぜ、凄い力だな。」

零奈達は洋人に近づき、飛来した物を持っていた洋人の手を確認する。

「あんた、そんな物触って大丈夫なの?」

「ただの棒に見えるけど、これがまた爆発したりしないよね?」

「確証は無いが、恐らく問題ないと思う。」

洋人はこの固形物に特に問題無い事が分かっていたが、あえて曖昧な返答をした。

「爆発してこれが散らばってきたわけ?それ、カットチョコのような形状ね。」

「ほんとだ。軽かったから痛くなかったんだ、良かった。」

「でも何の目的の爆発だったんだ?さっき踊りがへんな奴が投げたんだよな?」

「ああ、それは見ていた。しかし、それ以上は分からない。」

「そいつは何処へ行ったんだろう?」

「えっと…いなさそうだね。」

「何かを隠すため、何かを行うためのカモフラージュっぽいよね。」

「よく分からないけど、そうだろうな。」

「あのさ、さっきはありがとう。」

「……(この材質は、まさか)。」

「って、聞いてる?」

零奈は洋人の肩を叩いたので、洋人は零奈の顔を見た。

「ん、なんだ?」

「いや、爆発した時に自分も危険なのに覆いかぶさってくれてさ。ありがとうって。」

「びっくりしたけど、あの素早い行動は流石でした。ありがとう。」

「俺は何も出来なかった。カッコよかったぜ、感謝する。」

「…いや、カバンが投げられた時に危ないと感じたから行動できただけだ。気にしないでくれ。」

「少しは人間味があるんだって見直したよ。」

「それよりも、ケガとかは大丈夫か?いきなり押し倒して悪いと思っている。」

「あ、たぶん大丈夫だと思う。」

一同は身の回り品などが問題ないかを確認していると、アナウンスが流れてきた。


~ パーク内の皆様にお伝え致します。

 先ほど、中央大通りにて発生しました爆発についてですが、現在、何も分かっていない状況です。

 只今、警察と救急がパークに向かっており、この後現場を調査する事になりました。

 これから、パークは閉園し警戒体制になります。皆様はパーク内から避難をして頂きます。

 スタッフにて避難指示及び誘導を行いますので、皆様は慌てる事なく行動して頂きますようお願いします。

 繰り返します ~


このアナウンスにより、周囲から残念がったどよめきが聴こえてきた。

「あ〜うるさいなぁ。緊急事態がなんだし当然、仕方がないよ。」

「ほんとほんと、自分の身が心配じゃないのかな?」

ざわついていた声も一時の間だけで、すぐにスタッフの声が響き渡り、皆は静かになって、声の方向を向く。

「皆さ〜ん!ゆっくりでいいですから、出口まで避難をお願いします!あちらにいますスタッフ達が先導しますので、ついていってくださ~い!」

「パニックが一番危険です!これからも安全とは言えませんが、できるだけ落ち着いた行動をお願いします!」

スタッフ達の声に反応したゲスト達は、ゆっくりと避難を開始した。爆発に驚き、腰が抜けてしまっている人もいたので、周囲が協力し合って対応する。

「こんなにもすぐに対応出来るって、さすが一流のテーマパークだよね。」

「訓練の賜物だね。さてと、私達も避難しよっか。って、あれ?咲原君は?」

「え?横にいると思ってたんだけど、いないな。スタッフに集中していたから、気づかなかった。」

三人は周りをぐるりと確認するが、洋人の姿を見つけることは出来なかった。

「急なトイレかな?どうしよう?」

「少し待つか、放っておくか?」

「すみませ〜ん!そちらにおられる皆さまも速やかに避難をお願いしま~す!」

三人が避難を始めないのに気付いたスタッフが、少し遠くから声をかけてきた。

「わわっ、私達のことだね。」

「ん~、仕方がない。あいつもちゃんと避難するでしょ、先に行こっ。」

「そうだな、そうしよう。迷惑だしな。」

「咲原く~ん。私達は先に避難しますね~。」

「ちさ、聞いてない人に声かけるって面白いことしたね。」

「へへっ、テレパシーみたいな感じで声かけてみました。」

三人もスタッフを目標に、避難を始めた。


洋人は、三人がスタッフの声掛けに注目していた隙に、すぐ近くにあった建物の裏へ、静かに行動していた。

ここにもスタッフがいる可能性もあったが、アトラクションも無い裏手だったので誰もいなかった。

洋人は改めて、握りしめていた銀色の四角い形状物を確認する。

「この素材は間違いなくBDしか使用していないはずの物だ。何が起こっているか調べる必要があるな。」

洋人の言う「BD」という言葉はBuddy Gearの略で兵器として利用されている人型ロボットの通称になっている。

洋人はパーク内の地図を用意し、爆発を起こした人物が向かったと思われる方向を予測する。

「おそらく…この辺り、さらに中央に向かったはずだ。フェスタキャッスルか…いや、後ろの大きな池が怪しいな。確か、ここで模擬戦が行われるはずだった。」

洋人はスタッフに見つかると良くないので、少し時間をおいて行動する事にする。その間に自分のカバンを確認する。

「パークのセキュリティ設備が最新型ではなくてよかった。」

中には小さなボール状の物やペンの様な物、それに扇子の形をした物と、色々と入っていた。

「こんな事になるとは思ってなかったから、最低限の物しか持ってきていないのは仕方がない。まあ様子を見るだけだ、俺の素性なんて知っている奴なんていないはず。」

洋人は携帯端末でパパっと操作をしてから、目的地へと移動を開始した。

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